CARTOON ROOTS OTTO MESSMER'S FELINE FOLLIES
カートゥーンの貴重な初期作品のブルーレイ・シリーズであるCARTOON ROOTSの最新盤が出た。ネコのフィリックス(フェリックス)のマーガレット・ウインクラー配給、パット・サリバン制作というクレジットで公開されたオリジナルシリーズ中心のものだが、実際にはオットー・メスマーが作っていたということで、フィリックスの第一作のタイトルにOTTO MESSMER'Sを付けたものがこのブルーレイのタイトルになっている。
まず最初に、フィリックス以前の作品が3作(内2作はチャーリー・チャプリンのアニメ化作品)があり、残り12作がフィリックス、それも初期作品である。見始めて、なんかこれは別なDVDで見た気がする、という作品がいくつかあり、昨年急にオリジナルのフィリックスを見たくなって買った'THE ORIGINAL FELIX THE CAT'(Reelclassicdvd.com)かなと思ったが1本(下記の収録作品リストの8)しか重なっていない。あれっと思って思い出したのが、2009年に宝島社からでた「フィリックスDVDBOX」。調べたら6本重なっている。収録作品リストに示した邦題はこのDVDBOXのものである。フィルム状態や画質は、当たり前であるが修復されているこのブルーレイの方が格段に良い。さらに、思い出したのが、雑多なアニメをたくさん収録したDVD、'Giant 600 Cartoon Collection'。これにもフィリックスが入っていて見たはずなのであったが、調べてみたら、ブルーレイとの重なりはこちらもたった1本(リストの9)だった。
8 FELIX MINDS THE KIDあたりから最後のオチに向けてきちんと構成されて作られるようになり、面白い。4~7はシーンごとの関連性は少なく、最初の方のシーンで出てきたあれはなんだったのだ、みたいな感じで最後のオチも今一つパンチに欠ける。アニメーションの表現については、画面の手前に書かれたフィリックスが背景に描かれた地平線に向かって投げつけられて黒い点になって飛んでいく、というパースのついた動きが多くの作品に見られ、ウインザー・マッケイの「恐竜ガーティ」の同様のシーンに影響を受けている、というか、それと同じことをしてみたい、というメスマーのアニメーターとしての志向が感じられる。
9,14,15がこのディスクにおけるベスト3である。9はネズミがネコに宣戦布告して戦争となるが、この戦闘シーンがすごい。14はネコの大群およびネズミの大群のシーンに目を引かれ、話(人間のネコの扱いがひどいので町中のネコがストライキを起こし、ネズミを取らなくなり、人間が困る)もオチも面白い。15は冒頭でサックスを吹くフィリックスがいい。中盤の自動車が疾走するシーンで背景の方を動かしている作画に、おおお、となる。
John Canemakerの'Felix THE TWISTED TALE OF THE WORLD'S MOST FAMOUS CAT'(1991;PANTHEON BOOKS)の巻末リストで、上に書いた自分の所有するディスクに入っている作品を確認してみた。配給がEducatinal Filmsに1925年に替わってから1927年半ばくらいまでに未収録作品がたくさんある。いくつか見ることができた26~27年の作品(代表するものとして、Dines and Pines;1927)がフィリックス・シリーズの絶頂期の作品群に思えるので、この年代の作品が今後ブルーレイ化されることを期待したい。
収録作品リスト
1 CHESTNUTS c.1916
2 CHARLEY AT THE BEACH 1919
3 CHARLEY AT THE CIRCUS 1919
4 FELINE FOLLIES 1919「フィリックスの恋人」
5 FELIX MAKES GOOD 1922
6 FELIX IN LOVE 1922
7 FELIX WAKES UP 1922
8 FELIX MINDS THE KID 1922「フィリックスの子守」
9 FELIX TURNS THE TIDE 1922「フィリックス戦場へ」
10 FELIX LENDS A HAND 1922「とらわれの美女を助けろ」
11 FELIX FIFTY-FIFTY 1922
12 FELIX WINDS OUT 1923「サーカス団で大暴れ」
13 FELIX TRIES FOR TREASURE 1923
14 FELIX REVOLTS 1923「ネコたちの逆襲」
15 FELIX STRIKES IT RICH 1923
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