« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2013/11/29

21世紀の絵巻物

 高畑勲監督「かぐや姫の物語」を見た。予告編を見て、いわゆるアート・アニメーションのセルアニメではない手法の作品に近い作り方で劇場用長編アニメを作るというのはとんでもないことだ、と感じた。実際に見て、まさしくその通りであった。特に前半の赤ん坊のかぐや姫の動き、子供たちが木陰に入った時の葉の形の影が体の動きに伴って移り変わる様子には目を見張った。

 セル・アニメーションの欠点である、セルの裏側から絵の具をべた塗りしたキャラクターが背景画と調和しにくいことを、どう処理するかは、昔から大問題であった。この問題が、セル・アニメという技法がコンピューター化されてセルを使わなくなって初めて完全解決への道が開かれた。それにいち早く対応したのが高畑勲であった。その一つの完成形がこの「かぐや姫の物語」で示されたわけだ。

 かぐや姫が、高畑勲の監督第一作「太陽の王子ホルスの大冒険」のヒロイン、ヒルダを思い起こさせる、というのは、「太陽の王子ホルスの大冒険」を見たことのあるものなら誰しも思うことであろうが、森の中を動き回る子供たちのあるシーンで、ディズニーの「白雪姫」の小人たちが森から帰るシーンを計らずも連想した。ディズニー・プロも本作品に関わっているが、それだからということではない。これは、長編アニメーションはどうあるべきか?という根源的な問いかけを高畑勲がしながら作ったということから生じた類似のように思える。

 「太陽の王子ホルスの大冒険」が最初に公開された夏に、テレビでその予告編を見て、これは見に行きたいと思ったのに、弟のゴジラを見たいという要望に勝てず、親に連れて行ってといえなかったことが、私の小学校時代のアニメーション体験の一種の悔いとなっていた。それが、大学生になってアニメーション同好会の設立時の会員となり、同好会の活動の第一弾として「太陽の王子ホルスの大冒険」の上映会を行ったことにつながるのだが、その時に故・望月信夫さんに協力していただいた。そのときだったか、そのあとだったか、アニメーション映画でやるべきでない心理描写を試みていて成功しているとはいいがたい(こんなことをしたいなら、実写映画を撮ればいい)ので、「太陽の王子ホルスの大冒険」を東映動画の(その当時の)長編アニメのベストには選ばず、「長靴をはいた猫」をベスト1とする、という望月さんの見方を伺った。これと同様の批評はその後の高畑作品でも言われることがあって、「キネマ旬報」12月下旬号のインタービュー記事でも高畑監督自身がそういわれてきたことを語っている。「かぐや姫の物語」では、かぐや姫の心の状態を表現するのにアニメーションでなければできない「動き」となっている。「太陽の王子ホルスの大冒険」では実写でやった方がいいといわれながらもこだわり続けた表現方法がここまで進化したのである。

 ただ、すべてがよいわけではない。作画上で気になる部分が存在する。キャラクターが画像空間内で奥の方に行って小さく描かれる時の細かく描けないための省略の仕方が、ギャグマンガのキャラクターの描き方のように見えて違和感があることだ。もうひとつ、気になるというより、自分の好みとして、月よりの使者が登場するシーンの音楽がそのキャラクター・デザインにもっと合った音楽であって欲しかった。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2013/11/23

Depollution system faulty 再び

 我がシトロエンC4だが、本日エンジンをかけたら、'Depollution system faulty'の警告が出た。以前出たときには、完全にエンジンの回り方がおかしく(正常に燃料が燃焼していない感じ)て、走り続けても大丈夫だろうかと思ったが、今回はエンジンの回り方は正常と変わりない。でも、この前、エンジンがかからないということもあったので、シトロエン沼津に行き、見てもらう。コンピュータ診断でイグニッション・コイルがおかしいと出たとのこと。エンジンは正常に回転しているのでコンピュータの誤動作という可能性も否定できないので、どうしますか、下駄を預けられた。バッテリーの突然死で苦労した思い出や、さらに遡って通勤途上でイグナイターが死んだシビック・シャトルの体験が甦り、大事をとって修理をお願いした。前回同じ警告が出たときはコンピュータのソフトウエアの更新で解決したので、今回もイグニッション・コイルのせいではない可能性もサービス担当者から補足説明された。こうなってくると賭け事みたいなものだ。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2013/11/04

The Noble Approach

R0012388

ワーナーの主にチャック・ジョーンズ監督作品で背景デザインをしたモーリス・ノーブルMaurice Noble(1911-2001)についての本'The Noble APPROACH MAURICE NOBOLE and THE ZEN OF ANIMATION' by TOD POLSON(2013)が届いた。著者のポルソンはカルアーツなどでアニメーションを学んだ後、ノーブルの元で修行した人物である。170ページの本のほとんどのページにノーブルの作品があり、ノーブル自身の言葉が説明文に引用されている。ジョーンズの代表作の完成した背景画、その下絵が満載である。

R0012391

 ノーブルがジョーンズと組んで行ったことは、セルに線画でべた塗りのキャラクターにリアルな写実的背景は合わない、デザイン化され、様式化単純化されたものの方が合うはずだということである。ほぼ同時期にUPAで同じような試みがなされたので、ジョーンズとUPAの関係がどの程度あったかということを故・望月信夫氏も拘っていたが、どうやら直接の関係はないようだ。とはいっても、UPAの主力メンバーと同じ時期にノーブルはディズニー・プロで仕事をしていて、さらに1941年の大ストライキが原因でディズニー・プロを辞めたのも同じであった。ノーブルやUPAのメンバーらは、シュナード美術学校Chouinard Art Insutituteで美術を学んでアニメ界に入った最初の世代で、それ以前のほぼ独学でアニメーションを始めた世代とは違った美術史的感覚を持っていた。それが同時多発的に始めた新しい試みだったのである。また、外的要因として制作費の抑止ということがあり、それに合った手法でもあった。

 本文は読み易く、最後まで読み通せば、ジョーンズ作品の秘密が理解できそうな気がする。

R0012390


| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »