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2013/04/27

「ブラックホールを見つけた男」アーサー・I・ミラー 阪本芳久・訳 草思社

 白色矮星の限界質量を見出し、それを超えた質量の星は重力でつぶれてしまうこと、つまり、ブラックホール、を世界で初めて理論的に導いたインド人天体物理学者のスブラマニアン・チャンドラセカールの伝記である。チャンドラセカールの師である、一般相対性理論でないと説明できない重力による光の屈折を検出したエディントンとの確執が本書のテーマとなっている。
 一般相対論を当時一番理解していたはずのエディントンが、チャンドラセカールが一般相対論と量子論に基づき見出した重力崩壊を、徹底的にありえるはずがないと叩いたということは、物理学の歴史の一典型(同時期に、アインシュタインが「神はさいころを振らない」と徹底的にボーアに噛み付き続けたことの方がこの例として有名)であるが、本書を読んで、チャンドラセカールに与えた挫折感の大きさを初めて知った。インドからイギリスに出てきた若者が当時の大権威にこれだけやられたら、トラウマにもなろう。
 チャンドラセカールはイギリスからアメリカに渡り、そこで腰を落ち着け、1953年に帰化するのだが、この帰化の前後に、アメリカの第二次大戦後の冷戦時代の水爆開発競争にも関係する(水爆の物理学は恒星の物理学と基本的に同じだ)。このエピソードで、コルゲートという初めて聞く物理学者の名前が出てくる。ブラックホールに関するコンピューターシュミレーションを行ってブラックホールがありえない存在ではないことを示した、ということなのであるが、今まで読んだブラックホール関係の本では見たことのなかった学者名だ。そのほかに登場する学者たちは、20世紀を代表するおなじみの物理学者ばかりだ。

 この本は、2009年に出版されたときに気になっていたのだが、映画「ライフ・オブ・パイ」を見たことでついに読む気になったのであった。

 チャンドラセカールの著書「星の構造」は確か読んだ気がするが、余り記憶にない。書棚のどこかにしまいこんであるので探し出してみよう。

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