ガンマスカウト
数年前にとある予算が付いて、生徒実験用に5台ほど購入たのが写真のガンマスカウトというドイツ製の簡易放射線測定器である。福島の原発事故後、使っているものである。とはいっても、この器械、工場出荷時から電源が入りっぱなしで(つまり、電源スイッチが付いていない)内臓電池が切れたら終わりというものである(電池交換のためのふたもない)。使うという場合、単に、しまってある棚から出して箱を開いて取り出せば、数値が表示されている。そこで、測定したい場所において、数値の表示を見ればよい。今までは年に一回、物理Ⅱの授業のときに取り出して生徒に見せているだけであった。そのときに得られた数値の平均はほぼ0.10μSv/hであった。原発事故後も、この平均値は変わらない。日本、あるいは、静岡県では空間線量0.05μSv/hと調べると出てくるが、この値に近い数値が表示されることは余りない。私が確認した数値の範囲は0~0.28μSv/hである(ただし、0を見たのはたった1回しかない)。また、このガンマスカウトは前日24時間の平均がボタン一押しで見れるが、だいたい0.10~0.12μSv/hである。
この測定器以前に、アメリカ製の簡易測定器を1台購入したことがあったのだが、どうもその測定値の確からしさに不安を感じて、次の年には3倍の値段のもう少し精度の高い国産のガイガー・カウンターを購入した。比べてみたり、色々調べてみて、簡易型のものは、0.1μSv/h程度の放射線の強さでは、測定値の有効数字は1桁と考える(補足:0.06と0.12では2倍違う数値であるが、下1桁を四捨五入するとどちらも0.1になるので、2倍違うと考えずに同じくらいであると見る)方がいいということがわかった。だから、授業中に生徒に説明するときには、0.1μSv/hの桁での値の大小は余り気にする必要はなく、1桁以上大きい数値が出たら、浜岡の原発あたりで何かあったと考えて、放射性物質を避けることを考えなければならない、と言っていた。
放射線測定というのは、放射線のでかたは完全に確率現象なので、たった1回だけの測定では、かなり大きい(または、小さい)数値が出ることがある。だから、最低でも5回は測定しなければならない。ガンマスカウトでは、しばらく放置すると、表示する数値が変わっていくので、これをメモしておいて5~10個の数値を得て平均して考えるべきである。たとえば、0.07μSv/hと表示された後に0.25μSv/hと突然3倍以上の値に変わったことも何度かある。また、測定器が違うと、同じところで測定してもまったく違う値がでる。だから、放射線測定については、どのような測定器でどのように計測して何回測定の平均値であるとわかっていないと、その値を比べるのは難しい。同じ測定器で継続して得られた値については、その変化は信頼できるので、ガンマスカウトのような簡易放射線測定器であっても意味がある。秋葉原あたりで簡易放射線測定器が売れているようだが、取扱説明書にこのような注意事項が書かれていないと、自分で測ってみてインターネット等で発表されている数値と違って大きい値が表示された場合、かえって不安と不信を増大させる可能性があるので心配だ。
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