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2012/11/10

ランダウの原姿勢

  「物理学者ランダウ スターリン体制への叛逆」(佐々木力・他・編訳 みすず書房)を読んだ。2004年に出た本だ。旧ソ連において、機密とされていた資料が公開され、ランダウが1930年代末に逮捕・監禁された事件の真相がわかったことを受けての出版であった。この本が出た当時、ちょっと気を惹かれたような気があるが、そのままスルー状態できて、今年になってボリス・バルネット作品の特集上映を見て「ロシア・ソビエト映画史」(山田和夫 キネマ旬報社)を読んで、そうだ、ランダウが気になる、ということで買ったのだった。

 ランダウというと、この本の編・訳者の一人である山本義隆も学生時代を回想して同様のことを書いているのだが、なんといっても「理論物理学教程」というリフシッツと共著の理論物理の教科書のシリーズである。大学2年のときの専門科目の教科書として指定されて購入した「力学」を読んで、その論理的美しさに魅了された。最小作用の原理から、力学が再構成されていて、自分がやりたかった物理はこれだ!、と思ったくらいである。また、先輩から、一般相対論を勉強するなら、このシリーズの「場の古典論」だといわれて、チャレンジしたが、それについては挫折し、教員採用試験を再度受けるために就職浪人していたときに、8月の採用試験が終わった後に、とりあえず最後まで読み終えた記憶がある。量子力学については、ディラックの本が薄かったので同クラスの友人とこれを読む会を数回やったが、これも挫折。やっぱり、ランダウ=リフシッツの本のほうが良かったかと思ったが、量子力学の演習を担当者の助手の先生が、ランダウで勉強していると計算の仕方はできるようになるが深い物理的意味は身につかない、その点では朝永振一郎の本がいい、特に、ハイゼンベルグの行列力学を学ぶには朝永が良い、と言ったのを真に受けて、朝永振一郎の「量子力学Ⅰ、Ⅱ」を買い込んだ。結局、朝永の本も全部読み通せたのは、就職浪人していたときだった。ランダウ=リフシッツの「量子力学」については、結局、後から出た小教程の方を買って読んだ。このランダウ=リフシッツの教科書は東京図書から出ていたのだが、なぜか、「統計力学」だけ岩波書店から出ていて、これも買い込んだのだが、書棚の飾りのまま。

 朝永とランダウは同世代だが、同じ世代のファインマン(大学時代、みんな、先生方も含めて「ファイマン」に近い発音で呼んでいた)も定評のある物理の教科書シリーズを書いている。ファインマンの本は、なぜか、今に至るまで買ってないし、図書館で借りて読むこともしていない。朝永もランダウもファインマンも量子力学を教えてくれる先生がいなくて独学した世代だ。その世代が、それぞれに特徴ある教科書を書いたというのは面白い。ただ、ランダウは文章を書くのが不得意で弟子のリフシッツがすべてを書いた。ランダウもアインシュタインと同様に言語力に問題のあるLD的要素を持っていたのだろう。

 大学時代、クラス対抗のソフトバール大会やサッカー大会に出るにあたって、チーム名はどうするか相談したときに、誰かが「ランダウリフシッツ」っていいんじゃない? と提案したのを妙に覚えている(結局は却下された)。


 山田和夫、佐々木力の文章は、ここのところとんとお目にかからない左翼文化人的文章で、読んでいて妙に懐かしかった。

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