2024/08/30

よは予告編のよ

 映画は極力事前情報を入れないようにして見ているが、映画館で上映されている予告編は見ることになってしまうわけである。予告編を見て見に行きたいと思って見た映画が、予告編で想像していたのとはちょっと違っていたけれど、それはそれで面白かったという体験を最近した。ちょっと前に公開された「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」と今公開中の「フォールガイ」の2本である。特に前者は「カプリコン1」みたいな大謀略映画かと思わせるような予告編だったのだが、見てみたら全然そうでなかった。どちらも、主演女優(スカーレット・ヨハンソン、エミリー・ブラット、このところこの2人が出ている映画を案外見ている)が魅力的な、よくできたラブ・コメディだった。ラブ・コメを事前に謳うと見に来る人が限られる、ということなんだろうか。どちらの作品にも、映画製作の裏話があって、それも面白い。

 どちらも懐かしい音楽が使われてるんだけれど、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は1969年のアポロ11号の月着陸を描いているのでその時代の曲が流れるのは普通なのであるが、現在という設定の「フォールガイ」で、KISSの「ラヴィン・ユー・ベイビー」などの曲がガンガン流れるのはどういうことか。こういうシーンにはクラシックのこういう曲が定番みたいなことと同じになってきているのかな。

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2024/08/03

めくらやなぎで眠る男

 ピエール・フォルデス監督「めくらやなぎと眠る女」を地元の映画館(シネマサンシャイン沼津、ここは「リンダはチキンがたべたい!」も上映してくれた)で見ることができた。日本語版(地元出身の磯村勇斗が主人公を吹き替えている。多分、このために地元の映画館で上映されることになったと思う)だけでなく英語版の上映もある!
 ということで、人が入らなくてすぐに上映が終わりそうな英語版から見た(予想していたように観客は少なく、自分を入れて2人)。英語のセリフが案外聞き取れて、なおかつ、そのリズムが心地良い。夜の回でいつもなら布団の中に入っている時間帯でもあり、後半、眠気に誘われる。退屈だから誘われるのではなく、描かれる世界の不思議なぬくもりに包まれるせいでもある。眠気に誘われるのは自分の波長に合う映画の証拠。日本語版もできるだけ早く見に行こう。監督の祖父ピーター・フォルデスの作品を連想させた変形のシーンあり。
 そして、磯村勇斗出演の日本語版も見た(平日の午後の回であったが案外人が入っている。やはり、磯村効果か)。吹き替えというより、こちらの方がオリジナルじゃないかという思えるほど。今回は前半で日本語のセリフのリズムに眠気を誘われるが、後半はそうならず、見逃した短いカットがいくつかあるのに気づく。黒澤明とキューブリックへの敬意を感じる。

 村上春樹の小説を読みたくなった(短篇を1つ読んだことがあるだけである)。

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2024/06/01

指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界

 昨日夜、スキマシネマの「指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界」の上映会に行ってきた。雨のため、商店街での大スクリーンの野外上映ではなく、ビル内の小さいオフィスでの上映になってしまったのが残念。名前は知っているけど、作品をほとんど見たことがなかった作家の作品が見られ、アニメーションはやっぱり動きだなと思う。次回は7/5に「ペルリンプスと秘密の森」を上映するということで、これも楽しみ。

 上映された作品は、「コントロール・ユア・エモーション」クリス・サリバン、「不安な体」水尻自子、「I'm late」冠木佐和、「半島の鳥」和田淳、「ETERNITY」水江未来の5本。サリバンの作品は制作中の長編The Orbit of Minor Satelliteの冒頭の1章とのこと。完成した長編を早く見たい。「不安な体」は、ささくれがむけると痛そうと思ったら、むけた瞬間に終わったので痛みの感覚が後を引かなかったのがいい。冠木作品の内容は衝撃的であるが、絵的には一定の抑制があるので、1日たって思い返すと案外映像が出てこない。「半島の鳥」はタイトルからある国のことを連想してしまったが、日本のどこからしく(あるいは、どこでも)、連想した国とは全く無関係であった。アニメーションの緩急が心地良い。「ETERNITY」は、水江版スターゲート。トーラス宇宙の重力理論はどうなるのだろう、などと考えてしまった。

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2024/02/03

「哀れなるものたち」小説と映画と

 映画を見る前に原作の小説を読んでおこうとアラスター・グレイ「哀れなるものたち」を一気に読了。一筋縄ではいかない「哀れなるもの」とは何(誰)か。それを映画ではどう切り取って表現してるんだろうか。すごく楽しみだ。映画を見た人が、何じゃこれ、と思うならそれはそれで原作通りともいえる。

 アラスター・グレイの小説は「ラナーク」を読んだことがある。4巻からなる作品だけども、3巻から始まるという不思議な作りの作品で、画家でもあるので、奇妙な味わいの自作のイラストもたくさん入っている。巻頭のこのイラストに、人体解剖図のようなものがあり、これは「哀れなるものたち」につながるイメージ。1,2巻と3,4巻で違う話になっていて、最後の方で、これは親子の話であって繋がりがあるらしいとなんとなくわかるというもの。この不思議な、SFでもありミステリーでもありゴシック・ロマンでもあり、作者の自伝的要素もある実験小説は読んでいて面白かった。

 そのグレイの作品を原作とした、「ロブスター」というこれもまた奇妙な印象に残るSF映画のヨルゴス・ランティモス監督の映画である。これは、見逃してはいけないと、原作を読み終えた次の日に見てきた。原作では手紙の書き方や内容の変化で表されている、主人公ベラ・バクスターの幼児から大人の女性への精神的成長を、エマ・ストーンが見事に演じているのが凄い。その演技以上に、良いと思ったのは、不安を掻き立てるような音楽。フランケンシュタイン物と思わせといて実は・・・という部分は原作より弱くなっているのがちょっと残念。原作は、ありえない物語を実際に起きたことだと思わせるための仕掛けがなされているが、映画の方では、寓意的ファンタジー世界の画作りであった。

 色々なところが原作から改変されているが、まったく違っているのはクライマックスのシーン。この改変はそれなりに理解できる(原作の対応する部分はちょっとモタモタ感がある)が、このクライマックスに至る直前のパリの娼館でのエピソードで、フェミニズム観点から原作を切り取っているように思われるのに、男性医師による性病定期検査をカットしてしまったのはなぜだろう。主人公の自覚の強さを示せるし、監督好みの衝撃的映像も作れるのに。

 原作は、メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」のようでいて、H.G.ウエルズへの意識も相当にあると感じるのであるが、映画では、それが直接的には表わされていない。ただ、ラストシーンでそれを暗示しているようには思われる。

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2023/12/31

またまたCS映画の日々

 今年1年もCSの映画チャンネルで、劇場公開時に見落とした映画やら、昔からタイトルは知っているのに見たことのなかった映画、地元の映画館ではかからない映画など、170作見た。昨年より本数が減っているのは、町内会長の仕事のためか。

 西部劇をずっと見続けているけれど、一向にこれは見たという状態にならないくらいに初めて見る作品が放映されている。その中では「戦う幌馬車」が「サボテン・ジャック」のカーク・ダグラスの元ネタだというのが分かって長年の疑問が解消された。マカロニウエスタンでは「群盗荒野を裂く」が二転三転するストーリー展開で傑作であった。昨年クリント・イーストウッド出演のものはだいぶ見てしまい、ジュリアーノ・ジェンマ出演ものを何作か見た。その中では「荒野の大活劇」が、銀行家のじゃじゃ馬娘と悪人になり切れない兄弟のコメディで面白かった。コメディ西部劇ということではディーン・マーチンとアラン・ドロンの「テキサス」も楽しい。

 アラン・ドロンの作品もいくつか見た。以前見たのだが、ほとんど初めて見るのと同じだった「レッドサン」と「太陽がいっぱい」。後者はやはり傑作である。

 今頃になって初めて見たというのが「合衆国最後の日」「恐怖の報酬」(1977年ウィリアム・フリードキン監督版)。どちらももっと早く見ておくべきだった。後者はオリジナルのクルーゾー監督作と勝るとも劣らない作品になっている。「用心棒」のギャング版「ラストマン・スタンディング」やオックスフォード辞典編纂の裏話「博士と狂人」、中国映画の「山の郵便配達」(犬がいい)、伊丹十三の「マルサの女」も同様である。

 劇場公開時に見に行こうかと思ったが結局見に行かなかったので、やっぱり見に行っておくべきだったと思ったのが「ケイコ目を澄ませて」「オートクチュール」「MINAMATAーミナマタ」「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」。「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」で問題になっている汚染物質の仲間は規制されないまま、浜松や清水でも問題になっている。

 監督特集として放映されたものでは、トリュフォー監督の「ピアニストを撃て」「日曜日が待ち遠しい!」がやはり面白い。ジャック・リベットやシャンタル・アケルマンというよく知らなかった監督作品も見た。中国のジャ・ジャンク―監督も知らなかった監督だが、田舎から都会に、あるいは、開発が進みつつある地域への出稼ぎの実態を知ることができ、「雄獅少年/ライオン少年」を理解するのに役立った。ヴェンダース作品もだいぶ見たが「アメリカ家族のいる風景」が一番面白かった。

 インド映画も見たが、戦いと争いのアクション作品よりも、貧しい高校生たちをインドの東大と言われる大学に合格させる「スーパー30 アーナンド先生の教室」がいい。自転車がしゃべり「荒武者キートン」に言及する「あなたがいてこそ」もいい。総じてインド映画を見てしまうのは、ヒロインがやせすぎていなくて健康的な美女であるということも大きい。

 SFやサメ物、古典ホラーのリメイクなども見たが、その中では、イタリアのエロ・コメディSFの「セックス発電」のオチが面白かった。本当はこういうジャンルの作品の方が好きなのだが、なんだかいまいちな作品が多かった。

 年末になって、渥美清の寅さん以前の作品、「喜劇 急行列車」「喜劇 団体列車」「喜劇 初詣列車」「ブワナ・トシの歌」を見た。アフリカロケの「ブワナ・トシの歌」がやはりいい。この映画に写っているアフリカの光景もどれだけ残っているのだろうかと思う。列車シリーズは、佐久間良子の美しさに目が行くが、「団体列車」「初詣列車」に「キャプテン・ウルトラ」のアカネ隊員を演じた城野ゆきが出ているのが嬉しかった。アンヌ隊員よりアカネ隊員の方が好きだったのですよ。人情喜劇というよりサイケの時代を反映したスラプスティック喜劇の「初詣列車」が一番好みだ。今年亡くなった財津一郎もいい味出している(「ブワナ・トシの歌」のギャグもある)。
 

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2023年に見た映画

 今年も48本ほど映画館で見た。邦画のアニメ作品のレベルが高く、数も多くて追いきれず、良い評判を目にして見に行きたいと思ったが、結局見に行けなかったものもかなりある。所謂ミニシアター系の映画もかなりの数、地元の映画館で上映されたが、自分の見たい作品が同じ週に複数上映され、上映時間も重なっているということで、見れなかった作品の方が多くなってしまったという印象が残る。ぜんぜん自分の興味を掻き立てない作品しかやっていない期間もあって、分散してくれれば良いのにと思う。午前十時の映画祭は「無法松の一生」「ミツバチのささやき」「暗殺のオペラ」「カサンドラ・クロス」などを見れたが、これらの作品を越えると思った作品は少ない(特に洋画)。これらのリバイバル映画を除く形で、例年のごとく、ベスト10を選んでみる。昨年とは違って、自分が気に入った順である。

 1 アステロイド・シティ
 2 BLUE GIANT
 3 窓ぎわのトットちゃん
 4 THE FIRST SLAM DUNK
 5 スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
 6 ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック
 7 雄獅少年/ライオン少年
 8 ストールン・プリンセス キーウの王女とルスラン
 9 マエストロ:その音楽と愛
  10   ゴジラ-1.0 

    次点 君たちはどう生きるか

 1はロードランナー(姿形は実在のものだが、鳴き声はルーニーチューンと同じBeep Beep!))が出てきて踊るのがダメ押し。2は映画館がジャズ・ライブの会場と化した熱気がいい。3は作品の出来としては今年見た新作映画の中では一番。ベスト1にしなかったのは、自分の幼い頃の忘れていた記憶に障る部分があったため。8はクラウドファンディングに参加した作品で、東京まで見に行くことを覚悟していたら、地元の映画館で上映された。ウクライナのアニメのレベルの高さを知ることができた。東京とか新千歳とか新潟でのアニメ映画祭で、海外の長編アニメがいくつも上映されているが、この作品のようにそれらが地方の映画館で見れるようになれたらと思う。9は、あんまり情報を入れずに見に行って、なんかレナード・バーンスタインに似た俳優が出てきたなあ、と思ったら、バーンスタインその人についての映画であった。主人公として描かれているのは、実際にはバーンスタインの妻である。

 「君たちはどう生きるか」は2度見に行ったのだが、2度見に行った映画でベスト10に入れなかったのはこの作品だけ。これを10本の中に入れなかったのは、背景とキャラクターの描き方の美術的技法の不一致感を、10本の中に入れた作品より強く感じたため。高畑勲が「ホーホケキョ となりの山田くん」「かぐや姫の物語」で、アニメ制作のデジタル化により、いつまでもセルアニメ技法をそのまま使う必要はない、いわゆるアートアニメのような美術的に統一された描画の長編アニメが作れるということを示したのにもかかわらず、リアルすぎる背景の上の平面的に塗り分けられたキャラクターという従来の形そのままなのが気になったのである。2~6のアニメは高畑勲の試みを受けて作られている気がする。

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2023/01/06

フライシャーについての新しい本

Dsc_0846hs_001 `MADE OF PEN & INK:FLEISCHER STUDIOS THE NEW YORK YEARS' by G.MICHAEL DOBBS が届いた。表紙の見かけが 'The Art and Inventions of Max Fleischer'に似ているので最初amazonで見つけたときはこの本は持ってると勘違いし、その後見直して新しい本と気づいてあわてて注文したものだ(注文したのは日本のアマゾン)。著者は、アニメ雑誌Amimato!やAnimation Planetの編集発行人だった人。自分と同世代でTVでポパイなどに熱狂し、大学時代に上映会で再見してフライシャーについての本を書こうと思たち、デイブ・フライシャーやリチャード・フライシャーなどと連絡を取り、当時健在だった多くの関係者にインタービューし、特に、アニメーター/演出家のマイロン・ウォルドマンMyron Waldmanの協力を得て、1990年には出版されていたばずだったものが、さまざまな経緯で今になってしまったもの。続刊も準備中とのこと。これから本文を読もうと思うが、これまでに出版されているフライシャー関係の本にはない視点が得られそうな本である。
 フライシャーについての本と言えば、まず、Leslie Cabargaの'THE FLEISCHER STORY' が思い浮かぶが、この本はデイブ・フライシャーからしか協力が得られておらず、マックス・フライシャー側からすれば問題のある記述があった(改訂版では多少修正されている)。マックス側の視点で書かれたものとしては、マックスの息子のリチャードが書いた「マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者」Out pf the Inkwell があるが、ドブスDobbsによれば、ベティ・ブープに関しての記述には何か所か間違いがあるという。この本自体もドブスとリチャードとの共著という話もあったようだが、晩年のリチャードが父への思いを込めた本にしたいということで共著にはならなかったそうだ。リチャード・フライシャーが日本でもファンがかなりいる映画監督でその遺作となった著書であり、かつ、ジブリ配給で「バッタ君町に行く」が公開されることもあってか、原著が出版されてすぐにと感じるタイミングで邦訳が出た。ドブスの本もそのうちに翻訳出版されてほしいと思う。
 

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2022/11/11

チャーリー・バワーズを見たのです

 静岡サールナートホールで上映中の『NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ 発明中毒篇』を今日行かなければ見ることができないぞ、ということで、6日の日曜日に見てきた。バワーズについての1番の基本文献となるパンフレットも入手した。「マットとジェフ」を作っていたパワーズのところにいて、その後30年代のディズニー・プロで活躍するテッド・シアースがコメディ作品にもかかわっていたということもちゃんと書いてある。上映作品については、今回の公開用につくられた伴奏音楽が素晴らしい。やっぱり、ドルーピーの元ネタになったんではと思われる神出鬼没の怪人を捕まえようとする「怪人現る」が好きだなあ。オチもぶっ飛んでるし、実写とアニメ―ジョンとの融合も一番である。今回の上映には入っていない IT'S A BIRD(1930)は、バワーズ・コメディの集大成であったなあと思う。「たまご」「自動車」「ほら話」「変な生き物(人間も含む)」の4要素がすべてある。

 

 積読だったジョー・アダムソンJoe Adamsonの'THE WALTER LANTZ STORY'(1985)を読んでいる。チャーリー・バワーズが1930年代半ばに「うさぎのオズワルド」を作っていたランツ・プロの親会社ユニバーサルに雇われたことについて書かれている部分まで読み進んだ。ユニバーサルは、ランツが契約通りのペースで作品を作り続けれるか不安に思い、ランツに知らせずに、年26本のペースで安く作れるとアピールしたバワーズと契約した。バワーズはカリフォルニアのランツの元にはいかず、ニューヨークの自分のスタジオで作品を製作し、それは、Dumb Cluckという新キャラクターを登場させたバワーズらしい奇怪な作品だったとのこと。「マウス・アンド・マジック」のリストを見ると、1937年に'Dumb Cluck'というタイトルのオズワルド・シリーズの作品があった(このころのランツ作品には製作スタッフ名がクレジットされていないので、実際の演出家などの情報はない)。ということは、アヴェリーとの直接の接点はなかったと考えるのが妥当であろう。ちなみに、Bendazziの'ANIMATION A WORLD HOISTRY'にもこの経緯は書かれている(作品名は挙げられていないが)。

 

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2022/08/06

もう一つのベティさん

 だいぶ前にThunderBeanからでた'THE OTHER BETTY BOOP CARTOONS VOLUME1'をやっと見終わった。フィルムが失われて見ることができない作品とされてきたHonest Love and True(1938)が収録されているのが、このディスクの一番の売り。このフィルムは、フランス語のタイトルがついているがサウンドは英語というもの。解説書はついていないし、ディスクの中に資料みたいなものも収録されていない。このBDについて検索したら、CARTOON RESEARCHの記事が見つかり、この記事には、

 The film appearing on this set is courtesy of film hero David Gerstein for finding the print and Serge Bromberg for being able to attain it and scan it for the set. (このフィルムは、フィルム発掘人のDavid Gersteinがプリントを見つけてくれたおかげで、Serge Brombergがプリントを手に入れられてデータ化できた)

と書かれている。残念ながら、それ以上の情報はない。
 私自身としては、18本の中では、Grammpy's Indoor Outing が立体背景が効果的に使われていて一番面白かった。Pudgy Picks a Fight! は、ベティさんが最初と最後にしか出てこず、ベティさんのセクシィな踊りが見れないのは駄作、と昔なら思っただろうが、今回見たら、パジィの大変なことしちゃったどう取り返そうという、健気な演技に作画が素晴らしく、かわいいので、パジィ主演作だと思えば傑作である、と感じ入ってしまったのであった。

 ちなみに、Olive FilmsのTHE ESSENTIAL COLLECTIONとの作品のダブりはない。

 

収録作品
1 Betty Boop’s Ker-Choo(1933)「ベティの自動車競走」
2 Betty Boop’s Crazy Inventions(1933)「ベティの発明博覧会」
3 Is My Palm Read?(1933)「ベティの運命判断」
4 Betty in Blunderland(1934)「ベティの鏡の国訪問」『間違いだらけの国』
5 No! No! 1000 Times No!(1935)「ベティの空中騒動」『ベティの愛の勝利』
6 Betty Boop and Grampy(1935)「ベティとグランピィ」『グランピーの家に行くのさ』
7 Henry, The Funniest Living American(1935)「ベティの悪戯小僧」(宝島社も同じ)
8 Betty Boop and the Little King(1936)「ベティと小さな王様」『ベティとリトルキング』
9 Betty Boop and Little Jimmy(1936)「ベティとあわて者」『ベティのダイエット』
10 Happy You and Merry Me(1936)
11 Grampy’s Indoor Outing(1936)「ベティの室内遠足」
12 Be Human(1936)「ベティの動物愛護」
13 House Cleaning Blues(1937)「ベティのお掃除」
14 Pudgy Picks a Fight!(1937)「ベティの銀狐騒動」
15 Ding Dong Doggie(1937)「ベティの消防犬」
16 Honest Love and True(1938)
17 Musical Mountineers(1939)『ベティと陽気な音楽隊』
18 Rhythm on the Reservation

 

「  」は「ベティ・ブープ伝」(筒井康隆)、『  』は宝島社のDVD‐BOXの邦題

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2022/07/30

あれからとりあえず何もない

 6/10にC4ピカソの警告音のことを書いて以来、今日までその音を聞くことはなくなった(ライトをハイビームにしたときを除く)。この4月から長くなった通勤にも慣れてきた。次のオイル交換まで、何もないことを祈る。

 以下、時間的にはちょっと遅くなってしまった話題などを少々。

 7月9日から浜松市美術館で「ハイジ展」が始まった。9日に小田部羊一さんの講演会があるので行くならその日に行きたいと思っていたが、都合によりその日に行けなくなりどうしようと思っていたところ、さる方より一緒に行かないかというお誘いがあり行ってきた。美術館の1階にハイジの原作に関わる展示、2階にアニメの「アルプスの少女ハイジ」に関する展示がされていた。
 1階で目についたのは、まず、ハンナ・バーベラの1982年の長編アニメ「ハイジの歌」Heidi's Song のポスター。この作品は実は見たことがない。1973年の長編「シャーロットのおくりもの」は日本でも公開されビデオ等も出ているのに、この作品はそうならなかったのはなぜだろう。やっぱり、「アルプスの少女ハイジ」があったせいだろうなあ。次に目についたのは、原作が日本で翻訳出版されたときの様々な画家による挿絵。その中では、少女漫画のスタイルを確立したといっていい高橋真琴の原画が見れたのが一番。
 2階の方では、やっぱり宮崎駿の手になるレイアウトがすごい。コンテは富野由悠季が手がけたものもあり、絵が描ける演出家であることがわかる。面白かったのは主題歌に関する展示で、特に、大杉久美子の事務所の手になる売り込み文書(手書き!)。また、別の日に見た友人から、スペイン語のコミック版がテレビシリーズの最終回を越えて描かれていて、おんじの船が嵐で沈むわ、ハイジとペーターが洞窟探検するわ、もう原作無視の波乱万丈の展開、ということを知らされて、自分は見落としてしまっていたことに気づき、うわ見ておきたかった、となってしまった。

 映画は「ハッチング‐孵化-」以降、「イースター・パレード」「シン・ウルトラマン」「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」「犬王」「FLEEフリー」「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」「PLAN75」「トップガン マーヴェリック」「ミニオンズ フィーバー」「暴太郎戦隊ドンブラザーズTHE MOVIE新?初恋ヒーロー/劇場版仮面ライダーリバイス バトルファミリア」「ブレードランナー ファイナルカット版」と見た。この中では「犬王」「FLEEフリー」を2回見た。どちらも途中で居眠りしたということもあってなのだが、居眠りしていないシーンでも、もう一度見て確認したいという魅力のある作品だったからである。「PLAN75」は地元出身の磯村勇斗が出ているから見に行き、「劇場版仮面ライダー」はお世話になった方の息子さんがプロヂューサーだからというのもあるが、「ドンブラザース」の鬼頭はるかを劇場の大スクリーンで見て見たかったという単純な理由から(自分にとって今一番面白いテレビ番組は「ドンブラザース」である)。

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