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2012/08/24

「日本短編映像史 文化映画・教育映画・産業映画」吉原順平 岩波書店

 静岡県東部高等学校視聴覚ライブラリーが数年前に解散になって、そのときに廃棄処分となった16mmフィルムの多くを貰い受け、これらのフィルムのついて多少なりともどのようなものなのかわかる資料を少しでも探したいと思った昨年の秋、本書が出版されたのを知り、購入した。岩波映画の製作現場にいた著者による貴重な資料を集めた本だ。

「第1章教育映画・文化映画・ドキュメンタリー映画」で、これらの映画を歴史的に概括する最初の方に、J.R.ブレイやフライシャーの名前が出てきたと思ったら、その部分はなんと「世界アニメーション映画史」からの引用であった。アニメーションは主眼にないが、本書の性質上、ところどころでアニメ作品やアニメ制作者として知られる人物が出てきて、通常のアニメーション史とは違う視点で取り扱われているのが新鮮である。「すて猫トラちゃん」や「草原の子テングリ」(製作スタッフについて、手塚治虫脚本とだけ紹介している)をスティール写真で取り上げている。

 私が貰い受けたフィルムの中で授業で一番使ったことのある「振動の世界」や昨年始めてチェックしてその記録映画としての力強さに驚いた「原子力発電の夜明け」について、きちんとした記述がある。ところが授業の中で使いやすい長さ10分程度の作品についてはシリーズとしてだけ取上げられていて、個別の作品についてはさすがに触れられていない。戦前から現在までの短編映画の全体像を未来志向でまとめた本なので仕方がない。私が持っている16mmフィルムの多くいの素性を調べるには、また別なものを探して調べていくしかなかろう。

 教育映画の多くは科学映画でもあった、ということで、「教育」と、「科学」あるいは「科学技術」の時代変遷をかなりうまくまとめていて、「視聴覚教育史」や「科学技術史」として読める本にもなっているのが、予想外の内容であった。板倉聖宣の「仮説実験授業」の提唱がかなり古い時代のものだというのは、不覚にも本書を読むまで気づいていなかった。

 このような映画を扱うには、通常の映画よりも広い視点・知識が必要だと痛感させられた。

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