真赤な太陽がいっぱい
J.G.バラードの「ヴァーミリオンサンズ」(ハヤカワ文庫)を読み終えた。ヴァーミリオンサンズという架空のリゾート地を舞台にした連作短編集である。この中のいくつかの作品は別な短編集で読んだはずなのだが、まるで記憶に残っていなくて、すべてが今回初めて読んだようなものだ。翻訳はほとんどが浅倉久志である。だから、久しぶりにバラードを読んだというより、久しぶりに浅倉久志の訳文を読んだなあ、という気持ちが先に来た。どの作品も謎の美女に翻弄される男(ただし、翻弄のされ方は色香に惑わされて、というより、主に仕事上の関係である)を描いており、描写は絵画的である。音楽の要素も重要で、映画にしたら面白そう。バラードって本質的にワン・アイディアで勝負する作家な気がする。
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