金は貯まらず洋書は溜まる
この一年間に買い込んで、本当は斜め読みくらいはしてからその内容を書きたかったカートゥーンの研究書について、とりあえず、こういう本だという覚書。
WALT DISNEY'S ULTIMATE INVENTOR The Genius of Ub Iweraks,DON IWERKS;Disney EDITIONS 2019
昨年末に出た、アブ・アイワークスの息子ドン・ワークスが自分の父がした仕事について記した、貴重な写真や図版満載の大型本。ディズニー・プロに戻ってきて、特殊効果やそれを実現するための技術開発に従事していた時のことが特に詳しく書かれている。これは、著者である息子のドンが、父が責任者であったディズニー・スタジオの機械工房で働いていたためでもあるのだろう。エンジニアとしてのアブについてもよくわかる本なのである。アニメーション、あるいはより広く、映画製作にとって現代でも大事な技術を開発したということでは、アブはマックス・フライシャーと双璧だろう。
The Life annd Times of WARD KIMBALL Maverick of Disney Animation,Todd James Pierce;University Press of Mississippi 2019
ほぼ一年前に出た本である。カリフォルニア工科州立大の教授が書き、大学の出版局から出た本で、ブックカバーの表紙にしか図版(「3人の騎士」のパンチートを作画中のキンボールの写真)がない。キンボールについての総合的な伝記であるので読む価値はあるのだが、本を手に取ってページを開いた瞬間、字ばかりなので読む気が萎えた。ディズニー・プロはこのような学術出版にも高い版権使用料を請求するのだろうか? 目次を見ると、古い機関車の保存の趣味やジャズ・バンド、ファイアハウス・ファイヴ・プラス・ツーについての章もあり、貴重な情報に満ちていそうだ。
TERRYTOONS The Story of Paul Terry and His Classic Cartoon Factory,W.Gerald Hamonic;John Libbey Publishing Ltd 2018
ポール・テリーとそのスタジオについての本である。この本の著者も大学教授。ロンドンにあるブルネル大学の教授なので、この本はイギリスで出版されている。アメリカ人が書かないなら自分が書いてやる、みたいな本である。付録として、テリートゥーンの重要人物リスト(「ハシモトさん」のロバート・クワハラも載っていて、その作品を見て米国生まれの日系二世だろうと思っていたのだが、そうではなくて、日本生まれで9歳の時に家族とともに移住した、と書かれていて驚いた)、劇場用短編のフィルモグラフィ、テレビ作品のリストがあり、テリートゥーンについて調べたいなら、まず、これを読め、といえる体裁の本だ。普通の単行本サイズの本なのに、横書きの3段組みという特殊な形。カラー図版もたくさんある。
THINK PINK The DePatie-Freleng Story,Mark Arnold;BearManor 2016
この本の著者はコミックスやTVアニメについての著作があり、「タキシード・ペンギン」や「アンダードッグ」などが収録されたDVDのコメンタリーをしている。タイトル通り「ピンクパンサー」のディパティエ・フリーレング・プロについての本。図版は多数あるがすべてモノクロで質があまり良くないものもあるのがちょっと残念。この本も巻末にエピソード・リストと初放映日、ディパティエ・フリーレング・プロ関係者の簡単な人名辞典が付いている。ピンクパンサーについては、ディパティエ・フリーレング・プロ以外のプロダクションの作品についてもリストにある。「かわいい魔女ジニー」のオープニング・タイトルのアニメはディパティエ・フリーレング・プロだったということ、「スターウォーズ」(エピソード4)に特殊効果で参加している(かなり前にエンドタイトルでこのことを見つけて、どこを担当したのだろうと思った記憶がある)のもこのリストで分かる。
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