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2011/09/11

イリュージョニスト

 ジョイランド沼津でシルヴァン・ショメの「イリュージョニスト」の上映が始まったので早速見に行った。土曜の夜の回だったが観客はたった3人。まるで80年代初めの映画館冬の時代のようだ。今は無き沼津東映パラスで「旅芸人の記録」を見たときのことが思い出される。

 ショメの名前は「ベルヴィル・ランデブー」で知ったわけだが、「ベルヴィル・ランデブー」は沼津では上映されず、DVDで見た。フライシャー兄弟へのオマージュが印象に残る、フランス的なエスプリを感じる作品だった(もっと紋切り型でない表現をしたいがうまい言葉が見つからない)。私の21世紀に入ってからの長編アニメのベスト1である。で、「イリュージョニスト」だが、「ベルヴィル・ランデブー」の作者の新作らしいという程度の認識で見に行った。'100 Animated Feature Films'に取り上げられているのは見たが、その評価文は読まなかった。だから、ジャック・タチの遺作の脚本のアニメ化だとはまったく前知識として持っておらず、オープニング・タイトルでタチの名前を見つけてうれしくなった。さらに、主人公の手品師が'ぼくの伯父さん'そのもの!さらには本作の舞台のエジンバラの映画館に「ぼくの伯父さん」が上映されている。フライシャーのような漫画映画好きな人間はスラプスティック・コメディのファンでもある。ショメも例外ではなかったのだなあ、と思う。

 エジンバラの街で、手品師を御伽噺に出てくるような魔術師と勘違いし手品師についてきた娘が、ショーウインドウの中に素敵な服を見つける。この服のデザインや色合いが、ディズニーの「不思議の国のアリス」のアリスの服に似ている。娘の名前はアリス。ショメはディズニー・ファンでもあったのだ、と思う。靴が白いハイヒールへとグレードアップしていくのも、なんとなく「シンデレラ」を思い出させた。でも、ショメはディズニーよりはフライシャー好きなのだと感じさせたのは、ラストで、エジンバラの街の全体をカメラが引いていって見せるところ。「バッタ君町に行く」の冒頭で宇宙からニューヨークの街にカメラが入っていくシーンの逆である。フライシャーはミニチュアでこのシーンを撮って立体感を出したが、ショメはCGで立体感を出した。ここに21世紀らしさがある。

 ところで、私にとってこの作品のエジンバラというスコットランドの由緒ある都市は、小学生時代にテレビの「ディズニーランド」で見たエジンバラの忠犬の話(アニメでなく実写ドラマ)で記憶されている街である(中学の時の英語の教科書にもこの話が出てきたので余計に記憶に残った)。ショメにもこのディズニー作品のことが頭にあったのか?夏休みにフライシャーの「ポパイ」のDVDを見終わったときに、同時期のディズニー作品を比較のために見てみたくなった。やはり、ディズニーは好むと好まざるとにかかわず、アニメの座標軸を定めるものとして心に留めておかねばならないのだ。

(蛇足)
 「イリュージョニスト」には、シトロエン2CVを初めとする古い(1950年代後半がこの作品の舞台)フランス車やイギリス車がたくさん出てくる。「カーズ2」と同様に車好きならさらに楽しめる。

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