2009/12/05

「マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者」田栗美奈子訳・作品社

 以前このブログで触れたことがあるリチャード・フライシャーが父親について書いた本'Out of the Inkwell MAX FLEISCHER AND THE ANIMATION REVOLUTION'(2005年刊)の翻訳が出た。こんな本は訳してくれそうにないから自分で訳すしかないのかなあ、と思っていたところだったので、驚くと共に早速手に入れて読んだ。ジブリが「バッタ君町に行く」のニュープリントを劇場公開するのにあわせて翻訳出版されたようだ。

 息子のリチャードが参考することができた残された資料は数少ないので(何故資料がないのかについての驚くべき事実が明らかにされている)、アニメーション研究に役立つと言うよりは、息子が父の思い出を語っている語り口を楽しむべき本である。原書では本の半ばに挿入されている貴重な写真・図版が、巻頭に来ている他は、カバーの裏表紙のベティとマックスの合成写真が省略されているくらいで、原書そのままの体裁である。翻訳は読みやすく、この手の翻訳本でありがちな勝手な邦題を付けて訳すと言うこともない。もっとも、訳者を困らせるほど作品タイトルはでてこないのだが。映画監督リチャード・フライシャーの生い立ちを知る「遺作」としても読める本であり、貴重である。

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2009/11/22

飛び出したフィリックス

 書くのが遅くなってしまったが、今月の宝島社のパブリックドメインDVD-BOXセットは「プルート」と「フィリックス」であった。ディズニー物はオリジナルの高画質の方でコレクションしたいのでパスしたが、「フィリックス」は、カラーのテレビアニメ版ではなく黒白オリジナル版29本にカラー版(ヴァン・ビューレンのレインボーパレード・シリーズ版)3本という珍しいものなので、もちろん、買いである。

 昔買ったきり本棚にしまってあったJohn Canemakerの「Felix THE TWISTED TALE OF THE WORLD'S MOST FAMOUS CAT」(PANTHEON BOOKS、1991年刊)を引きずり出してきて、巻末のフィルモグラフィと比較して見たら、第1作「フィリックスの恋人」Feline Follies(このDVDのパッケージには1916年作と印刷されているが、1919年の間違いである。)から上述の1936年のカラー版まで、各年の作品がほぼ均等に収録されている。とりあえず第1作と最後の「勇敢な王様」Bold King Coleを見た。カートゥーンの技術の向上が一目で分かり、ヴァン・ビューレンのレインボーパレードはつまらないなどと簡単に言ってはいけないのだなあと思うと同時に、フィリックスはやっぱり黒白だ、とも思うのである。

 かつて8ミリ・フィルム版で直輸入したFelix the Cat Dines and Pines(Canemakerの本でこの作品の図版が何枚も使われている)が、このDVDに収録されていないのが残念だ。このDVDを見て面白い作品が無いじゃないかと思った人がいるなら、Felix the Cat Dines and Pinesが入ってないからだよ、と私は言いたい。

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2009/09/13

洋書の秋

The Colored Cartoon BLACK REPRESENTATION IN AMERICAN ANIMATED SHORT FILMS,1907-1954 Christopher P. Lehman(2007;University of Massachusetts Press)
Colored
 サブタイトルにあるように、カートゥーンにおいて黒人がどのように描かれてきたかについての研究書である。アマゾンで見つけて、図版がたくさんあるのを期待したのだが、表紙以外には一切無い。これでは「黒炭姫と七人の小人」Coal Black an de Sebben Dwarfsなどを見た記憶から、こんなに凄い表現があったと想像して本文を読むしかないって思ったら、本文が始まるページの前に、これこれこういうインターネットのサイトでこの本で取り上げている黒人キャラが見られるという読者への注釈があった。我々日本人には分かり難い黒人なまりの英語にも言及していて、「トムとジェリー」の足だけおばさんのセリフはテレビ放映では普通の英語に直されているそうだ。


UNFILTERED THE COMPLETE RALPH BAKSHI The Force Behind Fritz the Cat,Mighty Mouse,Cool World, and Heavy Traffic Jon M.Gibson & Chris McDonnell(2008;Universe Publishing)
Bakshi
ラルフ・バクシ本である。巻頭言をクエンティン・タランティーノが書いている。全てのページに図版がある264ページのハードカバーの立派な本である。円高のおかげもあって3500円ちょっとで手に入った、多少なりともバクシに興味があるならお買い得本である。タイトルが「フィルターをかけずに」ということだから、この本もバクシ特有の危ない表現の図版が多いのではと思ったが、子どもに見せられない、というものはほとんどない。サブタイトルに「クールワールド」の文字があるが、他の作品と比べると本文中ではほとんど触れられていないに等しい。これはちょっと残念。巻末のフィルモグラフィで、バクシのアニメーターとしてのデビューが「ハシモトさん」であることを初めて知った。最初からレイシズムに関係していたのね。


ESTONIAN ANIMATION BETWEEN GENIUS & UTTER ILLITERACY CHRIS ROBINSON(2006;John Libbey Publishing)
Estnia
 エストニアのアニメといったら、プリート・パルンである。日本で1番最初にパルンに注目したのは自分であるという自負がある。1987年2月22日に今は無きスタジオ200でソ連アニメの上映会で「つくり話」(英語タイトルはTime Out、1984年作。作者名はピャルンというロシア語発音による日本語表記で紹介されていた。日本発売DVDでのタイトルは「おとぎ話」)を見て気に入り、その年の10月のアニメ総会の自己紹介の、この1年間に見たアニメで1番気に入っているものに、「つくり話」と書いたのであった。このとき、森卓也氏は「闇のまぼろし」(ポヤール&ドルーアン)、おかだえみこ氏は「レオとフレッド-2人のコンサート」(パル・トート)、現在多摩美のK山先生は「怪盗ジゴマ・音楽篇」(和田誠)と答えている。参加者の多くが挙げていたのが「天空の城ラピュタ」であった。第2回の広島アニメフェスで特集上映があったドリエセンの作品を上げている人も何人かいた。アニメ総会に顔を出すような名うてのアニメーション・ファンの間で、パルンの名前が上がるのを聞くようになったのは、第3回の広島アニメフェスあたりから、「草上の朝食」が公開された後だったと記憶する。
 そんなわけで、パルンについてどのくらい書かれているかが、私のこの本への興味であったのだが、なんと、出会いの作品「つくり話」はフィルモグラフィに作品名があるだけで、本文中では触れられず図版すらない。「草上の朝食」が話題の中心になるのは当然だとしても、「つくり話」についての記述がないのは、個人的に悲しい。
 

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2009/09/05

別冊宝島「ファンタジー・アニメの世界」がすごい!

 コンビニに寄ったら、宝島社の「バッグス・バニーDVD-BOX」と「ファンタジー・アニメの世界」というタイトルのディズニーの「ピノキオ」「ピーターパン」「ふしぎの国のアリス」DVD3枚組付きの別冊宝島が出ていた。DVDに収録されているディズニー長編3作よりも、「別冊宝島」を名乗っているので冊子の部分(「みんな大好き!アメリカのクラシック・カートゥーン特集」と銘打たれている)があって、この記事の内容が、感心するほどマニアックなものがある反面、よく分かってない人間がネットで検索してコピペしてレポートを書くと起こりがちな、とんでもない勘違いをしてます記事とが同居しているのが面白くて、両方買ってしまった。カートゥーンについてのこれだけのトンデモ本は有馬哲夫の「ディズニーとライバルたち」以来だ。「トムとジェリー」がフライシャー兄弟の製作だと書いてあるかと思うと、最初はテックス・アヴェリーが製作を担当していて後にハンナ&バーベラに代わって大ヒットした、とも別の所(とはいっても直ぐそば)に書いてある。同じページの中に矛盾する記述があるのに、編集者の誰も気が付かなかったというのが、実に可笑しい。細かく読んでいけばもっと楽しいツッコミ所は見つかるだろう。

 「バッグス・バニーDVD-BOX」は、すでに「ルーニーチューンDVD-BOX」が出ているので、どちらかといえば、落ち穂拾い的な作品収録である。「バッグス・バニーとゆかいな仲間たち」が80年代の初めに静岡第一テレビで放映されたときにビデオに録画して、少ない資料を基に原題つきとめ作業をしていた時に、どちらなんだろうと迷ったゴリラやペンギンと共演する作品が2本づつ入っているのが、個人的に感慨深い。

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2009/08/28

夏の終わりに「サマーウォーズ」

 実は、今週が私の夏休みであった。旅行などに出かける経済的余裕はないし、C4は修理中で古いサニーの代車ではドライブにも行けず、映画三昧な休日を・・・と思っていたのだが、案外他の用事があって、なかなか思うようには行かない。

 昨日は「96時間」を見た。リュック・ベッソン製作で、パリが舞台なのでフランス車のカーチェイスがあるかと期待したら、主人公のリーアム・ニーソンが使う車はアウディのA3とA8でちょっとがっかり(同じリュック・ベッソン製作の「トランスポーター3」でもA8が使われている)。娘を取り返すためには本当に何でもしてしまうニーソンには、心情的にはわかるのだが、いくらアクション映画とはいえ、これはないだろうと思ってしまう。少なくとも見終わるまではご都合主義を感じさせない演出が少し足りないのである。

 その点においては、今日見てきた「サマーウォーズ」の方がずっと良い。クライマックスの花札対決では、その昔、「スターウォーズ」(現在では、「エピソードⅣ 新しい希望」とつけたされているもの)の、一度は去ったハン・ソロがミレミアム・ファルコンで戻ってきたぞ~!っと加勢するシーンで心が高鳴ったのと全く同じ気持ちに久しぶりになって、痛快だった。上田の旧家の豪邸を舞台にするシーンでは小津安二郎的アングルが使われていたもの面白かった。どうでもいいことではあるが、WB盾(ワーナー映画のトレードマーク)が出る国産アニメっていうのには、ちょっと違和感有り。

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2009/07/13

ドライビイング第3新東京市、または、ヤギのいないスカイライン

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 昨日の日曜日、久しぶりに家族で箱根へとドライブした。C4を買った年の夏に出かけて以来のドライブのように思う。まずは、箱根神社へ向かう。車の流れは家を出たときからスムーズで、のんびりドライブ。箱根公園のあたりでC6に行き会って、ちょっと驚く。箱根神社を参拝した後、仙石原へ。ススキの原を通っていく道は、箱根で一番好きな道のひとつだ。お台場にガンダムが立っているが、仙石原のススキの原にエヴァンゲリオン立つ、ってのも面白いんじゃない、と思う。エヴァのマップを作るくらいで終わってたら楽しくないよ。

 昼食をイタリアンのピアチェーレで食した後、せっかく仙石原に来たのだから何か観光施設に入ろうということで、湿生花園前の箱根武士の里美術館に入る。わが家族にとっては、値段の割りに内容が・・・な小さな美術館であった。戦国甲冑でコスプレさせてもらえるらしいので(写真が展示してあった)、そういう趣味の人にはいいのかも。その後、箱根3D宇宙恐竜ワールドがまだ存在していることを確認して、TVKの「新車情報」のロケによく使われていた箱根スカイランへと続く道に入る。そして、そのまんま箱根スカイラインから芦ノ湖スカイラインへ。両スカイラインでC4の乗り心地が実に良く感じられる、久しぶりの快感。

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 ところで、通称「ヤギさん」のレストハウスに寄ったら、なんと、そのヤギさんがどこにもいない。しばらく来なかったので、どうなったのだろうと思う。誰か、ヤギさんの行方を知ってる人はいますか?

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2009/07/11

四角いズボンの海綿男

 このところ我が家で話題のアニメは、「スポンジ・ボブ」である。キャラクター自体はかなり前から知っていたし、NHKのテレビでも大分前からやっていたわけだけれど、つい最近終わってしまった教育テレビでの放映でたまたま妻子が見てはまってしまい、ツタヤでDVDを借りてきて見ている毎日である。今まで、きちんと見ていなかったので、スポンジ・ボブの「スポンジ」には、台所用品のスポンジだけでなく、英語の元々の意味である「海綿」の意味もあるということを初めて知った。キャラ・デザインが自分の好みに合わなかったので、パスしてきたが、これまで見てこなかったことは不覚であった。

 娘が借りてきたDVDの中に、原始時代のスポンジ・ボブたち(正確には、スポンジ・ボブたちの祖先)の話があった。それは初めて火を使うようになった時のエピソードなのだが、途中からこれは「2001年宇宙の旅」の猿人のシーンみたいだなと思ったところで、音楽が「2001年宇宙の旅」になった! しかもリヒャルト・シュトラウスでなく、リゲティだ!(もちろん、両シュトラウスの音楽も続けて使われた。)

 当分我が家のスポンジ・ボム・ブームは続きそうだ。

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2009/07/09

ベティのDVD

 以前期待していたとおりに宝島社からベティ・ブープのDVDBOXが出た。同時発売は、ドルーピーDVDBOXという名のテックス・エイブリーMGM作品集! 

 ベティのDVDBOXで残念だったのは、邦題が劇場公開タイトル(筒井康隆の「ベティ・ブープ伝」巻末のリストを見よ)を無視したものになっていたこと。ルイ・アームストロングの出てくる「ベティの蛮地探検」が「わる者のお前が居なくなればすっきりする」(原題の直訳だ)では、ピンとこないよ。「ベティ博士とハイド」Betty Boop,M.D.や「ベティの笑へ笑へ」Ha!Ha!Ha!が入っていないのも残念だ。ベティのVOL.2を期待したい。黒白ポパイも出して欲しいな。

 ドルーピーの方は、狼と赤頭巾(「おかしな赤頭巾」「狼とシンデレラ」)や「月へ行った猫」「ウルトラ小鴨」「呪いの黒猫」「へんてこなオペラ」も入っていて、エイブリー傑作集である。こちらも第2弾を期待したいね。

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2009/06/15

恋のQピッド

 ニコラス・ツェーが主演しているので、妻が録画してくれといったものを、見た。驚いた。香港映画版「ロジャー・ラビット」であった。つまり、香港の人気漫画「老夫子」の3人のキャラクターが3DーCGで実写の人間たちと絡む映画だったのだ。漫画の原作者の王澤も特別出演している。刑事のニコラス・ツェーとその恋人の高校教師のセシリア・チェンが交通事故で記憶を失って巻き込まれる騒動に漫画のキャラクターが絡むのである、というか、そもそも、記憶を失う原因となった交通事故はこの漫画のキャラクターたちのせいである。ハーマン・ヤオ監督、2001年の作品である。香港映画界のCGのレベルの高さに感心した作品である。バカボンのパパとバカボン、そして、ピストルのお巡りさんが、実写にCG合成された映画を想像してみようよ。

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2009/06/14

ザ・スピリット

 テレビのCMを見て、サントムーンで上映中なのを見つけて、こんな日本で知られていないコミック・ブックの映画化は客が入らなくて、特に、地方都市では、すぐに上映が終わってしまうと、見に行った。その昔、「SFマガジン」の小野耕世の連載コラムで名前を知って、記憶の底に沈んでいたのが、スポットCMでふつふつと浮き上がってきたのである。そういえば、一時期定期購読していたアメリカのアニメとマンガの雑誌「FUNNY WORLD」にも記事が出ていたのを読んだっけ。

 黒白のコミックブックを意識した、色彩を抑えた画面作りが、これもまた日本では特に受けなかった「ディック・トレーシー」(「プリティ・ウーマン」が併映だったはずが、瞬く間に「プリティ・ウーマン」の併映になってしまった)を思い出させる。ザ・スピリットのネクタイと血の赤だけが、強調された画面。次から次へと登場する魅力的な女性達。
「ルパン3世」の最初のシリーズを初めて見たときの記憶もよみがえる(ちょうど、小野耕世の連載を喜んで読んでいた時期と一致する)。

 フォボスと呼ばれるクローン人間のコメデイ・リリーフが登場し、ゾンビ映画やらなにやらのパロディも色々登場し、笑えるシーンもかなりある。プラスター・オブ・パリスというベリー・ダンサーが登場するシーンは、「ツイン・ピークス」の赤い部屋の小人の踊りを連想させたし。フランク・ミラー監督作品はこれが初めてだが、「シン・シティ」を見落としてしまったのは不覚だったかも。

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