「ふたりのアトリエ」覚書
ジョイランド沼津で、フェルナンド・トルエバ監督「ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル」を見た。なんと観客は自分ひとりの完全貸し切り状態。なんか贅沢な気分になった。映画館にそれなりに足を運んで意識的に映画を見るようになったのは1979年からなのだが(見た作品のメモを残すようになったのもその頃から)、その頃から80年代の前半とここ数年、そういう体験を何度かしている。ジョイランド(東部事業所)さんがそういう映画でも上映し続けるという努力をしていることに敬意を表し、沼津の映画の灯を消さないようにがんばって欲しいと思う。
それで、本題の「ふたりのアトリエ」だが、基本的に自分が見たい映画の詳しい情報は事前に入れない主義なので、まず、黒白であることに驚いた。チラシだけを見て「美しき諍い女」みたいのかな、と思っていたが、若い女性の裸体が横たわるシーンが多いということしか共通項はない・・・気がする(「美しき諍い女」の記憶が薄れているので自信がない)。「地中海」という彫刻で有名なマイヨールがモデルであるということに、映画が中盤を過ぎて「地中海」の姿勢をモデルがとったシーンで気づいた。それで、ちょっとネット検索して調べてみたら、アイーダ・フォルチが演じるモデル、メルセは、マイヨールの晩年の10年間にモデルをしていたディナ・ヴィエルニがモデルである。ヴィエルニはレジスタンスの活動家であり、マイヨール好みの腰から太腿にかけて女性の豊穣さを感じさせる肉体の持ち主だった。アイーダ・フォルチの体型はヴィエルニそっくりで、よくも見つけ出したものだと感心したら、フォルチは10年前に14才でトルエバ監督に見出されて女優の道を歩き始めたという。とすると、トルエバとフォルチの関係もマイヨールとヴィエルニと相似形なのか。
トルエバ監督は長編アニメの「チコとリタ」も監督していて、この作品も見てみたい。(amazon.comにDVDがあったので注文した。届くのが楽しみ)
マイヨールをモデルにした老彫刻家マーク・クロスはジャン・ロシュフォールが演じているが、見ていて、故フレデリック・バックの「木を植えた男」の主人公を連想した。なにかすごくイメージが共通しているのである。アニメも作っているトルエバ監督が意識的にそういうキャラクターにした、という可能性もありそうだ。
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