「花緑青の明ける日に」「アメリと雨の物語」「パリに咲くエトワール」の3作品をこの1週間くらいで見た。3作品とも方向性は多少異なるがアニメーションの限界に挑戦し、その可能性を押し広げることに成功している力作である。このうちのどれがいいのかということは、ほぼ見た人の趣味(好み)で決まると言っていい。ということで、自分の好みに従ってこの3作に順位をつけると、1位「アメリと雨の物語」2位「花緑青の明ける日に」3位「パリに咲くエトワール」となる。1位2位の差は実は小さく、3位は上位2作よりちょっと差がつく。単純に言えば、一番ジブリ的で、観客動員もしている「パリに咲くエトワール」が自分には合わなかった、ということである。
「パリに咲くエトワール」は、原作ありでないオリジナル・アニメということは評価できるのだけれども、絵描きを志望する主人公の異国の地での葛藤の物語ですっきり展開させればよいものを、バレエをやりたい友人の物語も同じように扱い、さらにはこちらの方にストーリーの重心が移ってしまって、「絵は大丈夫?」となってしまったのが残念だ。
「花緑青が明ける日に」は、美術的に画面全体が統一されている作品が増えてきている中での真打的作品だと思う。全体が日本画的な水彩画として統一されていて美しい。水軍の砦のような、ジャングルジムのような煙火店の構造に、こういう建造物にワクワクさせられた子供の心が覚醒する。ところで、花緑青って緑青とあるし青い色が出るのは銅だから、銅の酸化物なのだろうと思って調べてみたら、酢酸銅と亜ヒ酸銅の複塩、という危ない物質だった。見終わった時、ロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」を見た時のような気分になった。懐かしい日産のラシーンが登場する。突如、物体アニメになるシーンも面白い。
「アメリと雨の物語」について、片渕須直監督「自分としては、1960年代の日本と、そこにいた自分自身の幼児期の、解像度高い追体験となりました。」まったく同感。特にザ・ピーナッツの歌声が、それを強調する。シネプラザ・サントムーンで見てきたのだけれど、劇場ロビーには休日らしくお客さんが大勢いたが、「アメリと雨の物語」は私一人。もっと多くの人に見てもらいたいなあ。月曜の午後の時間帯に見に行った「花緑青が明ける日に」がそうなるんじゃないかと思っていたらそれなりに人が入っていたのに。美術的な統一ということではこの作品も「花緑青が明ける日に」と同レベルか上回っている。外国のスタッフが1960年代の日本をこんなに違和感なく再現しているのにも驚く。「マーティ・シュープリーム」も同じように1950年代の日本をきちんと再現していて驚いたが、なにか流行りのようなものがあるのか。
その「マーティ・シュープリーム」だが、卓球のシーンに違和感がなく、日本人選手が分厚いスポンジだけを張ったラケットを使っていて、その打ち方は現在のような粘着性のあるラバーによる打法とは違っているのだが、それも再現されていて、監督は相当に卓球が好きな人ではないかと思った。日本チームのコーチ役に卓球コラムニストの伊藤条太を起用しているくらいだから、かなりのものだろう。
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