ポパイ・ザ・フェーマス版
黒白時代のポパイに引き続き、フェーマス・プロのカラー化されたポパイのBD 'POPEYE THE SAILOR THE 1940s VOLUME1' が出たので、amazon.comで購入した。黒白時代のヴァイタリティに満ち溢れるスリリングな面白さには欠けるが、James(Jim) Tyerがアニメーターで参加した作品にはスピード感を出す表現の面白さがある。また、MGMのアヴェリーの影響(というよりそのまんまコピー)と過去の作品の面白さを再現しようとした努力の跡を確認できる楽しさ(?)もある。イサドア・スパーバー(クレジットタイトルの表記はI.Sparber)とシーモア・ネイテルSeymour Kneitelの1943~45年の監督作品14本が収録されている。フェーマスのカラーのポパイは、日本でも、かつての宝島社のDVD-BOXを始めとしてパブリック・ドメインの安売りDVDがいくつも出ているが、この年代の作品は見たことがない。
収録作品は以下の通り。
1.HER HONOR THE MARE(牝馬陛下) 1943 Direction:I.SPARBER
ポパイの4つ子の甥っ子が登場。オリーブもブルートも出てこず戦いはないので、ほうれん草の缶詰は出てこない。膠屋で原料にされそうになった駄馬を飼ってみると・・・というお話。ヒトラーの似顔絵が出てくるのが、製作された時代を反映している。1巻物のポパイで、最初のカラー作品。
2.THE MARRY-GO-ROUND(廻るプロポーズ) 1943 Direction:SEYMOOR KNEITEL
ポパイの水兵仲間として、メガネチビのショーティShorty(そのまんまの名前!)が登場する。オリーブにプロポーズするかどうか悩むポパイのお話。これも、ほうれん草が出てこない。
3.W'ERE ON OUR WAY TO RIO(リオデジャネイロ珍道中) 1944 Direction:I.SPARBER
ブルートとポパイがドナルド・ダックのようにラテン・アメリカへ向かうと、サンバを歌い踊るオリーブ・オイルに出会い、アヴェリーの狼さんになってしまう。そろそろ、面白くなってきたねえ。
4.THE ANVIL CHORUS GIRL(鍛冶屋の娘) 1944 Direction:I.SPARBER
フライシャーの黒白作品(Shoein' Housses 1934年)の焼き直しだが、いかにもポパイという作りで安心感がある。
5.SPINACH PACKIN'POPEYE(ほうれん草食べたポパイ) 1944 Direction:I.SPARBER
フライシャーの2巻物カラーの「船乗りシンドバッド」と「アリババと40人の盗賊」からのフッテージが使用される作品。ポパイが過去の栄光のアルバムをオリーブに見せるという設定であるが、さらにその外側に、血液銀行で献血をしている間にウトウトして、という枠がはまっている。1980年前後に東京12チャンネル(現・テレビ東京)の午後6時台の「マンガキッドボックス」「マンガの国」という枠で、フェーマスのポパイが放送されていた時に見た記憶がある。
6.PUPPET LOVE(人形の愛) 1944 Direction:SEYMOOR KNEITEL
オリーブとデートするポパイを操り人形を使って邪魔をし、あわよくばオリーブを自分のものとしようとするブルート。ネイテルらしい動きがないぞ。
7.PITCHIN'WOO AT THE ZOO(動物園で結婚しようよ~) 1944 Direction:I.SPARBER
オリーブと動物園でデートするポパイ。そこの飼育員のブルートがあの手この手でオリーブを横取りしようとする、いつものパターン。動物の動きが面白い。
8.MOVING A WEIGH(引越し大作戦) 1944 Directionのクレジットがない。AnimationとしてJIM TYER,BEN SOLOMON、StoryとしてCARL MEYERとだけ出る。
オリーブの引っ越しを手伝うポパイとショーティ。これも黒白時代の作品(「ポパイの引っ越し騒動」Let's Get Movin' 1936年)の焼き直しだが、ブルートが登場せずにショーティが足を引っ張るというところが目新しい。ショーティというキャラクターの登場はこの作品が最後だと、Fred M.Grandinettiの'POPEYE An Ilustrated History of E.C.Segar's Character in Print,Radio,Television and Film Appearances,1929-1993'には書かれている。
9.SHE-SICK SAILORS(女酔い水夫) 1945 Direction:SEYMOOR KNEITEL
「スーパーマン」のコミックブックに夢中なオリーブ。その気を引こうとしてスーパーマンの格好になるブルート。「スーパーマン」の音楽が使われている。
10.POP-PIE A LA MODE(ポ・パイ・ア・ラ・モード) 1945 Direction:I.SPARBER
太平洋の孤島には「土人」がいたよ、である。「土人」であるからTVでは放映できない作品である。この作品が入っているためか、このBDのパッケージの裏には、「大人のコレクター向けであり、子供の視聴には適さない」と注意書きされている。この「土人」のデザインはアヴェリーがMGM時代に作った作品に出てくるキャラクターに似ている。
11.TOPS IN THE BIG TOP(空中ブランコ) 1945 Direction:I.SPARBER
空中ブランコのコンビ、ポパイとオリーブ。サーカスの団長のブルートがオリーブに下心大有り。
12.SHAPE A HOY(筏だぞ~) 1945 Direction:I.SPARBER
女人禁制の島で仲良く暮らすポパイとブルート。そこに、筏に乗ってオリーブが漂着する。そして、いつものようにオリーブの取り合いが始まる。ポパイがほうれん草の缶詰を出す前に、フランク・シナトラの漂着で、アッと驚くエンディング。前述の本でFred M.Grandinettiは、この作品がフェーマス・プロのポパイのベストであると評している。確かに、TYERも参加しているこの作品は見るべき作品である。
13.FOR BETTER OR NURSE(看護されたい) 1945 Direction:I.SPARBER
看護婦のオリーブに近づきたいために入院しようとするポパイとブルート。1937年の「ポパイの入院騒動」Hospitalikyの完全に焼き直し。オチが違うけどね。
14.MESS PRODUCTION(大変生産) 1945 Direction:SEYMOOR KNEITEL
オリーブが夢遊病になる作品(「ポパイの夢遊病御難」A Dream Walking 1934年)の焼き直し。元の作品と同じネイテルが監督しているが、遠近感を強調した背景も手のかかる撮影技法も使われていないので、間一髪で救われる感が全くない。ちょっと残念。
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