熱海に行くなら、怪獣映画祭
COVID-19のために昨年11月から延期になっていた第3回熱海怪獣映画祭に、13日(土)、行ってきた。当日は、風雨がひどくなるという天気予報だったが、出かけるときにはまだ雨がほとんど降っておらず、帰るときには予報通り晴れて、熱海駅~会場の移動時に大変な思いをすることなくすんだのが、まずよかった。12時30分からの「怪獣の日」「装甲巨人ガンボット」と15時からの「全国自主怪獣映画選手権熱海傑作選2021」を見る、ということで、昼食を余裕をもって食べられるようにと11時過ぎには熱海駅に着いた。で、今まで気になっていて一度も入ったことがなかった喫茶店ボンネットに行こうと店の前まで来たら「本日休業」。一都三県の警戒宣言は延長になった割に観光客がいるなあと思いつつ、結局は前回も食べた洋食の宝亭に行き昼食。上映時間にはまだ間があるので、食後のコーヒーを喫茶店でと、路地を歩いて行ってジャズ喫茶ゆしまという店を見つけ入る。こんなところにジャズ喫茶があるんだと扉を開けた。JBLのスピーカーから自分の家ではなかなか聞けない音量で、ジャズが流れている。しばらく聞いていると、ビル・エバンスのライブの録音のようだということがわかる。この店を見つけたことは、自分にとって、怪獣映画祭に出かけたことによる予想外の収穫。
「怪獣の日」
東日本大震災(原発事故を含む)からの直接の影響を感じて「シン・ゴジラ」を見てそうなったのかなと思ったら、「シン・ゴジラ」より前に作られたということでちょっと驚いた。上映後に登壇した中川監督への質問の最後に、会場に来ていた樋口真嗣監督から、「シン・ゴジラ」との時系列をきちんと主張した方がいいよという趣旨の発言が出たのが、良かった。
怪獣の死体と思われるものが漂着した静岡県の浜江町の対応を描いた作品(ロケ地の海岸は伊豆っぽいけどどこだろうと思い、主人公の運転するスズキ・スイフトのナンバーは沼津ナンバーのように見えた)。怪獣は基本「死体」なので海岸に横たわっているだけで、この処理をどうするかということなのだけれど、海洋巨大生物の若手研究者が死んでる確証はないとして、生きている確証がないから死体として処理しようとする行政の意を汲んだ主任教授と対立するという展開。若い監督の作品なので、脚本のつめが少し甘いかなと思うけれど、「シン・ゴジラ」の先取りとして面白いと思う。
「装甲巨人ガンボット」
川北紘一監督(本編の演出は大森一樹)が大阪芸大で撮った遺作。宇宙からやってきた巨大ロボ、デスレッドが大阪を襲い、急遽災害救助用ロボを改造したガンボットで対抗するという話。冒頭のシーンで、空を横切る正体不明の飛行物体に対して「あれはなんだ」と叫ぶ人物のアップで、同じセリフを繰り返していた我らが「源氏戦隊ゲンジマン」を思い出し、一人笑いしてしまった。このセリフは、かつての怪獣映画の定番セリフなんで、そういうことを意識してのシーン(その後も何箇所かで同じようなセリフが入る)だと思うが、まさか「源氏戦隊ゲンジマン」を知っていてやっていないよね(その昔、アニメ総会解散後に、当時大芸大の学生であった今ではとっても有名になってしまった人を含む関西のアニメ特撮ファンに囲まれ、「ゲンジマン」面白かったですよ、あれやってくださいとリクエストされてK氏が「あれはなんだ~」と空を指さして叫んだ、というできごとを私は覚えている)。
デスレッドをあやつる宇宙人に殲滅させられた宇宙人が発した警告(対抗手段も含む)を親子孫三代かけてやっと解読したと思ったら、デスレッドがやってきてしまった、という設定が面白い。この作品、いくらでも続編ができそうなんだけど作られていないのかな。
「全国自主怪獣映画選手権熱海傑作選2021」
上映作品は、「県立武蔵野魔法高校にんきもの部ドラゴン狩り物語」「新モモトラマン2019」「惨殺巨獣バリギュラー」「リトル」「UNFIX 2021春の特別総集編」の5作品。最後の田口監督の作品は、町内会の会合があって6時までには家に帰らねばならなかったので、2/3くらい見たところでタイムアップ、やむを得ず会場を後にした。
この中で特に面白かったのは最初の2つ。どちらもすごい特撮はしてないけれど笑える話になっていて、実際、会場全体が笑いの渦につつまれました。「県立武蔵野魔法高校にんきもの部ドラゴン狩り物語」は「ハリーポッター」のパロディで30分近い時間飽きさせない展開。「新モモトラマン2019」は、前回見た中で一番面白く感じた、一人で自宅で撮影している作品の田中守監督(田中安全プロレス)の新作で、5分という短さ(自分たちが8ミリフィルムで自主制作をしていた頃は5分という長さは普通で、10分を超えてくると長編だなあ、という感じであった)の中に、特撮映画をどうしても作ってみたかったんだよ~、という思いが凝縮されている。
「惨殺巨獣バリギュラー」は「ウルトラマン」のギャンゴの話に似ている作品。爆笑2作品のあとではちょっと可哀そうに思う、なかなかのでき。特撮シーンよりも川の中で殴り合いをしているシーンの方に、よく撮った、と感心してしまう。「リトル」は日大芸術学部映画学科の学生の卒業制作。女子大生が小犬くらいの怪獣を見つけて育てていくが・・・という作品。指導教官の手塚昌明監督が怪獣を研究している大学教授ということで出演(声だけだけど)。これもきちんと作られていて好感が持てる。女性を主人公にした作品であるのがいい。
前回より観客が多かった(ほぼ満席)ので、前回の話が伝わって見に来る人が増えたのかな。そうであるなら、とても良いことだ。自主制作を見せあい、作者同士、あるいは、作者と観客が交流する場がある、というのは次世代のクリエイターを生み出す場として大事だと思う。そういう意味でも、この企画がある熱海怪獣映画祭が末永く継続していってほしいなあ。
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