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2020/12/28

2020年CS映画の度々

 COVID-19のために映画館が営業を停止し週に一度は劇場に足を運んでいた自分にとってはちょっと寂しい状態になった。それが決定的な理由になって、スカパーに加入していながらそれまではあまり見ていなかった映画専門チャンネル(FOXムービー、シネフィルWOWOW(現WOWOWプラス)、ザ・シネマ、ムービー・プラス、日本映画専門チャンネル)で放映されている映画を積極的に録画して見るようになった。今日までに見た映画の数を数えてみたら150本を超えていた。今年劇場に見に行った映画より面白い映画にいくつも出会った。ということで、そのことについて書き残そう。

 さて始まりは、タイのウィーラセタクン監督の「ブンミおじさんの森」。これは日本公開時に話題になっていて地元の映画館にかかったら見に行きたいと思っていた作品であったが、残念ながら上映されなくて悔しい思いをした作品だった。同じ監督の「光りの墓」「光の世紀」もその後放送されたので見た。タイは初めて行った外国で、その時にこれら映画の舞台になっているイサーン地方(東北地方)にも行っている(もっとも、行ったのはウボンラチャタニで、映画の舞台となっているコンケーンではなかったが)。もう一度タイへ行ってみたいという気持ちもあって、滞在した日々を懐かしく思いながら見たのでありました。同じタイ映画ということでは、よりハリウッド映画的な「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」も面白かった。

 こんな風に語っていたらいつまでたっても終わらないので、これがベスト1という映画は、トーマス・アルフレッドソン監督「ぼくのエリ 200歳の少女」である。録画して見た後は基本すぐに消去しているが、この映画だけはすぐに消すのが惜しくて残した。150本のうちそうしたのはこれだけ。「インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア」に出てきた少女吸血鬼が現代にも生きていたらというような話だが、いじめられっ子の少年がこの少女と仲良くなってある決意をするのが「小さな恋のメロディ」を連想させる。「押井守の映画50年50本」で2008年の映画に選ばれていることからわかるように、映像的にも凝ったところがあるスウェーデン映画である。因みに「押井守の映画50年50本」にあるものでは、他に「ゼロ・ダーク・サーティ」も見た。

 同様なホラー映画系列では、「魔界探偵ゴーゴリ 暗黒騎士と生贄の美女たち」「魔界探偵ゴーゴリⅡ魔女の呪いと妖怪ヴィーの召還」「魔界探偵ゴーゴリⅢ蘇りし者たちとの最後の戦い」3部作も面白かった。ロシア版「ツインピークス」という趣で、どう収拾を付けるんだという次から次への新しい謎めいた人物の登場の連続である。「ツインピークス」よりは収拾がついている。

 今年は、レイ・ハリーハウゼン、エリック・ロメール、三船敏郎生誕百年ということでこれを記念した放送があった。三船敏郎では、谷口千吉監督の「嵐の中の男」という姿三四郎みたいな映画が、「モスラ対ゴジラ」と同じくわが地元の静浦の海岸でロケしていたのに驚いた。下田という設定なんだけれど、海越しの富士山という下田からではありえないシーンがあり、牛臥山も愛鷹山もちゃんとわかる。ハリーハウゼンは、シンドバッド3部作と「アルゴ探検隊の大冒険」「恐竜百万年」を見たが、ヒロインは「黄金の航海」がいいなと思う。ロメールは、作品によって主人公の使う車がルノーであったりプジョーであったりするのに目が行く。シトロエンはやっぱり2CV。作品によって特徴的に使われる色があるのがフランス的だな、と思ってしまう。

 ザ・シネマでは、「町山智浩のVIDEO SHOP UFO」という番組があって、かなりマニアックな古い映画を映画評論家の町山智浩の解説付きで放送している。この枠で、オーソン・ウエルズの「審判」を見ることができた。アレクサンドル・アレクセイエフのピンスクリーンによる画像が使われているのに驚いた。静止画でアニメーションではなかったのが、残念だなあと感じはしたが、それ以上に残念だったのが、町山解説に、このピンスクリーンのことが一切触れられていなかったこと。この作品がベスト2である。

 映画館の営業が再開されての目玉作は「TENET」であったが、同じノーラン監督の「メメント」が同時期に放送されて見た。こっちの方がずっと良いと思ってしまう。B級SFのバカバカしい作品も見たくなって、これってそういう感じじゃないと思って見たリック・ジェイコブソン監督「ビッチ・スラップ 危険な天使たち」がまるっきり「メメント」と同じ作りになっていて、そのことにびっくり。期待したグラマー美女のエロ・アクションはそれほどでもなかったので、それについては拍子抜け(エロティズムの物足りない分はジュスト・ジャカン監督「ゴールド・パピヨン」で、アクションについては中国の西遊記物数作で補充)。ヨーヨーを使うスケバン風日本娘が出てくるのが実に怪しい。調べてみたらこの役を演じているミナエ・ノジーは、ライカの人形アニメの傑作「クボ 二本弦の秘密」に声優として出ていた。どの役だったんだろう?

 アニメでは「マインドゲーム」と「パプリカ」が見れて満足。

 イップマン3部作を見て劇場に「イップマン完結」を見に行き、やっぱり、イップマンは第1作「序章」が1番いいと思う。

 アンドリュー・ニコルの「ザ・ホスト 美しき侵略者」は劇場で見たかった。地元の映画館でやっているのがわかっていたのに結局行かずじまいだった「スイミング・プール」「最強のふたり」も劇場で見ておくべきだったと後悔。

(追記) 「ぼくのエリ 200歳の少女」と似たような設定のものを他にも見ていた。ゾンビの少女が盲目の少年と出会うことで奇跡が起きる「アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年」、白血病の少年と吸血鬼の少女が恋に落ちる「ビザンチウム」。どれも切ない恋物語だが、少年少女の年齢設定が一番若い「ぼくのエリ 200歳の少女」がもっとも心に残ったのである。みんな、女の子の方が不老不死の存在で男の子の方に生きていく上でのハンデがある。なんか心理学的な分析をしてみたくなる設定。

  ヨーロッパのホラーともSFともファンタジーともいえる映画で他にも書き残しておきたいものがある。「キャリー」の21世紀版みたいな「テルマ」、政治的なものがテーマかと思ったらそうではなかった「ジュピターズ・ムーン」、大人のための人魚姫の物語ととりあえずまとめられる「ゆれる人魚」、中国のような一人っ子政策の世界で7つ子(!)が生きのびる「セブンシスターズ」。

 「スイミング・プール」と同様にラスト・シーンでディックのSFのような現実崩壊感がある「鑑定士と顔のない依頼人」と「パフューム ある人殺しの物語」もここに追記しておきたい。

 

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