クリストファー・ノーラン監督「インターステラー」を見た。SFファンの複数の知人が褒めていたので期待した。期待を裏切らないできではあるが、「ゼロ・グラビティ」や「ミスター・ノーボディ」を見たときのようなカタルシスは感じなかった。相対論的効果によって子供の方が年をとってしまうというのをきちんと映像化した作品は今までなかった、という意味で画期的ではある。
テレビに良く出る早稲田の大槻教授がどこからともなく新粒子が出現してしまう幽霊みたいなものを許す理論は正しいとは思えないと評した、ランドールらが主張する重力しか伝わらない余剰次元(空間第5次元)理論を元にしたストーリーなので、大槻先生が言うようなポルタガイスト現象があって面白い。重力を利用すればコミュニケーションできる、というのは、かのキップ・ソーン博士(その名前がときどきモノリス化するロボットに使われている)がかかわっているからか。
懐かしいジョン・リスゴーやマイケル・ケインが出ているのが良かった。特に、ジョン・ファウルズの「魔術師」の映画化「怪奇と幻想の島」で、博士を名乗る人物に翻弄され何が本当かわからなくなり困惑する主人公を演じたケインが、老物理学者役で逆に主人公を翻弄する側に回っているのが面白かった。「愛と嘘」という観点から見れば、「魔術師」の宇宙版であって、ハードSF的なものは体裁だけと言える(これが実は残念なのだ)。日本では話題になったことがない「怪奇と幻想の島」が急にDVD発売されたのは「インターステラー」のためだったのかな。
これはあの有名なSF映画、これはあのSF小説だな、と思えるシーンが続出だけれど、再び宇宙に飛び立っていく主人公には、レムの「星からの帰還」の主人公を連想した。
地球の環境悪化を初めの方でかなり執拗に描いていて、そのシーン中に、ドキュメンタリー・タッチの老人たちの話がところどころで挟まり、ちょっとした違和感とともに、宇宙へ出ることを納得させるアリティを感じた。このちょっとした「違和感」は、最後の方でそういう仕掛けだったのか、と解消するのがノーラン監督流。
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