シン東宝
日本映画専門チャンネルで新東宝の天地茂出演映画の特集(3本立て)をやっていたので見てみた。その中では、新東宝の最後の作品でスタッフ、出演者がノーギャラで撮ったという「恋愛ズバリ講座」(1961年)が一番面白かった。第1話「吝嗇」三輪彰監督、第2話「弱気」石川義寛監督、第3話「好色」石井輝男監督の3話からなるオムニバス作品。ドケチな男とガメツイ女が抑揚のない早口でやりあうのが面白い第1話、幼稚園の先生のあっと驚く大変身の第3話、それらに比べるとちょっとインパクトに欠ける田舎の村の原発誘致騒動の第2話なのだが、私にはこの第2話が実は気になった。それは、三島の農兵節(ノーエ節)が歌われ、架空の田舎の村の村人が話している方言が静岡県東部の方言だったからである。新東宝には三島出身のスタッフがいたのか? 一緒に放送された「憲兵と幽霊」(中川信夫監督1958年)でも冒頭の中山昭二と久保菜穂子の結婚式で農兵節が歌われていたし。
それで、調べてみたら、新東宝の設立に関わり、取締役を勤めたこともある渡辺邦男監督が三島出身だったのである。第1話の天地茂演じるケチな社長は新東宝社長の大蔵貢を思わせるので、第2話の田舎の村長は渡辺邦男なるんだろうか。新東宝関係者にはよくわかる裏の意味がある話になっているのかな。池内淳子演じる村長の娘が新東宝を表していて、東京から村長の娘と結婚したくてやってくる眼鏡の気弱な男(演じるはなんと菅原文太!)が、やっぱり、大蔵貢なのか?
最後の第3話は、誰かへの当てこすりというより、開き直ったスタッフによる、さらばすべての新東宝映画、という感じの三原葉子の怪演だな。
音楽が渡辺宙明(3本目の「怒号する巨弾」も)だったのも収穫。「忍者部隊月光」以前の作品を初めて知った。
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