« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

2012/02/26

未来世紀ブラジル

 テリー・ギリアムの一番好きな作品「未来世紀ブラジル」がブルーレイ(20世紀フォックス・ビデオ)で出たので買い、見た。そういえばLD(レーザーディスク)も持っていたと思い出して、そちらも比較のため見た。1985年の初公開時は沼津の映画館で上映されなくって、静岡まで見に行った記憶がある。LDはワーナーホームビデオから1992年発売だが、買ってすぐに1度見たのかどうかもわからない。少なくともこの10年間は見ていない。好きな映画だというのに、こんなに見てなくって良かったのだろうか? 今回DVDを見て、これを本当にマイベスト5SF映画に入れてるの?って正直なところ思った。脚本の無理さがものすごく感じられるのだ。ヒロインももっと肉感的な美人であったような気がしていたが、これは「バロン」との混同だろう。

 ブルーレイを見た後でLDを見たらその画質にがっかりしてしまった。以前はこのLDの画質が良いと思っていたのだ。このブルーレイの画質なら、映画館で映画を見る必要は画質・音質上からいったらない。ブルーレイも安売りになると、映画館の入場料とそれほど変わらない。レンタルで借りるなら、さらに安い。でも、映画館で見るという行為は大切にしたい。ただし、LDの方がいい点が一つあって、オリジナルのスタンダードサイズで見れることだ。ブルーレイの方はハイビジョンの縦横比になっていて天地が切れている。
ブルーレイではスクリーンサイズは選べるようにできないのか?

 「未来世紀ブラジル」を今回見て気が付いたこと。「博士の異常な愛情」のストレンジ・ラブ博士を思わせる人物が撃たれて倒れた後の階段での銃撃戦が「戦艦ポチョムキン」のオデッサの階段であったこと。オデッサの階段のシーンは、ウディ・アレンもパロディにしているし、確か「アンタッチャブル」でもオマージュ・シーンがあった。レトロ・モダンな悪夢の未来は「ブレードランナー」から受け継いで、「ガタカ」に引き継がれる。「未来世紀ブラジル」に使われた一人乗りの自動車メッサーシュミットの役割は、「ガタカ」ではシトロエンDSになる。「ガタカ」もブルーレイで買ってあるので、近日中に見ようと思う。

 「未来世紀ブラジル」製作中に、監督のテリー・ギリアムは、プロデューサーのアーノン・ミルチャンと相当な衝突があったことを「バトル・オブ・ブラジル」という本に記している。この本を買って読んだので書棚のどこかに入っているはずなのだが、見つからない。劇場公開時に見た感想を書いたノートも見つからない。私の部屋の余剰次元は他の場所より大きいらしく、別のブレーンに物が行ってしまっている様だ。

 雑誌「プレミア」にアヴェリーの事を書いたとき、色々な映画がアヴェリーに敬意を表している例としてギリアムの「12モンキーズ」を例の一つに挙げた。「12モンキーズ」も見直してみよう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/02/25

HOLLYWOOD CARTOONS

 紀伊国屋書店から出る「DVD世界アニメーション映画史第5,6集」の故・望月信夫さんが書くはずだった解説を自分が書くことになって、この1週間ほど原稿書きに格闘していた。望月さんがライフワークにしていたテックス・アヴェリーについて書かねばならず苦労した。アヴェリー作品についてまとまった文章を書くのは、雑誌「プレミア」に「テックス・エイブリー 笑いのテロリスト」と題された特集上映がミニシアターで行われることになったときに書いて以来である。望月さんだったら、どう書くだろうと想像しながら、書いてみた。
 
 原稿を書くのに、いくつかのカートゥーンの研究書を参考にした。その中でも、大著過ぎて拾い読みすらしていなかった、Michael Barrierの'HOLLYWOOD CARTOONS American Animation in Its Golden Age'(1999年 Oxfoed University Press)のワーナーとMGMでのアヴェリー関係の部分を読んだ。バリアーという研究家がいて、'Fuuny World'というアニメ雑誌を出しているというのは、望月さんと知り合ったばかりの頃教えてもらって、定期購読の申し込みをしてしばらく買って読んでいた。「アニメージュ」などの日本のアニメ雑誌が出る前だ。バリアーがアニメーターたちにインタビューをしていて、それをまとめたカートゥーン史の本を出すというのはその頃から'Fuuny World'誌に書かれていた。ところが、その本はなかなか出版されず、レナード・マルティンの「マウス・アンド・マジック」の方が先に出てしまったりしていた。'Fuuny World'もいつのまにか出なくなってしまって(出た分以上の購読料を払った記憶があるのだが、返金された覚えはない)、どうなってしまったのだろうと思ってだいぶたった時に、バリアーの本がついに出るよと望月さんに教えてもらった。本が届いたとき、ピンチョンの「重力の虹」を越える辞書のような分厚さに圧倒されてしまったのであった。

 今回ごく一部を拾い読みしただけだが、クレジット・タイトルには出ないスタッフにもインタビューしていて、初めて見る名前に多くであった。今でこそ映画のクレジット・タイトルにはすべての関係スタッフの名前が出るが、ハリウッドの全盛期にはカートゥーンはもちろん実写映画でもすべてのスタッフの名前は出ていない。名前の出ないスタッフに誰がいてどのようなことをしたのかということは、直接本人に聞かないとわからない。バリアーはそれを丁寧にしているのである。本が出るのが遅くなって、故人になってしまったスタッフも多い(アヴェリーもその一人)。少なくとも1回全体に目に通しておくべき本だが、ジェフ・レンバーグやマルティンより文章が難しいのがつらい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/02/05

宇宙人は来ていた、または、主人公はalien

 「宇宙人ポール」がシネマサンシャイン沼津で突如上映されていることに気づき、慌てて見に行った。宇宙人が実は地球に来ていてアメリカ政府が隠している、という説がその筋では信じられているわけだが、それが噂でなく本当であったという設定の宇宙人遭遇物SF映画のパロディというよりも「未知との遭遇」や「E.T.」などへのオマージュにあふれた珍道中コメディ映画である。70年代後半から80年代のSF映画をよく見ていればより楽しめるのだが、そいう映画の詳細を知らなくても、自分自身を再発見するロード・ムービーとして、失われた何十年間かを取り戻すための遍歴映画として見るべきものがある。

 私的には、「スターウォーズ」の酒場のバンドの音楽を、主人公たちが立ち寄ったドライブインの酒場のバンドがカントリー・ウエスタン編曲で演奏していたシーンが一番楽しかった。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2012/02/04

『「余剰次元」と逆二乗則の破れ』村田次郎 講談社ブルーバックス

 新書の科学物で久しぶりに最先端の研究の熱気を感じさせる1冊である。「余剰次元」といえばちょっと前にリサ・ランドールの本が訳されて話題になったが、ランドールの本よりわかりやすく余剰次元と余剰次元の存在を見つける実験方法を解説している。

 余剰次元が存在すると、距離の2乗に反比例する万有引力が、たとえば空間の余剰次元の次元数が1次元なら距離の3乗に比例するようになるので、そのずれがあるかどうかを調べればよい。距離の2乗に反比例する、というのが逆二乗則ということで、万有引力の場合、宇宙の大きさのスケールからミリメートルのスケールまでは逆二乗側が成り立っているのは確認されていた(それだから「はやぶさ」は地球に帰還できた)。ところが、ミリメートルより小さい部分ではまだ逆2乗則が成り立っているかどうか確認されていない。だから0.1mmくらいの大きさの余剰次元があるかもしれないのである。余剰次元は超弦理論では素粒子の大きさよりさらに小さいものとして考えられていた。こんなに小さい余剰次元の存在の証拠は簡単に見つからない。それに対して、0.1mmというのは相当に大きいので、その存在の証拠はちょっと努力すれば見つけられそうなのである。著者の研究室では市販のビデオカメラを使って実験結果を解析している。その原理は簡単だと書いてあるが、どう簡単かは説明していない。

 0.1mmあたりでの実験はいくつか行われていて、このスケールではまだ余剰次元があるという結果は得られていない。余剰次元があると期待されるのは、電磁気力、原子核内で働く強い力と弱い力の3力に比べて、重力が弱すぎることを説明でき、われわれの宇宙がどうしてこのようにあるのか、ということにさらに迫ることができるからだ。

 この本を多くの若者が読んで、物理の道に進んでくれるといいなあ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »