LAヴァイス
ピンチョン全小説の最新刊「LAヴァイス」栩木玲子+佐藤良明・訳を読み終えた。読み始めて、これは、ロマン・ポランスキー監督ジャック・ニコルソン主演の「チャイナタウン」みたいだと思った。ポランスキーへの直接の言及はないが、チャールズ・マンソン事件への言及はある。ロスの土地開発に関係する人物の妻に当たる女からの依頼で私立探偵が捜査を始めて・・・という基本のストーリーは同じだ。読み進めていくと、ハードボイルドだけでないピンチョンのカートゥーンを含めたコメディ好きがそこかしこに現れて、まるで、ルーニー・チューンのダフィ・ダック主演の名探偵パロディ物のようだ。訳者による今回も詳しい解説があるが、なぜか、「チャイナタウン」やダフィの迷探偵物カートゥーン(コメント参照)については取り上げられていない。ダフィが取り上げられないのは、直接その名が本文中に出てこないせいであろう。でも、バッグスにWhat's Up,Doc?と呼びかけられる相手はダフィなんだから、本書の主人公ドックは、ダフィって考えたいね。
さらに読み進めると、妙に軽くて、これは映画というより、テレビドラマののりだなあ、と思う。21章からなるが、20章まではほぼ均等な長さの章立てであるのは、スポーツ中継かなにかで放送しない週がある2クールのテレビ・ドラマということだろう。訳者が色々迷った末に邦題を「LAヴァイス」というものにしたのもうなずける。
この小説を読んでいなかったら、公開されてすぐにティム・バートン監督の「ダーク・シャドウ」を見に行くことはなかっただろう。「LAヴァイス」でピンチョンは「ダークシャドウズ」だけでなく「スクービードゥー」(私には「弱虫クルッパー」の方がピンとくるのだが)も引用していて、やっぱりピンチョン、って思ったが、バートンの「ダークシャドウ」でも、テレビにシャギーとクルッパーが映っていた。ハンナ・バーベラのテレビアニメの代表作は「スクービードゥー」なのかもね。
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コメント
蛇足に近い補足
東宝の「三大怪獣地球最大の決戦」のテレビ放映を主人公たちが見るくだりがある。そこで「ローマの休日」との共通性が語られる。よく見ているね、ピンチョン、って思った。ちなみに、「三大怪獣~」でサルノ王女を演じた若林映子が「本多監督に『ローマの休日』を意識してやってごらんと言われたんです。私もヘップバーンが大好きで、このときは頭の中でイメージして演じていました。」と証言している(「モスラ映画大全」洋泉社2011年刊より)。
投稿: WILE.E | 2012/05/23 20:01
ダフィ・ダックの迷探偵物リスト
「名探偵女難の巻」「私立探偵ダック・ドレイク」The Super Snooper 1952年R.マッキンソン監督
「迷探偵ダッフィホームズの巻」「ドアロック・ホームズの冒険」Deduce,You Say 1956年C.ジョーンズ監督
「宇宙捕物帳の巻」「宇宙刑事ポーキー&ダフィー」Rocket Squad 1956年C.ジョーンズ監督
「スパイ列車の巻」「ボストン・クワッキー」Boston Quackie1957年R.マッキンソン監督
「チャイナタウンの捕物の巻」「さらばチャイナ・ジョーンズ」China Jones 1959年R.マッキンソン監督
共演はすべて、ポーキー・ピッグ。ということは、「LAヴァイス」でポーキーに当たるのは誰だ?
投稿: WILE.E | 2012/05/27 10:17