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2018/12/30

預言者

 USAのアマゾンで買ったBD「KAHLIL GIBRAN'S THE PROPHET」(カリル・ジブランの預言者)を見た(見終わってからこの文を書き始めて、検索したら2016年にDVDで日本発売されていた!)。レバノン、カタールにカナダ、フランスが加わって製作された長編アニメーション。監督は「ライオン・キング」のロジャー・アラースだが、反体制と烙印を押された主人公の詩人の8つの詩の朗読シーンは、トム・ムーアやビル・プリンプトンその他のアニメーション作家たちが自分のスタイルで作っていて、これらのシーンは独立した短編アニメとして楽しむことができる(詳細は最後に記す)構成になっていて、おもしろい趣向である。タイトルにある通り、20世紀初めの詩人でレバノン系アメリカ人のジブランの本を基にして作られているが、原作が日本には紹介されているのかどうか、門外漢の私にはわからない。

 中東の地中海沿岸のある国(多分レバノン)で民衆に反政府的な態度を蔓延させるということで逮捕拘束された詩人で画家のムスタファが解放され母国に返される1日が、ムスタファの世話をしている女性の娘アルミトラを通して語られる。この母国への送還には条件が付いているというのが途中で明らかになり、民衆に慕われるムスタファの運命やいかに、というサスペンス仕立てあり、父親を亡くしてから一言もしゃべらなくなって非行を繰り返すアルミトラが一度は閉ざした心を再び開くようになる再生の物語でもある。この基本部分のアニメーションは実に映画的な演出であり、コントラストの強い絵作りで、アクション・シーンのカット割りはスピーディで心地良い。これに、いわゆるアート・アニメーション作品が8つ挟まるのである。これは、ムスタファの民衆への、特に、アルミトラへのメッセージである。音楽も良いのだが、特に注目すべきは、チェロの独奏曲で、これを演奏しているのはヨー・ヨー・マ!
 
 ということで、なんでこの作品が日本で見れなかったのだとこの文章を書き始めたのだが、最初に書いたように日本版のDVD「預言者」が2016年に出ていて今でも買えるのである。ということはレンタル店にもあると思われるので、見つけたらぜひ見てほしい作品である。「ライオン・キング」よりお勧めできる。

詩の朗読シーン(タイトルと監督)
・On Freedom  Michal Socha
人間型の鳥かご(檻)の中に閉じ込められている空を飛ぶ自由を奪われた鳥たち。
・On Children  Nina Paley
 影絵風に描かれた弓の女神。
・On Marriage Joann Sfar
ソフィア・ローレンとクラーク・ゲーブルに似た男女の結婚式のダンス。
・On Work Joan Grantz
ギーメッシュかペトロフか、という油絵アニメーション(CGで油絵風にしているだけかもしれないが)。内容は、「木を植えた男」みたいである。
・On Eating & Drinking Bill Plympton
色鉛筆で書きなぐられた、他とはだいぶ雰囲気の違うアニメーション。エンドタイトルでプリンプトン監督であることがわかり、納得。まさにプリンプトンである。
・On Love Tomm Moore
絵柄で「ブレンダンとケルズの秘密」みたいだなと思い、実にその通り、ムーア監督作品だった。
・On Good & Fvil Mohammed Saeed Harib
CGアニメ。川に沿って走る鹿、川の中を泳ぐ亀。カラーではあるが中国の墨絵アニメのような淡い表現。滝のところでぐぐっと立体化する。
・On Death Paul & Gaetan Byizzi
 青と黒の色鉛筆で描かれた原画をそのまま撮影したような作品。

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2018/12/24

90周年

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 ミッキーマウスが初公開より90年ということで、いろいろ記念のものが発売されている。話題的には1か月前にはしなければならないようなものだが、Amazon.comに頼んであった海の向こうでの記念出版である"WALT DISNEY'S MICKEY MOUSE THE ULTIMATE HISTORY"がクリスマスプレゼントのように昨日届いたので、今日になってしまったのである。

 写真の両端に同じデザインのミッキーマウスが見えているが、これが昨日届いた本で、左端のものが箱で、右端のものがその中に入ってた本である。間にある日本で出版された「ミッキーマウスヴィンテージ物語」(実業之日本社)と大きさを比べてほしい。巨大でかつ重い(5kg以上ありそう)。枕になる、という表現を超えている。さらに驚いたのが出版社で、このところディズニー関係の良い研究書を出しているDISNEY EDITIONSではなく、ドイツ・ケルンのTASCHENという出版社で、この出版社の代表と思われるBenedikt Taschenが監督・制作として最初の扉ページに大きく名前が出ている。

 中身は、今まで出版されてきたディズニー関係の本で見たことのある写真や図版も多いが、初期ミッキー作品のアブ・アイワークスによるアニメーションの原画(タップ穴が2つ!)に代表されるような、これは初めて見るぞ、という貴重な図版・写真にあふれている。文章もあるが、図版、写真の説明と言っていいくらい最小限。この文章は最近のディズニー研究書で名前をよく見るJ.B.Kaufmanと、写真に写っている「ミッキーマウスヴィンテージ物語」の編集・解説のDavid Gersteinが書いている。だから、DISNEY EDITIONSあたりで出なかったのはなぜだろうと思う。よく読んでみないとわからないが、ドイツにのみ残されていた資料というのもあるかもしれない。

 こんな大書と比べてしまうと貧弱に見えるが、「ミッキーマウスヴィンテージ物語」も判型は大きい本である。これは、Good Housekeepingという雑誌に連載されていたディズニーの短編映画の新作を見開きページで紹介したものを17作分再編集して収録したものである。これはこれで面白い。本の表紙に「復刻」と書かれている。持っていなかったということは、以前出たときには気付かなかった本だ。

 ドナルドの人形のところにあるのがBD「セレブレーション!ミッキーマウス」である。「蒸気船ウィリー」からミッキーの代表作が13作入っている。最新作の代表として「アナと雪の女王」に併映された「ミッキーのミニー救出大作戦」が入っているのが良くって買ったのである。この作品の続編的なたった5分のテレビアニメシリーズの「ミッキーマウス!」がディズニー・チャンネルで見れるんだけれど、このシリーズ、ディズニーというよりワーナー的な過激なギャグが満載で最近の我が家のお気に入り作品である。

 

 

 

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