2023/01/06

フライシャーについての新しい本

Dsc_0846hs_001 `MADE OF PEN & INK:FLEISCHER STUDIOS THE NEW YORK YEARS' by G.MICHAEL DOBBS が届いた。表紙の見かけが 'The Art and Inventions of Max Fleischer'に似ているので最初amazonで見つけたときはこの本は持ってると勘違いし、その後見直して新しい本と気づいてあわてて注文したものだ(注文したのは日本のアマゾン)。著者は、アニメ雑誌Amimato!やAnimation Planetの編集発行人だった人。自分と同世代でTVでポパイなどに熱狂し、大学時代に上映会で再見してフライシャーについての本を書こうと思たち、デイブ・フライシャーやリチャード・フライシャーなどと連絡を取り、当時健在だった多くの関係者にインタービューし、特に、アニメーター/演出家のマイロン・ウォルドマンMyron Waldmanの協力を得て、1990年には出版されていたばずだったものが、さまざまな経緯で今になってしまったもの。続刊も準備中とのこと。これから本文を読もうと思うが、これまでに出版されているフライシャー関係の本にはない視点が得られそうな本である。
 フライシャーについての本と言えば、まず、Leslie Cabargaの'THE FLEISCHER STORY' が思い浮かぶが、この本はデイブ・フライシャーからしか協力が得られておらず、マックス・フライシャー側からすれば問題のある記述があった(改訂版では多少修正されている)。マックス側の視点で書かれたものとしては、マックスの息子のリチャードが書いた「マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者」Out pf the Inkwell があるが、ドブスDobbsによれば、ベティ・ブープに関しての記述には何か所か間違いがあるという。この本自体もドブスとリチャードとの共著という話もあったようだが、晩年のリチャードが父への思いを込めた本にしたいということで共著にはならなかったそうだ。リチャード・フライシャーが日本でもファンがかなりいる映画監督でその遺作となった著書であり、かつ、ジブリ配給で「バッタ君町に行く」が公開されることもあってか、原著が出版されてすぐにと感じるタイミングで邦訳が出た。ドブスの本もそのうちに翻訳出版されてほしいと思う。
 

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2022/11/11

チャーリー・バワーズを見たのです

 静岡サールナートホールで上映中の『NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ 発明中毒篇』を今日行かなければ見ることができないぞ、ということで、6日の日曜日に見てきた。バワーズについての1番の基本文献となるパンフレットも入手した。「マットとジェフ」を作っていたパワーズのところにいて、その後30年代のディズニー・プロで活躍するテッド・シアースがコメディ作品にもかかわっていたということもちゃんと書いてある。上映作品については、今回の公開用につくられた伴奏音楽が素晴らしい。やっぱり、ドルーピーの元ネタになったんではと思われる神出鬼没の怪人を捕まえようとする「怪人現る」が好きだなあ。オチもぶっ飛んでるし、実写とアニメ―ジョンとの融合も一番である。今回の上映には入っていない IT'S A BIRD(1930)は、バワーズ・コメディの集大成であったなあと思う。「たまご」「自動車」「ほら話」「変な生き物(人間も含む)」の4要素がすべてある。

 

 積読だったジョー・アダムソンJoe Adamsonの'THE WALTER LANTZ STORY'(1985)を読んでいる。チャーリー・バワーズが1930年代半ばに「うさぎのオズワルド」を作っていたランツ・プロの親会社ユニバーサルに雇われたことについて書かれている部分まで読み進んだ。ユニバーサルは、ランツが契約通りのペースで作品を作り続けれるか不安に思い、ランツに知らせずに、年26本のペースで安く作れるとアピールしたバワーズと契約した。バワーズはカリフォルニアのランツの元にはいかず、ニューヨークの自分のスタジオで作品を製作し、それは、Dumb Cluckという新キャラクターを登場させたバワーズらしい奇怪な作品だったとのこと。「マウス・アンド・マジック」のリストを見ると、1937年に'Dumb Cluck'というタイトルのオズワルド・シリーズの作品があった(このころのランツ作品には製作スタッフ名がクレジットされていないので、実際の演出家などの情報はない)。ということは、アヴェリーとの直接の接点はなかったと考えるのが妥当であろう。ちなみに、Bendazziの'ANIMATION A WORLD HOISTRY'にもこの経緯は書かれている(作品名は挙げられていないが)。

 

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2022/08/06

もう一つのベティさん

 だいぶ前にThunderBeanからでた'THE OTHER BETTY BOOP CARTOONS VOLUME1'をやっと見終わった。フィルムが失われて見ることができない作品とされてきたHonest Love and True(1938)が収録されているのが、このディスクの一番の売り。このフィルムは、フランス語のタイトルがついているがサウンドは英語というもの。解説書はついていないし、ディスクの中に資料みたいなものも収録されていない。このBDについて検索したら、CARTOON RESEARCHの記事が見つかり、この記事には、

 The film appearing on this set is courtesy of film hero David Gerstein for finding the print and Serge Bromberg for being able to attain it and scan it for the set. (このフィルムは、フィルム発掘人のDavid Gersteinがプリントを見つけてくれたおかげで、Serge Brombergがプリントを手に入れられてデータ化できた)

と書かれている。残念ながら、それ以上の情報はない。
 私自身としては、18本の中では、Grammpy's Indoor Outing が立体背景が効果的に使われていて一番面白かった。Pudgy Picks a Fight! は、ベティさんが最初と最後にしか出てこず、ベティさんのセクシィな踊りが見れないのは駄作、と昔なら思っただろうが、今回見たら、パジィの大変なことしちゃったどう取り返そうという、健気な演技に作画が素晴らしく、かわいいので、パジィ主演作だと思えば傑作である、と感じ入ってしまったのであった。

 ちなみに、Olive FilmsのTHE ESSENTIAL COLLECTIONとの作品のダブりはない。

 

収録作品
1 Betty Boop’s Ker-Choo(1933)「ベティの自動車競走」
2 Betty Boop’s Crazy Inventions(1933)「ベティの発明博覧会」
3 Is My Palm Read?(1933)「ベティの運命判断」
4 Betty in Blunderland(1934)「ベティの鏡の国訪問」『間違いだらけの国』
5 No! No! 1000 Times No!(1935)「ベティの空中騒動」『ベティの愛の勝利』
6 Betty Boop and Grampy(1935)「ベティとグランピィ」『グランピーの家に行くのさ』
7 Henry, The Funniest Living American(1935)「ベティの悪戯小僧」(宝島社も同じ)
8 Betty Boop and the Little King(1936)「ベティと小さな王様」『ベティとリトルキング』
9 Betty Boop and Little Jimmy(1936)「ベティとあわて者」『ベティのダイエット』
10 Happy You and Merry Me(1936)
11 Grampy’s Indoor Outing(1936)「ベティの室内遠足」
12 Be Human(1936)「ベティの動物愛護」
13 House Cleaning Blues(1937)「ベティのお掃除」
14 Pudgy Picks a Fight!(1937)「ベティの銀狐騒動」
15 Ding Dong Doggie(1937)「ベティの消防犬」
16 Honest Love and True(1938)
17 Musical Mountineers(1939)『ベティと陽気な音楽隊』
18 Rhythm on the Reservation

 

「  」は「ベティ・ブープ伝」(筒井康隆)、『  』は宝島社のDVD‐BOXの邦題

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2022/07/30

あれからとりあえず何もない

 6/10にC4ピカソの警告音のことを書いて以来、今日までその音を聞くことはなくなった(ライトをハイビームにしたときを除く)。この4月から長くなった通勤にも慣れてきた。次のオイル交換まで、何もないことを祈る。

 以下、時間的にはちょっと遅くなってしまった話題などを少々。

 7月9日から浜松市美術館で「ハイジ展」が始まった。9日に小田部羊一さんの講演会があるので行くならその日に行きたいと思っていたが、都合によりその日に行けなくなりどうしようと思っていたところ、さる方より一緒に行かないかというお誘いがあり行ってきた。美術館の1階にハイジの原作に関わる展示、2階にアニメの「アルプスの少女ハイジ」に関する展示がされていた。
 1階で目についたのは、まず、ハンナ・バーベラの1982年の長編アニメ「ハイジの歌」Heidi's Song のポスター。この作品は実は見たことがない。1973年の長編「シャーロットのおくりもの」は日本でも公開されビデオ等も出ているのに、この作品はそうならなかったのはなぜだろう。やっぱり、「アルプスの少女ハイジ」があったせいだろうなあ。次に目についたのは、原作が日本で翻訳出版されたときの様々な画家による挿絵。その中では、少女漫画のスタイルを確立したといっていい高橋真琴の原画が見れたのが一番。
 2階の方では、やっぱり宮崎駿の手になるレイアウトがすごい。コンテは富野由悠季が手がけたものもあり、絵が描ける演出家であることがわかる。面白かったのは主題歌に関する展示で、特に、大杉久美子の事務所の手になる売り込み文書(手書き!)。また、別の日に見た友人から、スペイン語のコミック版がテレビシリーズの最終回を越えて描かれていて、おんじの船が嵐で沈むわ、ハイジとペーターが洞窟探検するわ、もう原作無視の波乱万丈の展開、ということを知らされて、自分は見落としてしまっていたことに気づき、うわ見ておきたかった、となってしまった。

 映画は「ハッチング‐孵化-」以降、「イースター・パレード」「シン・ウルトラマン」「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」「犬王」「FLEEフリー」「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」「PLAN75」「トップガン マーヴェリック」「ミニオンズ フィーバー」「暴太郎戦隊ドンブラザーズTHE MOVIE新?初恋ヒーロー/劇場版仮面ライダーリバイス バトルファミリア」「ブレードランナー ファイナルカット版」と見た。この中では「犬王」「FLEEフリー」を2回見た。どちらも途中で居眠りしたということもあってなのだが、居眠りしていないシーンでも、もう一度見て確認したいという魅力のある作品だったからである。「PLAN75」は地元出身の磯村勇斗が出ているから見に行き、「劇場版仮面ライダー」はお世話になった方の息子さんがプロヂューサーだからというのもあるが、「ドンブラザース」の鬼頭はるかを劇場の大スクリーンで見て見たかったという単純な理由から(自分にとって今一番面白いテレビ番組は「ドンブラザース」である)。

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2021/09/18

「スペース・プレイヤーズ」は「スペース・ジャム」よりできが良い

 地元に緊急事態宣言が出ているので映画館に行くのも自粛してきたが、「スペース・プレイヤーズ」の字幕版が上映されているというので、上映終了になってしまわぬうちにシネプラザ・サントムーンで見てきた。「スペース・ジャム」から20年以上たった続編というか、リメイクというか、バスケットボールの名選手たちとワーナー漫画のキャラクターたちが共演する作品である。「スペース・ジャム」ではあまり活躍したとは言えなかったコヨーテやスピーディ・ゴンザレスが活躍する部分があったのが良かった。ルーニーチューンのキャラクター以外に、現在ワーナーが権利を持つ、ハンナ・バーベラ作品やDCコミックスなどのキャラクターも顔を見せ、オールドファンには懐かしいキャラクターの登場もあって楽しい作品だ。昔「スペース・ジャム」を見たときに感じた問題点が、ワーナー映画のデーターセンターの電脳世界という設定にしたことで、ほぼすべて解消されているのが、特に好ましい。

 吹き替え版もチェックしておこうと、ジョイランドみしまで見た。字幕版で見落としていた多くのキャラクターを確認。宇宙怪人ゴーストが空中に浮いているのには、字幕版では全く気付けなかった。字幕の字を追いながらの画面の色々なところにちょこっと登場するキャラクターを見つけるのは、やはり、難しかったのである。グラニーの大ベテラン声優、京田尚子の声を聴いて、いつまでも元気でいて声を聴かせてほしいと思う。キングコングとリキラ、アイアンジャイアントとフランケンロボが一瞬でもいいから隣り合っているカットがあって欲しかったと思うのは私だけだろうか。TVドラマ版のバットマンとロビンが出てきて、ニール・ヘフティのテーマ曲も使われたのが私には一番嬉しかった。

 

 緊急事態宣言が出される前の7,8月前半にはかなり映画館に行き、「映画大好きポンポさん」「ブラック・ウィドウ」「竜とそばかすの姫」「100日間生きたワニ」「2001年宇宙の旅」「ゴジラVSコング」「白蛇:縁起」「サイダーのように言葉が湧き上がる」を見た。この中では「白蛇:縁起」が一番気に入った。この映画のスタッフで「三体」を映画化してほしいと思う。僅差で「映画大好きポンポさん」が続く。ポンポさんがロジャー・コーマンのようなプロデューサーだというのが特に気に入った。多少予測はしていたものの、結果、やっぱりちょっとがっかりだったのは「竜とそばかすの姫」および「ゴジラVSコング」。「サイダーのように言葉が湧き上がる」は予告編で、わたせせいぞう的な背景の高彩度(高輝度と言った方が良いのか?)さに目が耐えられない、と思ったのだが、そうはいってもこのような様式化された背景が気になって、耐えられなければ寝ればいいと見に行った。見始めた最初は多少きついなと思ったが、目が慣れて、最後まで見ることができた。単純なボーイ・ミーツ・ガール映画だが、現在の地方都市の問題点がそれとはなく見えるのがなかなかうまい作りだ。

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2021/05/02

シン東宝

 日本映画専門チャンネルで新東宝の天地茂出演映画の特集(3本立て)をやっていたので見てみた。その中では、新東宝の最後の作品でスタッフ、出演者がノーギャラで撮ったという「恋愛ズバリ講座」(1961年)が一番面白かった。第1話「吝嗇」三輪彰監督、第2話「弱気」石川義寛監督、第3話「好色」石井輝男監督の3話からなるオムニバス作品。ドケチな男とガメツイ女が抑揚のない早口でやりあうのが面白い第1話、幼稚園の先生のあっと驚く大変身の第3話、それらに比べるとちょっとインパクトに欠ける田舎の村の原発誘致騒動の第2話なのだが、私にはこの第2話が実は気になった。それは、三島の農兵節(ノーエ節)が歌われ、架空の田舎の村の村人が話している方言が静岡県東部の方言だったからである。新東宝には三島出身のスタッフがいたのか? 一緒に放送された「憲兵と幽霊」(中川信夫監督1958年)でも冒頭の中山昭二と久保菜穂子の結婚式で農兵節が歌われていたし。

 それで、調べてみたら、新東宝の設立に関わり、取締役を勤めたこともある渡辺邦男監督が三島出身だったのである。第1話の天地茂演じるケチな社長は新東宝社長の大蔵貢を思わせるので、第2話の田舎の村長は渡辺邦男なるんだろうか。新東宝関係者にはよくわかる裏の意味がある話になっているのかな。池内淳子演じる村長の娘が新東宝を表していて、東京から村長の娘と結婚したくてやってくる眼鏡の気弱な男(演じるはなんと菅原文太!)が、やっぱり、大蔵貢なのか?

 最後の第3話は、誰かへの当てこすりというより、開き直ったスタッフによる、さらばすべての新東宝映画、という感じの三原葉子の怪演だな。

 音楽が渡辺宙明(3本目の「怒号する巨弾」も)だったのも収穫。「忍者部隊月光」以前の作品を初めて知った。

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2021/04/04

テスラの歌

 マイケル・アルメレイダ監督「テスラ エジソンが恐れた天才」を見た。

 イーサン・ホークがニコラ・テスラ(当時の最先端の電磁気学の理論を理解していた発明家)、エジソン(オームの法則程度しか知らなかった発明家)をカイル・マクラクランが演じているんだから、普通の映画になるはずがない。メタ・フィクション的な、いわば、メタ映画である。投資家J.P.モルガンの末娘アン・モルガンがナレーターであるが、時にアンを演じるイブ・ヒューソンとしてのナレーションが説明もなくひとつながりとして混じる。グリーンバック合成ではなく、スクリーン・プロセス(リア・プロジェクション)を使ったシーンを多用しているのだが、わざとそれとわかるような撮り方になっている。実在の人物を基にした映画でよくある映画的な面白さを狙った実際には起きなかったエピソードについてナレーションで「実際にはなかったこと」と画面を否定する。言わば、本編とメイキングのドキュメンタリーが切れ目なくつながった作り(低予算ゆえの発想か)なのである。このため、同じ題材のアルフォンソ・ゴメス=レオン監督「エジソンズ・ゲーム」のような実話映画にはしたくなかったという強い意志を感じ、テスラという人物の多面性・多義性・先進性を示したかったのだろうと思う。史実としては何も証拠立てるものがないサラ・ベルナールとテスラの微妙な恋愛関係という映画的な「大ウソ」にリアリティを与える手段にもなっている。脚本自体は1980年代の初め(つまりはテスラの再評価が高まった頃)に書かれたという。

 スマホやパソコンが出てくるシーンがあってあれ?と思うのだが、テスラの発明がなかったら実現しなかったものであり、百年以上前にテスラが構想した世界に近づいた証拠として登場させたのであろう。テスラが行ったデモンストレーション(エジソン側の高電圧の交流は危険だ、というキャンペーンに対抗したもの)の派手な放電現象は映画製作者に大きな影響を与え、映画におけるフランケンシュタイン博士のようなマッド・サイエンティスト像ができあがった。電磁波のエネルギーが放射点から地球全体に広がっていき地球すら破壊できるというテスラのヴィジョンは、日本のアニメでもよく見るものだ。このような点から言うと「シン・エヴァンゲリオン」と同じ時に本作が上映されているというのは象徴的だ。

 新戸雅彰の「発明超人二コラ・テスラ」(ちくま文庫)「知られざる天才ニコラ・テスラ」(平凡社新書)あたりを読んでいるか、少なくとも「エジソンズ・ゲーム」を見ていないと、わかりにくいシーンもある。

 ラストシーンのテスラ、というより、イーサン・ホークの歌(80年代の曲!)に、あっと驚いた。

 見る人を選ぶ映画である。

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2021/03/27

トムとジェリー、ケイラとけんかした

 現在公開中の実写合成「トムとジェリー」を家族で見てきた。ちょっと不安な感じ(「トムとジェリーの大冒険」等の長編アニメや「ロッキー&ブルウィンクル」みたいになってしまっていたら最悪だ)があったのだが、杞憂に終わって良かった。「スペース・ジャム」よりオリジナルの世界を尊重した好ましい作品だと思う。トムとジェリーだけでなく、動物がすべてアニメだったのがいい。人間側では、パッツィ・フェラン演じるジョイがいい味出している。思わぬところにあるキャラが特別出演していて驚いた(神出鬼没なあのキャラである)。

 ただ、すごく面白いよとは言えないのが残念。それはやっぱり、ハンナ=バーベラの「トムとジェリー」の世界の再現の難しさにある。これについては、チャック・ジョーンズがいみじくも語った「ジェリーを理解することができなかった」という言葉に象徴される。この点で、本作は案外いいところに迫っているのだが、ジェリーが少々かわいすぎるのである。また、クロエ・グレース・モレッツ演じるケイラが人間側の主人公になるわけだけれども、高級ホテルのブライダル担当になるという動機の描写が弱く、人間世界側のリアリティが不足しているのである。モレッツのキュートなビジュアルにだけ頼っているのが物足りないのである。ジェリーとモレッツのキュートさがぶつかり合ってしまって、引き算になっているのだ。

 音楽もどこかで、スコット・ブラッドリーのものを使ってほしかったなあ。

 それから一瞬だけど、かつて自分が乗っていたシトロエンC4が映ったのに気が付いた。ニューヨークなのに珍しいと思ったのだが、実際の撮影はイギリスで行われたということでそうなったのかな。

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2021/03/15

熱海に行くなら、怪獣映画祭

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  COVID-19のために昨年11月から延期になっていた第3回熱海怪獣映画祭に、13日(土)、行ってきた。当日は、風雨がひどくなるという天気予報だったが、出かけるときにはまだ雨がほとんど降っておらず、帰るときには予報通り晴れて、熱海駅~会場の移動時に大変な思いをすることなくすんだのが、まずよかった。12時30分からの「怪獣の日」「装甲巨人ガンボット」と15時からの「全国自主怪獣映画選手権熱海傑作選2021」を見る、ということで、昼食を余裕をもって食べられるようにと11時過ぎには熱海駅に着いた。で、今まで気になっていて一度も入ったことがなかった喫茶店ボンネットに行こうと店の前まで来たら「本日休業」。一都三県の警戒宣言は延長になった割に観光客がいるなあと思いつつ、結局は前回も食べた洋食の宝亭に行き昼食。上映時間にはまだ間があるので、食後のコーヒーを喫茶店でと、路地を歩いて行ってジャズ喫茶ゆしまという店を見つけ入る。こんなところにジャズ喫茶があるんだと扉を開けた。JBLのスピーカーから自分の家ではなかなか聞けない音量で、ジャズが流れている。しばらく聞いていると、ビル・エバンスのライブの録音のようだということがわかる。この店を見つけたことは、自分にとって、怪獣映画祭に出かけたことによる予想外の収穫。
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「怪獣の日」
 東日本大震災(原発事故を含む)からの直接の影響を感じて「シン・ゴジラ」を見てそうなったのかなと思ったら、「シン・ゴジラ」より前に作られたということでちょっと驚いた。上映後に登壇した中川監督への質問の最後に、会場に来ていた樋口真嗣監督から、「シン・ゴジラ」との時系列をきちんと主張した方がいいよという趣旨の発言が出たのが、良かった。
 怪獣の死体と思われるものが漂着した静岡県の浜江町の対応を描いた作品(ロケ地の海岸は伊豆っぽいけどどこだろうと思い、主人公の運転するスズキ・スイフトのナンバーは沼津ナンバーのように見えた)。怪獣は基本「死体」なので海岸に横たわっているだけで、この処理をどうするかということなのだけれど、海洋巨大生物の若手研究者が死んでる確証はないとして、生きている確証がないから死体として処理しようとする行政の意を汲んだ主任教授と対立するという展開。若い監督の作品なので、脚本のつめが少し甘いかなと思うけれど、「シン・ゴジラ」の先取りとして面白いと思う。
「装甲巨人ガンボット」
 川北紘一監督(本編の演出は大森一樹)が大阪芸大で撮った遺作。宇宙からやってきた巨大ロボ、デスレッドが大阪を襲い、急遽災害救助用ロボを改造したガンボットで対抗するという話。冒頭のシーンで、空を横切る正体不明の飛行物体に対して「あれはなんだ」と叫ぶ人物のアップで、同じセリフを繰り返していた我らが「源氏戦隊ゲンジマン」を思い出し、一人笑いしてしまった。このセリフは、かつての怪獣映画の定番セリフなんで、そういうことを意識してのシーン(その後も何箇所かで同じようなセリフが入る)だと思うが、まさか「源氏戦隊ゲンジマン」を知っていてやっていないよね(その昔、アニメ総会解散後に、当時大芸大の学生であった今ではとっても有名になってしまった人を含む関西のアニメ特撮ファンに囲まれ、「ゲンジマン」面白かったですよ、あれやってくださいとリクエストされてK氏が「あれはなんだ~」と空を指さして叫んだ、というできごとを私は覚えている)。
 デスレッドをあやつる宇宙人に殲滅させられた宇宙人が発した警告(対抗手段も含む)を親子孫三代かけてやっと解読したと思ったら、デスレッドがやってきてしまった、という設定が面白い。この作品、いくらでも続編ができそうなんだけど作られていないのかな。
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「全国自主怪獣映画選手権熱海傑作選2021」
 上映作品は、「県立武蔵野魔法高校にんきもの部ドラゴン狩り物語」「新モモトラマン2019」「惨殺巨獣バリギュラー」「リトル」「UNFIX 2021春の特別総集編」の5作品。最後の田口監督の作品は、町内会の会合があって6時までには家に帰らねばならなかったので、2/3くらい見たところでタイムアップ、やむを得ず会場を後にした。
 この中で特に面白かったのは最初の2つ。どちらもすごい特撮はしてないけれど笑える話になっていて、実際、会場全体が笑いの渦につつまれました。「県立武蔵野魔法高校にんきもの部ドラゴン狩り物語」は「ハリーポッター」のパロディで30分近い時間飽きさせない展開。「新モモトラマン2019」は、前回見た中で一番面白く感じた、一人で自宅で撮影している作品の田中守監督(田中安全プロレス)の新作で、5分という短さ(自分たちが8ミリフィルムで自主制作をしていた頃は5分という長さは普通で、10分を超えてくると長編だなあ、という感じであった)の中に、特撮映画をどうしても作ってみたかったんだよ~、という思いが凝縮されている。
 「惨殺巨獣バリギュラー」は「ウルトラマン」のギャンゴの話に似ている作品。爆笑2作品のあとではちょっと可哀そうに思う、なかなかのでき。特撮シーンよりも川の中で殴り合いをしているシーンの方に、よく撮った、と感心してしまう。「リトル」は日大芸術学部映画学科の学生の卒業制作。女子大生が小犬くらいの怪獣を見つけて育てていくが・・・という作品。指導教官の手塚昌明監督が怪獣を研究している大学教授ということで出演(声だけだけど)。これもきちんと作られていて好感が持てる。女性を主人公にした作品であるのがいい。
 前回より観客が多かった(ほぼ満席)ので、前回の話が伝わって見に来る人が増えたのかな。そうであるなら、とても良いことだ。自主制作を見せあい、作者同士、あるいは、作者と観客が交流する場がある、というのは次世代のクリエイターを生み出す場として大事だと思う。そういう意味でも、この企画がある熱海怪獣映画祭が末永く継続していってほしいなあ。

 

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2021/01/05

THE PUPPETOON MOVIE2

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 昨年末にバッグス・バニー80周年記念BDに続き、'THE PUPPETOON MOVIE2'のBDも届いた。新年になってから総てを見終わった。このディスクの目玉は、下記リストの4 A Hatful of Dreams(主人公のパンチがスーパーマンになる)と12 Jasper Goes Hunting(バッグス・バニーが登場する)である。スーパーマンになる方は、パぺトゥーンと同じくパラマウントが配給したフライシャーの「スーパーマン」の冒頭にほぼ毎回でる「鳥だ、飛行機だ、いや、スーパーマンだ」「弾丸よりも速く」「機関車よりも強い」もやっているのだが、フライシャーを参考にしたというより原作のDCコミックスから独自に映像化したとように見える。バッグス・バニーの方は、ジャスパーがジャングルで猛獣狩りをしているときに地面の穴からいつものように「どったのセンセイ?」と出てくるが、植木等のように「およびでない、こりゃまた失礼」とすぐに引っ込んでしまう。

 この2作よりも自分にとって興味深く、面白かったのが、3 Ali Baba And The Forty Thieves、11 How An Advertising Poster Came About、13 Sky Pirates、14 Jasper's Close Shave。3はアリババの話だが始まりのシーンの構成が「ポパイのアリババ退治」に似ていて、本作品の方が先に作られているのでフライシャーの方が参考にしているかも。11は逆にフライシャーの「インク瓶小僧」からヒントを得たような黒白の実写アニメ合成作品で、アニメのキャラクターはココのように画用紙に画家(パル?)が描いて飛び出してくる。13は、8と同じ栄養剤HORICKSのCMのようで、寝坊でだるだるの航空隊がこの栄養剤を摂るとホウレン草を食べたポパイのようにしゃきっとなって活躍する。14はジャスパー版「セビリアの理髪師」である。バッグスの「セビリアのラビット理髪師」The Rabitt of Sevilleよりも5年早く作られている。ということは、こちらもパルがジョーンズに影響を与えたと考えたくなる。

収録作品リスト
1 Dipsy Gypsy 1940
2 Radio Valve Revolution 1934
3 Ali Baba And The Forty Thieves 1935
4 A Hatful of Dreams 1944
5 Rescue Brigade 1937
6 In Lamp Light Land 1935
7 Jasper And The Choo-Choo 1942
8 Love On The Range 1936
9 The Gray Knighties 1941
10 Two Gun Rusty 1944
11 How An Advertising Poster Came About 1938
12 Jasper Goes Hunting 1944
13 Sky Pirates 1938
14 Jasper's Close Shave 1945
15 The Ship On The Ether 1934
16 Good Night Rusty 1943
17 Wilbur The Lion 1946
18 Jasper Tell 1944

EXTRA
1 This Is Oil,No.1:Prospecting for Petroleum 1946 Shell Oil Company Inc.
2 Trailors from Hell:Arnold Leibovit on The Puppetoon Movie
3 Trailors from Hell:Arnold Leibovit on The Fantasy Film World of George Pal
4 The Puppetoon Movie Speedy Alka-Seltzer Promo Miles Laboratory
5 The Puppetoon Movie Montage
6 Full Production and Donor Credits

 

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