チタンを孵化するアンネはいずこに? または、眠れる映画眠れない映画
4月下旬に地元の映画館でアリ・フォルマン監督「アンネ・フランクと旅する日記」が上映されることがわかり、今年度から金曜日も仕事がない日になったので、初日の初回に見に行った。こういう海外アニメ作品はせっかく地元で上映されても見に来る人が少ないのが通例だからと予想していたよりも人が入っていて、良いことだとまず思う。映画が始まると、英語のセリフがそんなに難しくなくて字幕よりもこのセリフの方がよく頭に入ってくる。このセリフ、テンポが心地良く眠気に誘われていく。これではいかんと眠気と闘うが、結局負けてしまう。一番寝てしまっていたのは、日記の化身の少女が博物館から逃げ出すあたりの大事なシーン付近である。後半は眠気も去って見てられたのだが、これはもう一度見なければいかんと、上映最終日の最終回に見に行った。今度はきちっと前半を見ることができたが、これで見逃したシーンが見れたぞ、と思ったあたりで再び眠気に軽く誘われる。どうもこのアニメは自分には催眠効果がある、心地良いリズムを持っているようだ。ラストシーンは、はからずもウクライナへの支援メッセージになっている。
この2回の「アンネ・フランクと旅する日記」鑑賞の間に、マイク・ミルズ監督「カモン、カモン」、ジュリア・デュクルノー監督「TITANE/チタン」、そして、本日、ハンナ・ベルイホルム監督「ハッチング‐孵化-」の、これも、よくぞ地元の映画館が上映してくれたと思う3本を見に行った。これら3本、特に、女性監督による、ジャンル的にはホラー映画に分類されるであろう後2本は、いわば、眠らせてもらえなかった映画だった。この2本、途中で、こういう表現が続くならもう見ていられない、と思った。ことに「TITANE/チタン」では、これ以上の嫌悪感が生じたら席を立とうと思った位である。でも、どちらもそれを乗り越え、ラストシーンを迎えると、やっと終わってくれるありがたい、という感情とともに、この後どうなるんだ、もっと悲惨なことになるかも、もっと皮膚感覚的に怖いことを想像させて、万人には勧められないけれど、ちょっと不思議な刺激的な映画を見たい人には勧めたいと思う。ただ、今年見た映画のベスト10に入れるかどうかは、この2本とも保留である。居眠りすらさせてくれない駄作、という紙一重の評価もまた存在しているのである。この3作とも主役の、少年(ウディ・ノーマン)・女性(アガト・ルセル)・少女(シーリ・ソラリンナ)の演技が凄い。それを引き出した監督がそれ以上に凄いということであろう。
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