続・とあるアニメ洋書の購入目録
Stephen Cavalier THE WORLD HISTORY OF ANIMATION; Univercity of California Press 2011年刊
シルヴァン・ショメが序文を書いている最新版「世界アニメーション史」である。この序文で、ショメがもともとディズニー・ファンであり、ジョン・ラセター、ニック・パーク、宮崎駿を同時代の尊敬すべきライバルとみなしているのがわかる。(この4人、古い車が好きだという共通点があるんだよな)
この本の特徴は、ある程度の時代区分をして、地域(国)ごとにその地域を代表するアニメーション作品を紹介していることである。最初に、各地域の簡単なアニメ史が紹介され、キーポイントとなる制作者名と作品名が表としてまとめられている。北米地域では、テックス・アヴェリーがこの表の筆頭にあり、ディズニーのナイン・オールドメンは別格として扱われ、作品としてはウィンザー・マッケイの「恐竜ガーティ」から「トイ・ストーリー3」まで27本ある。面白いのはフライシャー兄弟の作品では「スーパーマン」だけがこの表の中にある。ディズニー作品は12本。北米なので、カナダNFB作品がマクラレンの「隣人」とラーキンの「歩く」の2本入っている。オブライエンの「キング・コング」や「ロジャー・ラビット」が入っていて、アニメーションを狭い範囲で限定していないのがわかる。
気になるのはアジアであるが、作品20本中14本が日本の作品。北山清太郎の「猿蟹合戦」が最初にあげられているのには、おお、と思ってしまった。人名は23人中11人が日本人。ヴェトナムやタイ、インドといった国の制作者の名前もあり、これらの国の作品を機会があったら見てみたいと思う。他地域にも南アフリカの作品など、見てみたいものがかなりある。
歴史のスタートは、「1900年以前、アニメーションの起源」というタイトルで、1872年のマイブリッジの走る馬の連続写真からである(山村浩二の「マイブリッジの糸」を見たい!)。最後は、序文を書いているショメの「イリュージョニスト」2010年である。アダム・エリオットは2003年に「ハーヴィー・クランペット」が載っているが「メアリー&マックス」はない。ということは、「ハーヴィー・クランペット」の方がより傑作であるということだろう(DVDを買ってみるしかないか)。
本文中に1ページくらい(Biographyというコラム)で、代表的作家やスタジオの歴史の簡単な紹介がされている。ちなみに、宮崎駿とジブリは、「カリオストロの城」の次元大介の図版つきで紹介されている。
Jeff Lenburg LEGENDS of ANIMATION TEX AVERY;Chelsea House 2011年刊
ヤングアダルト用のシリーズ Lenburg LEGENDS of ANIMATION の1冊である。他にはハナ=バーベラやウォルト・ディズニー、マット・グローニングなどが出ている。図版も含めて、過去に出版された各種の本から、アヴェリーについての記述を集めてまとめたものという印象である。ページ数も100ページちょっとしかなく、文章も読み易そうなので、そのうちにきちんと読み終えたいものだ。
Martha Sigall LIVING LIFE INSIDE THE LINES TALES FROM THE GOLDEN AGE OF ANIMATION;University Press of Mississippi 2005年刊
ワーナーとMGMで、セルの色塗りとトレースの仕事をしていた女性マーサ・シガルによる昔語り。アヴェリー(ワーナーとMGMの両方での話題を読める)やクランペット、ジョーンズなどについては斜め読みする限りはそんなに新しい話はなさそうだが、著者のワーナーが懐かしくない?という質問に対して、アヴェリーがワーナーのキャラクターを懐かしみながらも、MGMの製作環境に満足していると答えたというのは、両方のスタジオでいっしょに仕事をした者にしか語れない。また、インカー(日本で言うところのトレーサー)やペインター(日本では彩色)の女性たちの実名をあげての仕事ぶりの紹介は他では読めない。特に、アニメーターとインク&ペイント部門の女性たちとのロマンスについて、ワーナーやMGMで行われていた社員慰安イベントについてなど、項目を立てて書かれているのを読むのは楽しい。この本に登場する初めて名前を知ったスタッフたちの消息についてもかなり詳しく書かれていて、ちょっと驚くのである。
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