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2013/09/29

音のテロリスト

 オラ・シモンソン&ヨハネス・シェルネ・ニルソン監督「サウンド・オブ・ノイズ」(2010年)をジョイランド沼津で見た。珍しいスウェーデン映画である。ベルイマン監督以外に何があるんだという国の映画が珍しく沼津で見れるので見てみようと出かけたわけで、何らかの前知識があって見なくちゃならないと思っていたわけではない。だから、見終わって、これは得した、という思いでこれを書いている。

 高名な音楽一家でただ一人の音楽の才能がまったくない、テロ対策の刑事が、6人の音楽家による音楽によるテロ事件を追う、というお話である。「アパートの一室、6人のドラマー」という短編映画を長編化したものである。登場する6人の音楽家は本当の音楽家のようで本名がそのまま役名になっている。

 音楽学校での前衛的パフォーマンスのために退学になったパーションとミアが、「ある街と6人のドラマーのための音楽」を演奏するために、もう4人のドラマーを集める。このシークエンスは「七人の侍」のよう。この「ある街と6人のドラマーのための音楽」の楽譜が画面に映るとこの楽譜の音符や五線が動き出す。チャック・ジョーンズの「ドレミなへべれけ」'Hight Note'1960年を思わせるアニメーション・シークエンスだ。これが得したと思った第1番目の理由。

 現場に残されたメトロノームから、主人公の刑事はパーションと早い時点でそれとは気づかずに接触する。刑事の弟は故郷に凱旋帰国して演奏会を開く有名な指揮者で、この演奏会が音楽テロの対象となる。この設定による伏線がなかなか良い。弟の演奏会が、この映画のストーリーの転回点となり、映画は思わぬ方向のエンディングへと進んでいく。主人公が事件の捜査中にあることに気づき、犯人逮捕よりも犯人を使って「世界を変えよう」とするのである。これが得したと思った第2番目の理由。

 クレジット・タイトルの最後に「これはフィクションです。真似すると感電死。」と出てきたのが、シトロエンBXが画面に映ったのと合わせて、得したと思った、ダメ押し。

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2013/09/22

「サイクリック宇宙論」ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック(早川書房)

 超弦理論とインフレーション宇宙論を結びつけたものが、現在の宇宙論のメインストリームと考えてよいのだが、それには重大な欠点がいくつかある。そのうちの最大のものは、我々の宇宙を特徴付ける自然定数の値が微妙すぎて、何かの偶然でその値となったと考えるしかないことだ。人類が宇宙に存在するためには絶妙な自然定数の調節が必要となる。膨大な数ある宇宙の中のたった一つがたまたま選ばれたというのは不自然で、何らかの必然でそういう値になっているという説明が必要だろうという立場で、この欠点を回避する理論が、本書で解説される「サイクリック宇宙論」だ。

 超弦理論の発展で、ブレーン(1次元の存在である弦を2次元化した膜-メンブレーン-を略して作られた言葉だが、我々の宇宙を示すブレーンは9次元である)理論が登場し、複数のブレーンが余剰次元でつながり重力だけがブレーン間を伝わるという宇宙像が登場した。この余剰次元が実は素粒子サイズよりずっと大きく、そのため重力のみが他の3力(電磁力、弱い核力、強い核力)より弱いことが説明できるというのがリサ・ランドールなどの余剰次元理論である。2つのブレーンが余剰次元(2次元というのが有力らしい)でつながっていると考えるのだが、このブレーン間に重力だけでなく、ばねの力のようなものがはたらき、ブレーン同士がばねの両側につながれた物体のように近づいたり遠ざかったり振動すると考えることによって、インフレーションを起こすエネルギーが説明できるというのが、サイクリック宇宙論の根本である。

 ブレーン同士が衝突した瞬間にビッグバンとインフレーションが起こる。2つのブレーンは衝突後離れた後再び衝突する。これは膨張する宇宙が収縮してビッククランチを迎えることに相当する。ビッククランチ後にビッグバンとなり再び宇宙が誕生する。これを繰り返すので、「サイクリック」というわけである。この誕生と終焉を繰り返すことで、自然定数が我々の宇宙の値に落ち着いた、と説明できるので、我々の宇宙が「たまたま」できたわけでないと考えるわけである。

 サイクリック宇宙論が正しいかどうかは、重力波の観測で決着が付くという。重力波の観測はずっと試みられているわけだけれど、未だ誰も成功していない。いつか観測されるだろうが、自分が生きている間にその発見のニュースを聞けるかどうか。

 この理論にあっても説明できずに残るのはダークエネルギーである。現在のどんな理論であっても、ダークエネルギーはダークなまま、現在の観測値のまま受け入れるしかないのである。完全な宇宙論は、ダークエネルギーを説明できるもの、あるいは、ダークエネルギーがいらないものでなければならない。その道のりは長そうだ。

 決定的な基本方程式が見つかっていない超弦理論を元にしているためもあるのか、この理論はすごいぞ、という主張の強さが余り感じられない。二人の著者の性格でもあるのかな。

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2013/09/11

バッテリーが死んだ

 月曜の夜、三島駅に家人を迎えに行き、停車スペースにC4を止めたとたん、バッテリーが死んだ。20年近く会員になっているJAFの救援を初めて頼んだ。結局、レッカー牽引で自宅に帰還した。バッテリーは6年目の点検のときに換えたので、2年3ヶ月くらいである。今まで3年ごとに点検で変えてきたが、3年持たなかったのは初めてだ。この夏の暑さでエアコンの負担が増大したためなのか、それとも、いわゆるはずれのバッテリーだったのか。バッテリー以外の問題もあるんではないかと心配したが、それは杞憂であった。

 夏の暑さといえば、電気料金の請求書が来た。昨年度同時期の1.5倍の使用量であった。太陽光発電の売電量も減っている。ちゃんと計算してみないとわからないが1.6倍は使っているようだ。

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2013/09/07

ベティ・ブープの結婚

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 ベティ・ブープの決定版ともいえるDVD(ブルーレイもあり)がついに出た。OliveFilmsによる4Kリマスター版「BETTY BOOP THE ESSENTIAL COLLECTION」である。VOLUME1と2が発売されていて、amzzon.comに注文したところ、1のみ先に送られてきた。パッケージの箱の裏の説明を読むと4巻出るようだ。1巻に12本入っているので48作品のコレクションとなる。数え間違えていなければ、フライシャーのベティ作品は115本、ポパイのように全作品を収録というのは難しいのか?

 4Kリマスターなので画質はシャープである。比較のために宝島社の「ベティ・ブープDVDBOX」を見てみたら違いは歴然。

 VOLUME1に収録されている作品は次の通り(邦題は筒井康隆「ベティ・ブープ伝」による)。

 Ches Nuts(1932)ベティの将棋合戦
Betty Boop,M.D.(1932)ベティ博士とハイド
Betty Boop's Bamboo Isle(1932)酋長の娘
Betty Boop For President(1932)大統領選挙
Betty Boop's Penthouse(1933)ベティの屋上庭園
Betty Boop's Birthday Party(1933)ベティの誕生日
Betty Boop's May Party(1933)ベティのピクニック
Betty Boop's Halloween Party(1933)ベティのキングコング退治
Betty Boop's Rise To Fame(1934)ベティの出世物語
Betty Boop's Trial(1934)ベティのスピード違反
Betty Boop's Life Guard(1934)ベティの波乗り越えて
The Foxy hunter(1937)ベティの鵞鳥狩り

 最後のThe Foxy hunterは初めて見た。そして、驚くべき発見があった。この作品の本当の主人公は子犬のパジィと少年である。この少年はベティから「リトル・フレディ」と呼ばれており、少年がベティに書き送るメモの署名は「ジュニア」である。フレディというのはベティのボーイフレンドの名前である。ということは、この作品の少年はベティとフレディの子供と考えられる。つまり、ベティさんはフレディと結婚していたのである!初めて知った事実。フレディがかっこいいBetty Boop's Life Guardの後に年代的にだいぶ後になるこの作品を持ってきたセンスはかなり良い。どこにも名前が出てないが、ジェフ・レンバーグあたりがチョイスしていそう。2巻が届くのが楽しみだ。

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