2025/01/26

マン・レイ、レン・ライ、ノーマン・マクラレン

 シネプラザ・サントムーンでマン・レイ4作品を集めた「リターン・トゥ・リーズン」を見てきた。夢見心地に誘われる映像にそれを増幅するスクワールの音楽がついていて、気を抜くと瞼が閉じてしまう。アニメーション史でも触れられる「エマク・バキア」「理性への回帰」をついに見ることができた。フィルムに直接描き込むノーマン・マクラレンの技法の源流と考えられる作品である。この技法は、レン・ライが推し進めて、マクラレンが受け継いだ。作品内容としては、当然だが、マクラレンの作品が一番洗練されていている。
「世界アニメーション映画史」に記述があった気がして調べてみたら、本文中では触れられておらず、レン・ライの技法についての注釈で「理性への回帰」について書いてあるだけだった。「エマク・バキア」にもアニメシーンがあるというのはどの本で知ったのだろう?不思議だ。
 他の2作(「ひとで」「サイコロ城の謎」)を含めたマン・レイの作品は、ムービー・カメラを初めて持った男子が撮りたい映像を撮って、そのまま見せているような面白さがある。大きいスクリーンでの上映だったが、他に見ている人がいなかった(貸し切りだ!)のが残念だなあ。

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2025/01/15

C4ピカソが活躍する映画

 「動物界」をシネプラザ・サントムーンで見てきた。冒頭、主人公の高校生が母の見舞いに病院へ嫌々連れていかれるときに乗り込んだ自動車のドアの形状、内装のデザインが、あれ、これは我が愛車に似てないか、と思った。そのうちにフロントとリアが映し出されて、旧型のグランドC4ピカソだった。このピカソ、母親を探すとき、クライマックスで森の中に逃げ込むとき、大活躍である。
 その森の中で道を外れ藪に突っ込んで止まったピカソから主人公が飛び降りてさらに奥に駆け出していくラストシーンで、主人公に、かならず生きのびろよ~と声をかけたくなった。こういう気持ちになったのは久しぶり。この感覚は「ぼくのエリ 200歳の少女」の時と似ている。「ロブスター」も連想させるけれど、こちらの方が未来への希望に満ちている。
 この作品の上映前に、マン・レイ×ジム・ジャームッシュの映画『RETURN TO REASON/リターン・トゥ・リーズン』の予告編をやっていて驚いた。リュミエールに続いてマン・レイが地元の映画館で見れるというのは信じがたい。

 で、そのリュミエールだが、シネマサンシャイン沼津で「リュミエール!リュミエール!」が上映されて見にいった。これは、リュミエールの会社で撮影された1本50秒の作品を110本まとめたものである。フォーレの音楽がつけられ、解説のナレーションが入る。1作品(メリエスのような作品)を除いて見事に修復されていて、黒白のパンフォーカスが美しい。19世紀末の記録としても価値がある(日本撮影のものもある)。ナレーションの訳が字幕で出るのだが、これが映画だという構図の画面を邪魔なしで見れる吹替版であってほしかったと思う。調べてみたら、前作にあたる2017年公開の「リュミエール!」は吹替版だったので、同じようにできなかったのかな。コッポラの2019年の「工場の出口」のリメイクがオマケでついている。

「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」も見た。力作である。ラルフ・バクシの「指輪物語」を連想したり、3DCG背景のシーンでは、フライシャーの立体模型背景みたいだ、と思った。歳をとったためか、戦闘シーンが長く続くと、見ているのがしんどい。ガンダルフに会う続編が見てみたい。

 実は、今年の正月の初映画は「妖星ゴラス」。画像も音響もクリアで、二瓶正典(正也)の声ってこんな感じだったけ、と思う。今まで気にかけていなかった音楽が気になって石井歓について調べてみたら、かの石井真木の兄で、なんと我が母校の学生歌(歌った記憶はないが)の作曲者だった。来年は、ぜひ「宇宙大戦争」が見たい。

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2025/01/01

2024年CS,BSで見た映画

 今年も160本見た。仕事が再び週5日になったので録画する本数より見れる本数が減った。ハードディスクの残容量がやばくなってきた。

 160本の中からこれ1本を選ぶとすると、「雲の上団五郎一座」。フランキー堺、エノケン、三木のり平らの喜劇人メンバーに筑波久子がからむ。こういう喜劇の傑作が見れたのがうれしい。
 邦画の昔(自分が子供の頃)の作品では、タイトル・アニメが面白かった「カモとねぎ」、エースのジョーの「 早射ちジョー 砂丘の決斗」。ようやく見れた「カルメン故郷に帰る」、同じく高峰秀子の子役時代の「愛の世界 山猫とみの話」も興味深かった。ようやく見れたということでいえば「新幹線大爆破」もそうだ。当時の時代を色濃く感じる。初公開時に見て以来の「喜劇役者たち 九八とゲイブル」は、デビュー当時のタモリの芸が記録されているという意味では、今現在の方が価値があると言える。「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」も久しぶりなのだが、以前にに見た時よりも楽しく見れた。地元の沼津で撮影された「男はつらいよ奮闘篇」(これもやっと見れた、に入る)「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」。前者は、榊原るみが昔の沼津駅の階段を上がっていく辺りのシーンがいい。

 監督特集ものでは、ベルギーのシャンタル・アケルマン作品を初めて見てこのような監督がいたのだと認識を新たにする。4本見た中では、ミュージカルの「ゴールデン・エイティーズ」、マルクス兄弟へのオマージュがある「アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学」が面白い。ハンガリーのメーサローシュ・マールタも同様で、4本のうちビートルズ映画っぽい「ドント・クライ・プリティ・ガールズ!」が一番面白かった。
 ゴダールも未見の4作品を見たが、アンナ・カリーナが出ている「 小さな兵隊」よりもブリジット・バルドーが出ている「軽蔑」の方が面白く感じた。昔のサイレント・コメディのようなギャグがあるのもいい。「カルメンという名の女」は弦楽四重奏にはさまれて進行していくのが「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」の「DEATH」編に影響を与えたのでは、などと考えてしまう。トリュフォーの「大人は判ってくれない」も再見したが、ヌーベルバーグの監督ではトリュフォーが一番好みにあうなと思う。ヘルツォークは3作品見たが、ムルナウのリメイクである「ノスフェラトゥ」が一番面白かった。クラウス・キンスキー、イザベル・アジャー二が良いのである。
 エドガー・ライトは「ショーン・オブ・ザ・デッド」「スコット・ピルグリムVS邪悪元カレ軍団」の2本とも楽しかった。こういう映画が実は一番好きなのであるが、なかなか本当に面白いと思える作品には出会えない。 コーマンの「血まみれギャングママ」も再見してそう思う。
 作品をほとんど見ていなかったホウ・シャオシュン監督作品は6作品見たが、自伝的要素がある「風櫃の少年」「童年往事/時の流れ」がいい。そこはかとなく日本の影響が見えるけれども、小津安二郎の影響が大きいように思う。

 洋画でもようやく見たよというのが 「バンド・ワゴン」「アリー/スター誕生」「アリゾナ・ドリーム」「 愛のメモリー」「フィラデルフィア」「ビューティフル・マインド」「ミスティック・リバー」。劇場公開時に見ておくべきだった。劇場公開時に予告編等を見て、見たいなと思ったにもかかわらず見逃した「コーダ あいのうた」「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」「ドリーム・ホース」「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」「ライトハウス」「ムーンライト」「MEN 同じ顔の男たち」「アンチャーテッド」も同様に見ておくべきだった。アジアの映画では「冒険活劇/上海エクスプレス」、「プアン/友だちと呼ばせて」(タイ)、「呪餐 悪魔の奴隷」(インドネシア)、「青いパパイヤの香り」(ベトナム)、「伝説の女優 サーヴィトリ」「途中のページが抜けている」「エンドロールのつづき」(インド)。

 ドキュメンタリーは「 劇場版 荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲35年の軌跡~」「カンフースタントマン 龍虎武師」「キャノンフィルム爆走風雲録」「ようこそ映画音響の世界へ」。

 西部劇は、「3時10分、決断のとき」に一番びっくり。2007年にこのような作品が作られていたとは。カット割りのお手本になるような映画だ。久方ぶりに再見した「荒野の決闘」はラストシーンが「ルパン3世 カリオストロの城」だなと思う。「馬上の二人」(ジェームズ・ズチュアートはジョン・ウェインにはなれない)「野獣暁に死す」(仲代達也主演のマカロニ・ウエスタン)「ロイ・ビーン」(西部劇の時代は終わった!)。

 

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謹賀新年

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
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2024/12/25

タイヤが鳴かない

 今日、映画を見にBiViという商業施設に行った。ここの駐車場は床が普通のコンクリートではなくリノリウムみたいな表面になっていて、ハンドルを操作するたびに、タイヤがキューキュー鳴っていてのだが、今日は全然音がしない。プライマシーでは出ていた音がしないのである。とりあえず、タイヤを新しくして、一番、びっくりした出来事であり、はっきりとわかる違いである。XLなので変形しにくいのかな。

 因みに見に行った映画は「ドリーム・シナリオ」である。途中まで面白かったのだが、だんだん尻すぼみ。A24製作の映画ってあたりバスレが大きい気がする(もちろん、自分にとって、である)。

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2024/12/15

沼津に怪人現る

映画空間 中野 さんのチャーリー・バワーズ上映会の第3回にやっと行くことができた。会場は、入サ岩﨑商店(だったところが、現在貸しアートスペースのようなものになっている。2階には宿泊もできるそうだ)。今回は『怪人現る』である。サイレント時代のバワーズの傑作である。輸入盤のBDを持っていて、静岡シネギャラリーでの劇場公開で見た以外にも何度か家のテレビで見ているわけだけれど、こういう上映の形で見ると、今まで見落としていた(あるいは、見た瞬間には何か思ったが忘れてしまった)ところに気が付けるのがいい。今回は次の2点。
 その1 ストップ・モーション・アニメーションは、同時期の「キング・コング」のウィリス・オブライエンより、ずっと上手いと思う。昨年熱海怪獣映画祭で見た「ロストワールド」と比較上映はできないか?
 その2 ノーマン・マクラレンが「開会の辞」でやったことをすでにやっている。マクラレンの手法はピクシレーションと呼ばれるけれど、ピクシレーションの先取りである。「開会の辞」を見た時、どうしてこんな発想ができるんだろうと思ったが、バワーズという驚異の先駆者がいたのであった。多分、マクラレンはバワーズは知らずに作っていたような気がするが、本当は見ていたりして。

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2024/12/07

暦の上では12月、ロボット夢見るセプテンバー

 シネマサンシャイン沼津で「ロボット・ドリームズ」を見てきた。アース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」を使っているのに、おお、と思う。一切セリフのないこの映画で、この曲の歌詞がセリフ替わりでもある。もう一度この曲が印象的に使われるのに感激。この曲をこのように使っていることだけで大好きになってしまう作品である。実写映画的なカット割りが良い。タイトルの「ドリームズ」は名詞ではなくて動詞であることに途中で気づく。画面の片隅で色々オマージュを捧げているようなのであるが、その中にマジンガーZがいるように見えた。

 スペインの実写映画監督がアニメも作る、ということでは、フェルナンド・トルエバの「チコとリタ」(2010年)というキューバ出身のジャズ・ピアニストを描いた作品を思い出す。この作品はとある映画祭で一度上映されただけで一般公開されなくて、輸入盤DVDで見たのだけれど、音楽と一体となったアニメーションが心地良かった点では、「ロボット・ドリームズ」と共通する。スペインのアニメーターでこの両方に関わったという人はいるのかな?

 

 この映画を見た日、サングリア沼津店に行き家族でスペイン料理ランチ。サングリア沼津店が来年の1月半ばに閉店してしまうと聞き、妻の還暦祝いを兼ねて、閉店を惜しんだのであった。スペインが主な舞台の「サラゴサ手稿」も読んでいるところなので、スペインな半日であった。

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2024/11/10

うちの映画祭さい

11月4日の「しずおか映画祭」の第1,2部に行ってきた。沼津出身の俳優磯村勇斗が主催責任者として実現した映画祭である。自分がこの映画祭について知った時には人が集まるのか?と思ったのだが、全然そんなことはなく、開催日のだいぶ前に全席完売し、大ホールが満席である。こんなに満席な状態で映画を見るのはいつぶりか?参加して思うのは、日本の映画界が抱える問題を考えることができたこと。第1部で、原田眞人監督「わが母の記」が上映されたのだが、上映後のトークの時に、始めて見た人は、という質問に対して会場の半分近くの人が手を挙げたことがそのきっかけだ。地元出身の監督が、地元にゆかりの深い作家を主人公にして、地元ロケをした作品なのに、こんなに見られてないのか、である(第3部の「さかなのこ」も同様だったようだ)。どうも来ている人の多くは、映画ファンというより、磯村勇斗のファン、地元後援者であるようだ。逆に言えば、こういう機会に良い映画に触れて映画をもっと見るようになってくれればいい、ということでいえば、この映画祭は大成功であったと言えるだろう。ちなみに、同日に時間的にかぶる形で「沼津めぐる映画祭」という自主制作の短編作品を集めたイベントもあり、映画ファンのあたり人たちはこちらの方に参加していたように思える。

 映画祭のもう一つの意義として沼津の「おまち」の賑わいを作り出すということがあり、会場の文化センター入り口前の広場に、飲食店の出店が並んでいて、ここだけを目当てにした人たちもたくさん来ていた。そのため、短い休憩時間に昼食を取ろうとしたが、ここでは落ち着いて食べられそうにないと、諦めてしまった。映画祭に遠くから来た人もいたようで、その人たちはここで沼津のうまいものを飲食できたのだろうか?と思ってしまう。こういうイベントには人が出てくるのだが、普段の街に人が来ないというのが問題であろう。駅北に住む自分が沼津の駅南の商店街に行かなくなったのは、映画館がなくなってしまった、というのが最後の一押しだった。そういう人は多くはなさそうだが、映画のついでに街をぶらぶらしてみたら面白い店を見つけたなどという出会いの機会を減らしていることは確かだ。こういう映画祭も、本当なら、昔あった文化劇場とかスカラ座とかの街中の映画館を会場にして行われる方が良いだろう(文化センターは街中からは少し離れている)。中心市街地の再開発の計画が進展しているようだけれど、その中に、映画館の復活は入っているのだろうか?

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2024/08/03

めくらやなぎで眠る男

 ピエール・フォルデス監督「めくらやなぎと眠る女」を地元の映画館(シネマサンシャイン沼津、ここは「リンダはチキンがたべたい!」も上映してくれた)で見ることができた。日本語版(地元出身の磯村勇斗が主人公を吹き替えている。多分、このために地元の映画館で上映されることになったと思う)だけでなく英語版の上映もある!
 ということで、人が入らなくてすぐに上映が終わりそうな英語版から見た(予想していたように観客は少なく、自分を入れて2人)。英語のセリフが案外聞き取れて、なおかつ、そのリズムが心地良い。夜の回でいつもなら布団の中に入っている時間帯でもあり、後半、眠気に誘われる。退屈だから誘われるのではなく、描かれる世界の不思議なぬくもりに包まれるせいでもある。眠気に誘われるのは自分の波長に合う映画の証拠。日本語版もできるだけ早く見に行こう。監督の祖父ピーター・フォルデスの作品を連想させた変形のシーンあり。
 そして、磯村勇斗出演の日本語版も見た(平日の午後の回であったが案外人が入っている。やはり、磯村効果か)。吹き替えというより、こちらの方がオリジナルじゃないかという思えるほど。今回は前半で日本語のセリフのリズムに眠気を誘われるが、後半はそうならず、見逃した短いカットがいくつかあるのに気づく。黒澤明とキューブリックへの敬意を感じる。

 村上春樹の小説を読みたくなった(短篇を1つ読んだことがあるだけである)。

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2024/06/01

指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界

 昨日夜、スキマシネマの「指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界」の上映会に行ってきた。雨のため、商店街での大スクリーンの野外上映ではなく、ビル内の小さいオフィスでの上映になってしまったのが残念。名前は知っているけど、作品をほとんど見たことがなかった作家の作品が見られ、アニメーションはやっぱり動きだなと思う。次回は7/5に「ペルリンプスと秘密の森」を上映するということで、これも楽しみ。

 上映された作品は、「コントロール・ユア・エモーション」クリス・サリバン、「不安な体」水尻自子、「I'm late」冠木佐和、「半島の鳥」和田淳、「ETERNITY」水江未来の5本。サリバンの作品は制作中の長編The Orbit of Minor Satelliteの冒頭の1章とのこと。完成した長編を早く見たい。「不安な体」は、ささくれがむけると痛そうと思ったら、むけた瞬間に終わったので痛みの感覚が後を引かなかったのがいい。冠木作品の内容は衝撃的であるが、絵的には一定の抑制があるので、1日たって思い返すと案外映像が出てこない。「半島の鳥」はタイトルからある国のことを連想してしまったが、日本のどこからしく(あるいは、どこでも)、連想した国とは全く無関係であった。アニメーションの緩急が心地良い。「ETERNITY」は、水江版スターゲート。トーラス宇宙の重力理論はどうなるのだろう、などと考えてしまった。

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