黄金期のカートゥーンの再現はどう生かすのか?
その昔「サボテンジャック」(ハル・ニーダム監督1979年)というカーク・ダグラス主演の西部劇コメディがカートゥーンのギャグを実写でやっているということで見たことがあった。ダグラスが自己パロディを演じていることが見てとれるのだけど、それが何という作品なのかわからなかった。つい最近、CSのムービー・プラスで「戦う幌馬車」(バート・ケネディ監督1967年)を見たら、なんとこれが元ネタだった。長年の疑問が忘れた頃に解決した。「サボテンジャック」を再見して確認したくなった。ダグラスと愛馬の関係がまるでブラック魔王とケンケンだったのと、ロードランナーとコヨーテのギャグの再現が痛々しかった記憶がある。「戦う幌馬車」はジョン・ウェインとダグラスの掛け合いが面白く、今まで知らなかったのは不覚であった。また、ハル・ニーダムも出ていた。
このところ、カートゥーン・ネットワークでやっている「グリジーとレミングス」にはまっている。前から気にはなっていたけれど、一度きちんと見たら、これが面白い。見たのは第3シーズンのワールド・ツアーと副題がつくもの(2020年作)だったが、そのうちに第1シーズンと第2シーズンを合わせて52回(2016~2018年作)が放送されてすべて見てしまった。30分番組で独立した短篇3話からなり、3DCGで黄金期の劇場用短篇カートゥーンの面白さを現代の発想と技術で追求しているのがいい。
「ルーニー・チューン」や「トムとジェリー」の最近作られているものはかつての作品の再現の方に気をとられすぎている感じで、物足りなさを感じていたが、この作品もかつてのカートゥーンのギャグを同じようにいくつも再現しているが、それだけにとどまらず、3DCGという技法と1匹のクマに対する多数のレミングという設定により新しい味を醸し出している。セリフがまったくないものいい。
各話は基本的なパターンにそって作られている。それは、前半の「トムとジェリー」のような、カナダの森林警備隊のロッジ内でのクマとレミング集団の戦いが、後半エキサイトして「ロードランナーとコヨーテ」のような、曲がりくねった山岳道路上での追いかけっこから崖に落下、というものである。このパターンの中で、かのACMEを思わせるZENITHALという会社のハイテク製品が超自然的理由で暴走するのが楽しくて好ましい。
3話で52回、計156本も同レベルの内容のものを作ったというのが凄い。テレビシリーズでこのレベルものを作ってしまうフランスのアニメ界はあなどれない、と思う。
GRIZZY & THE LEMMINGS
A HARI PRODUCUTION
created & produced by Antonine Rodelet & Josselin Charider
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