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2012/02/04

『「余剰次元」と逆二乗則の破れ』村田次郎 講談社ブルーバックス

 新書の科学物で久しぶりに最先端の研究の熱気を感じさせる1冊である。「余剰次元」といえばちょっと前にリサ・ランドールの本が訳されて話題になったが、ランドールの本よりわかりやすく余剰次元と余剰次元の存在を見つける実験方法を解説している。

 余剰次元が存在すると、距離の2乗に反比例する万有引力が、たとえば空間の余剰次元の次元数が1次元なら距離の3乗に比例するようになるので、そのずれがあるかどうかを調べればよい。距離の2乗に反比例する、というのが逆二乗則ということで、万有引力の場合、宇宙の大きさのスケールからミリメートルのスケールまでは逆二乗側が成り立っているのは確認されていた(それだから「はやぶさ」は地球に帰還できた)。ところが、ミリメートルより小さい部分ではまだ逆2乗則が成り立っているかどうか確認されていない。だから0.1mmくらいの大きさの余剰次元があるかもしれないのである。余剰次元は超弦理論では素粒子の大きさよりさらに小さいものとして考えられていた。こんなに小さい余剰次元の存在の証拠は簡単に見つからない。それに対して、0.1mmというのは相当に大きいので、その存在の証拠はちょっと努力すれば見つけられそうなのである。著者の研究室では市販のビデオカメラを使って実験結果を解析している。その原理は簡単だと書いてあるが、どう簡単かは説明していない。

 0.1mmあたりでの実験はいくつか行われていて、このスケールではまだ余剰次元があるという結果は得られていない。余剰次元があると期待されるのは、電磁気力、原子核内で働く強い力と弱い力の3力に比べて、重力が弱すぎることを説明でき、われわれの宇宙がどうしてこのようにあるのか、ということにさらに迫ることができるからだ。

 この本を多くの若者が読んで、物理の道に進んでくれるといいなあ。

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