マイク・バリアーの難文制覇
急逝された望月信夫さんの代役で紀伊國屋書店から発売された「DVD世界アニメーション映画史」の解説を書くために読み始めたMichael Barrier'HOLLYWOOD CARTOONS AMERICAN ANIMATION IN ITS GOLDEN AGE'(1999年)をやっと読み終えた。「マウス・アンド・マジック」のレナード・マルティンの文章と比べると、バリアーの文章は倒置や省略が多く読みにくい。これは、バリアーが70年代に精力的に行った関係者への多量のインタビューから書かれているためである。「マウス・アンド・マジック」のような本を一応読んでいるか、それと同等のハリウッドのアニメ史の流れを知っていないと読めない本で、一種の専門書である。
ハーマンとアイジングが、なぜディズニーの元をすぐに離れたのか、MGMとの契約を解除されたときにスタジオを古巣のディズニーに貸していたとか、直接本人に聞き出すしかない情報にあふれている。ハリウッドのアニメーションの技術的な進化についても詳述していて、それを読者に端的に示すためにパラパラマンガが3種類付いている。この3種類の違いを簡単に説明すると、最初期のポール・テリーに代表されるゴムホース的アニメート、その後のディズニー短編作品で代表されるアニメート、最後がいわゆるアヴェリー派のアニメート、である。
マイク・バリアーという研究者がいることを教えてくれたのも故・望月信夫さんだった。バリアーが編集出版しているアニメ同人誌'Fuunyworld'を紹介してくれて、しばらく定期購読することにしたのだった。1977年頃である。バリアーが各アニメスタジオのアニメーターに精力的にインタビューして、これをまとめてアニメ史の本を出す予定だというのはこの不定期刊行の雑誌に書かれていた。それから出版まで約20年かかり、さらに自分が読み終わるのに15年くらいたっているわけだ。その間に、インタビューを受けた人物のほとんどは他界した。今では得られない貴重な証言を記録した本である。
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