メアリー&マックス
「ハーヴィー・クランペット」(実は未見)の作者による長編クレイアニメ、ということ以外に事前情報を持たずに「メアリー&マックス」を見た。いじめられっ子、近くに本当の友達がいないなど、過去の自分を思い出させて身につまされる部分もある。でも、マックスのように涙は出ない(自分を含めたった3人の観客(まただ!)の残りの2人の若い女の子たちは泣いていた)。自分の中のマックス、自分の中のメアリー、主人公二人のどちらにも自分と重なる部分を感じる。それは見た人間誰もが思うことだろう。
監督アダム・エリオットはストーリーテラーである。手紙文を読む、という形で淡々と進行していくが、クライマックスの急展開はうまい。この脚本を実写でやりたいという映画監督が出てきそう、と思うくらい良い脚本だ。それに対して、アニメーションとしての動きは抑制されていて派手さはなく、ギャグも最小限である。見終わったときの気分は高畑勲の「火垂るの墓」に近い。
マックスが読んで積み上げていく本の中にアシモフがあり、あれっと思ったのだが、ニューヨークSFファンクラブの会員ということが後でわかる。というように、わかる人にはああそうだね、という小ネタがばら撒かれている。
素晴らしい映画であるが、これがお前の見たいアニメーションか、と問われたら、ちょっと違うね、と答えるだろう。「イリュージョニスト」や「ファンタスティックMr.Fox」の方が私が見たいアニメーションに近いのである。
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