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2018/09/30

危険な笑いミルハウザー

 スティーヴン・ミルハウザー「十三の物語」柴田元幸・訳(白水社)読了。オープニング漫画「猫と鼠」、消滅芸「イレーン・コールマンの失踪」「屋根裏部屋」「危険な笑い」「ある症状の履歴」、ありえない建築「ザ・ドーム」「ハラド四世の治世に」「もうひとつの町」「塔」、異端の歴史「ここ歴史部会で」「流行の変化」「映画の先駆者」「ウェストオレンジの魔術師」という4部13話構成。
 巻頭の「猫と鼠」は「トムとジェリー」を基にした小説で、それらしい変形ギャグや爆弾ギャグを刻銘に描写していて、これはあの話のシーンだね、とニヤリとしてしまう。途中から、ハンナ=バーベラ作品というより、チャック・ジョーンズ作品を思わせるようになり、ついにラストシーンは、「トムとジェリー」は作っていないテックス・アヴェリーになってしまう。
 「三つの小さな王国」所載の「J・フランンク・ペインの小さな王国」では漫画映画の創始者のひとりウィンザー・マッケイをモデルにしたミルハウザーは、アニメというか、動かない絵に命を吹き込むということにこだわってるように思える。「映画の先駆者」「ウェストオレンジの魔術師」の2作もその流れの作品だ。現実が夢のようであり、夢を現実化しようとした男たちのこだわりは悪夢のようである。
 「塔」はバベルの塔の話だけれども、テッド・チャンの「バビロンの塔」と比べて読むと面白そう。

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2018/09/16

ハロウィンがやってくる

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 4年位前にネット上で、ディズニーやワーナーの作品で声優としても有名なコメディアン、ビリー・ブレッチャーが主演(というか一人芝居)した、実写・アニメ合成特撮コメディ'THE FRESH LOBSTER'を見つけてこれは凄いと思った。それで、この作品が入っているDVDが欲しいと、探してみたら、"GROTESQUERIES"という怪異な短編映画を集めたものに入っていて、即買ったのであった。
 'THE FRESH LOBSTER'は期待にたがわない怪作だった。アレクセイエフの「禿山の一夜」なども入っていたので買って損はないものだったが、もともとのフィルムの状態も良くなく、それをそのままテレシネしているだけのような低画質であった。だから、もう少しまともな会社から画質の良いものが出たらいいのに、と思っていた。
 それが、 CARTOONS ON FILMというところから"CARTOON ROOTS HALLOWEEN HAUNTS"というタイトルのブルーレイで出たのである。これは買うしかないとかなり前に買ったのだが、先日、やっと見ることができた(いつものパターン)。

1 THE HAUNTED HOTEL 1907年 J.Stuart Blackton
 アニメーションの祖のひとりブラクトンの物体アニメである。「幽霊ホテル」としてアニメーションの歴史書に載っている作品。自動的にトランクなどの荷物が運ばれて行ってしまう、とういことだけならいいが・・・。

2 THE PUMPKIN RACE 1907年 Romeo Bosetti
 これも実写物体アニメを使ったコメディ。アニメーションのシーンは1よりずっと少ない。巨大なカボチャが馬車の荷台から転がって村中を転げまわる、というだけの作品。

3 OUJA BOARD 1920年 Dave Fleischer
 インク瓶小僧(道化師ココ)シリーズの一編。OUJA BOARDというのは、日本のコックリさんである。黒人の召使が勝手にこのボードを使ったために、とんでもないことが起こるという話。1,2のような物体アニメもある。一見の価値あり。

4 JUST SPOOKS 1925年 Walter Lantz
 フライシャー兄弟とともにブレイ・スタジオにいたランツの初期作品。作品の構造は、フライシャーのインク瓶小僧シリーズと同様。ランツが描いたキャラクターが画面から飛び出して・・・である。実写アニメ合成シーンもあり、この手法の本家フライシャーの3より面白く感じる。ディンキー・ドゥードルDinky Doodleシリーズ作品。

5 KO-KO SEES SPOOKS 1925年 Dave Fleischer
 再び、インク瓶小僧シリーズの作品。ココがお化けに出会うという話。

6 ALICE'S MYSTERIOUS MYSTERY! 1926年 Walt Disney
 ディズニーのアリス・コメディ。ミッキー・マウスに近いデザインのネズミが悪役で登場している。フェリックスみたいな猫とアリスがソーセージ工場の謎を解決する・・・?

7 SLICK SLEUTHS 1926年 Dick Huemer
本作の1930年のカラー・リメイク版が「マットとジェフの珍探偵」「小粋な探偵」という日本語タイトルで収録されているDVDが発売されている(いた?)。本国でもこちらのバージョンが有名だが、そのオリジナル黒白サイレント版。探偵のマットとジェフが幽霊を追いかける話。廊下の左右に並んだドアを出たり入ったりする典型的なギャグがある。

8 PETE'S HAUNTED HOUSE 1926年 Walter Lantz
 4と同様ランツのディンキー・ドゥードル・シリーズ作品。これも面白い。ブレイ・スタジオ時代のランツ作品は他のDVDでも見て面白いと思ったことがある。アニメ製作者としてスタートしたばかりなので、いろいろアイディアをぶち込んで作ろうとしていて、何が起こるかわからない楽しさがあるのである。

9 SURE-LOCKED HOMES「フェリックスのシャーロック・ホームズ」 1928年 Otto Messmer
 日本発売のDVDで見たことがあるので、オチが分かってしまうと怖さ半減という話である。典型的なデザインの中国人の洗濯屋が出てくる。当時、中国からの移民の多くの職業は洗濯屋だったという時代背景の反映。
 
10 THE FRESH LOBSTER 1920年代 出演Billy Blecher
 "GROTESQUERIES"の解説では、1928年作、後に音楽がつけられて1948年に再公開となっていたが、1928年作とは同定できないようで、1920年代作という表記に変わっていた。A Billy Bletcher Hilarity(ビリー・ブレッチャーの大騒ぎ)と副題がつけられた実写アニメ合成(ありとあらゆる特撮技術が使われている)のサイレント・コメディである。チャーリー・ボワーズの「イッツ・ア・バード」It's A Bird(1930年)と並ぶアニメーションと実写コメディを結合した注目作である。
 収録作は48年版で、プロデューサーMax AlexanderとHarvey Pergament、音楽Rex Dunn、撮影Harry Forbesのクレジットが出るが、監督やアニメーション担当の名前は出ないので、これだけの技術を盛り込んだのが誰か不明である。
 夜食に食べたロブスターが体内で暴れだし、体外に出て巨大化して、ビリーを襲うというお話である。

11 THE WITCH'S CAT 1929年 KODAK A Kinex Studios Production
これも制作者についてはよくわからない作品。人形アニメであるが、一部に粘土が使われていてメタモルフォーゼするシーンがある。立体のフェリックスという感じの黒猫が主人公である。

12 THE HAUNTED SHIP 1930年 John Foster & Mannie Davis
 ヴァン・ビューレン・スタジオのイソップ・シリーズの作品。このスタジオの特徴でもあるのだが、腕の立つアニメーターがやったシーンが時々現れて、このシーンの作画は凄いと感動してしまうのである。舞台はディビー・ジョーンズの幽霊船(パイレーツ・オブ・カリビアン!)である。

13 SKULLS AND SCULLS「フェリックスのボートレース」 1930年 Otto Messmer
 9より面白い。よく動く。頭蓋骨とボートの漕ぎ手を示す言葉の発音が同じことから発想しただけの作品だが、このダジャレに案外センスを感じたのである。

14 WOT A NIGHT 1931年 John Foster and George Stallings
 ヴァン・ビューレン・スタジオのトムとジェリー・シリーズの作品。ネコとネズミではなく、のっぽとちびの二人組の人間キャラクターが主人公である。アイワークス的な骸骨の踊りをやってみたかったのだな。これも時々、凄いと思うシーンがある。

15 BOLD KING COLE「勇敢な王様」 1936年 Burt Gillett
 ヴァン・ビューレン・スタジオのレインボー・パレード・シリーズのフェリックスである。なぜか、これだけカラー作品である。日本で売られているパブリック・ドメインDVDより画質はいい(キズの修復とか手をかけたようである)。


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2018/09/14

フライシャーの珍品・貴重品

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ThunderBeanから出たBD、'FLEISCHER RARITIES'をスナフのBDに続いて見た。これまでビデオ・ソフト化されていなかった珍しい初期作品(科学映画を含む)や石油会社テキサコ等の企業CF、さらには、パラマウントにスタジオを奪われてしまう形になったマックス・フライシャーがジャム・ハンディのスタジオに入って制作に参加した作品(どの部分をマックスが作ったんだという作品ではある)、フロリダのフライシャー・スタジオで仕事をしていたアニメーターが、スタジオ閉鎖後に作ったマイアミ紹介観光アニメなどなど。でもなぜか、よく見かけるベティ作品も入っている(エッセンシャル・コレクション全4巻に収録されてないものを、少しは知られている作品が混じていた方が良いということで、入れたような感じだ)。

1 ALL A BOARD FOR (A TRIP TO) THE MOON 1920年
 月世界旅行を当時の知見に基づいて映像化した科学映画。実写に図解のアニメが混じる。重力についての説明が詳しいが、一般相対論までは踏み込んでいない。月へ行くロケットのエンジンにはラジウムが使われている(原子力エンジン!)。クレーターや切り立った崖の表現が有名なSF画家チェスリー・ボーンステルを連想させる。
2 INKLING(#12) and SNIPSHOTS No.2 1925年
 これは当時舞台などで演じられていたと思われる、一種のだまし絵や切り絵の芸をそのまま映画にしたもののようだ。もちろんアニメーションになっている部分もある。
3 CHRISTMAS SEALS ADVERTISING FILM 1925年
 仕事して遊んで、健康のために8時間寝るというお話。フライシャーの元にいたディック・ヒューマーDick Huemerの作だが、フライシャーの会社(Inkwell Films)で作られたかどうかはよくわからないと解説にある。
4 KOKO SALUTES 1925年
 道化師ココの兵隊さんである。大砲や戦車といったメカの表現がフライシャーらしい。
5 MY OLD KENTUCKY HOME 1925/26年
 フライシャー初のサウンド作品。いわゆる「小唄漫画」、バウンシングボールといっしょに歌おうというものである。リフの部分では、ボールが弾むのではなく洗濯物を干して取り込む人間のアニメになる。この時点ですでにこうだったのか、とびっくりした。
6 KO-KO IT'S THE CAT'S 1926年
 実写の猫、人形(アニメ―トされる)とアニメの合成作。どうやって撮影したんだ、とびっくりした。猫好きカートゥンファンにはお勧めの一品である。
7 FINDING HIS VOICE 1929年
 映画に音をつける方法を説明した作品。
8 HURRY DOCTOR! 1931年
 テキサコの企業PRアニメ。初めの方で背景に看板がいくつか出てくるがテキサコだけがはっきりと読めるようになってるんで何なんだと思ったら、テキサコの宣伝だったとわかる作品。エンジンがかからなくて死にそうに苦しむ車って、ベティの作品にもそんなのがあった気がする。ミッキー・マウスみたいなネズミが出てくる。
9 LET'S SING WITH POPEYE 1933年
 ポパイのテーマをバウンシングボールの指示で歌おう、というアニメ。ポパイの第1作が公開されたのと同じ年に作られているということは、ポパイの人気が相当なものだったという証拠。
10 BETTY IN BLUNDERLAND 「不思議の国のベティ(ベティの鏡の国訪問)」 1933(1934?)年
 これはそれほど珍しい作品ではない。画質はいいよ、ということなのかな。解説には、この時期のフライシャーらしさの代表作と書かれている。
11 THIS LITTLE PIGGIE WENT TO MARKET 1934年
 これも、スクリーンソング(小唄漫画)のシリーズの一編。当時のニュース映画のパロディになっている。Singin'Samが実写で登場。
12 DANCING ON THE MOON 「月へハネムーン」1935年
 この作品だけカラーである。1の科学的月世界旅行よりは漫画的だが、月世界の表現は同じようにリアル。背景の立体セットに目を見張る。これも他のDVDで見たことがあるが、色がきれいでこんなに手が込んでいたのか、と思う。カラークラシック・シリーズ中の傑作のひとつ。
13 MUSICAL MOUNTAINEERS「ベティと陽気な音楽隊」 1939年
 ベティの最終作。山奥の村で村人たちの大演奏会。これも以前見たDVDよりも画質がいい。
14 THE VACATIONER'S PARADISE 1942年
 マイアミ・ビーチの観光案内アニメ。それ以上でもそれ以下でもない。
15 NEWS SKETCHES 1944年
 ジャム・ハンデイ制作のマックス・フライシャー参加作品。2や4の初期作品のように絵を描いていくうちにアニメーションになっていくという、なんか時代を間違えてしまったような作り。

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2018/09/10

スナフの二等兵

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 買ってからだいぶ放置してあった、ワーナーの軍人教育用アニメ・シリーズのPRIVATE SNAFU GOLDEN CLASSICS (BD)を見た。1943~45年に作られたもの。フリッツ・フリーレング、フランク・タシュリン、ロバート・クランペット、チャック・ジョーンズという当時の演出4人組が交代で制作。4人の違いが通常の作品群を見るより良くわかって面白い。フライシャーの影響も見え隠れする。ヘイズ・オフィスの自主検閲にはかからず、軍の要求する内容さえあれば予算以外に制約がないので、普通の作品ではできない表現をそれぞれが自由に試みている。これは、特に、ジョーンズ演出作に顕著である。また、戦地の兵士には半裸の美女(この美女の描き方も四者四様で面白い)を出せばうけるというノリがあって、これがなかなかいいのである。アヴェリーの赤ずきんちゃん(狼に追いかけられる踊り子)みたいな踊りが出てきたりする。
 もともとこのシリーズは、 Army/Navy Screen Magazinというプログラムの一部で、軍がディズニーに作らせようとしたが、制作費などの条件が合わずにワーナーに回ってきたもの。他のスタジオも同様の作品を作っている。それらがおまけとして収録されている。

収録作品は次の通り。

1 COMING SNAFU 1943 チャック・・ジョーンズ
2 GRIPES 1943 フリッツ・フリーレング
3 SPIES 1943 チャック・・ジョーンズ
4 THE GOLDBRICK 1943 フランク・タシュリン
5 THE INFANTRY BLUES 1943 チャック・・ジョーンズ
6 FIGHTING TOOLS 1943 ロバート・クランペット
7 THE HOME FRONT 1943 フランク・タシュリン
8 RUMORS 1943 フリッツ・フリーレング
9 BOOBY TRAPS 1944 ロバート・クランペット
10 SNAFUPERMAN 1944 フリッツ・フリーレング
11 PRIVATE SNAFU VS MALARIA MIKE 1944 チャック・・ジョーンズ
12 A LECTURE ON CAMOUFLAGE 1944 チャック・・ジョーンズ
13 GAS 1944 チャック・・ジョーンズ
14 GOING HOME 1944 チャック・・ジョーンズ
15 THE CHOW HOUND 1944 フランク・タシュリン
16 CENSORED 1944 フランク・タシュリン
17 OUT POST 1944 チャック・・ジョーンズ
18 PAY DAY 1944 フリッツ・フリーレング
19 TARGET SNAFU 1944 フリッツ・フリーレング
20 THREE BROTHERS 1944 フリッツ・フリーレング
21 PRIVATE SNAFU IN THE ALEUTIANS 1945 チャック・・ジョーンズ
22 IT'S MURDER SHE SAYS・・・1945 チャック・・ジョーンズ
23 HOT SPOT 1945 フリッツ・フリーレング
24 OPERATION SNAFU 1945 フリッツ・フリーレング
25 NO BUDDY ATOLL 1945 チャック・・ジョーンズ
26 SEAMAN TARFU IN THE NAVY 1946 George Gordon,Harman-Ising
27 A Few Quick Facts AIR TRANSPORT/SHIPS/CHINA/FIRE 1944 MGM
28 A Few Quick Facts US SOLDIER/BULLETT/DIARRHEA DYSENTARY 1944 MGM
29 A Few Quick Facts USS IOWA/BRAIN/SHOES 1944 MGM
30 A Few Quick Facts CHAPLIN CORPS/ACCIDENTS/GAS 1944 MGM
31 Voting for Serviceman Army/Navy Screen Magazin Special 1945 Wailt Disney
32 A Few Quick Facts INFLATION 1944 UPA
33 A Few Quick Facts FEAR 1945 UPA
34 The GI Bill of Rights 1945 Wailt Disney

 太平洋戦線を舞台にした3、4、16、17、24、25には典型的な日本人兵士が出てくる。特に24は日本本土に潜入する話で怪しげな日本軍の中枢が描かれている。10はタイトルからわかるようにスーパーマンのパロディで、なんと当時フライシャーが作っていたアニメ版のテーマ曲がそのまま使われている! その上、動きもそっくりである。

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2018/09/09

プライマシー3

 9月5日に前輪2本が新しくなった。C4ピカソにもともと着いていたタイヤは、ミシュランのプライマシーHPだったが、HPはプライマシー4に代わり、わがピカソの205/55R17のサイズはもはや手に入らない。それで、4だとちょっとお金がかかるな、と思ていたら、メカニック氏からプライマシー3で、ということでちょっと安上がりに。ここまでの走行距離は25339km。タイヤの山はまだまだあるがサイドのあたりはそれなりに減っているので、前輪2本のみの交換ということにしたわけである。

 同メーカー同系統のタイヤということで、通勤や買い物くらいにしか乗っていないこともあって、乗り心地には特段の変化はない。箱根あたりを走ってみると多少の違いはわかるかもしれない。

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前輪のプライマシー3


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後輪のプライマシーHP


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