勝とう、はやぶさ先頭だい
昨年地球に帰還して話題となった小惑星探査機はやぶさに関する本を2冊読んだ。吉田武『はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語』(幻冬舎新書)と川口淳一郎『小惑星探査機はやぶさ 「玉手箱」は開かれた』(中公新書)である。前者は、はやぶさが復活して地球に戻る軌道に乗った時(2006年)に書かれて出版されたもので、そのときにこのような本が出されていることにまったく気づいていなかった。どちらの本の著者も私と同世代の研究者であり、そうそう、そうだったんだよなあ、と思える部分も多い。特に、吉田武が「宇宙戦艦ヤマト」を意識してある表現をしているところなど。
吉田武は、はやぶさのプロジェクトとは無関係な理工学の研究者として、はやぶさを生み出した「宇宙研」(現在はJAXAに統合されてしまっているが、生産技術研究所の糸川英夫が組織したAVSA研究班に始まる東大の宇宙科学研究所のこと)が理学と工学を融合させた、ものづくりを通しての理想的な教育研究機関であったということを強調して書いている。朝永振一郎が、戦前の理化学研究所の仁科芳雄研究室が、理想的な物理学の研究室として回想されている文章を読んだときのような読後感だ。科学・技術研究では1番でなければ意味がないことも強調されている。某議員がこの本を出たときに読んでいたのなら「2番ではだめですか?」という名セリフもでなかったかもしれない。
プロジェクトマネージャーでテレビで顔なじみになった川口淳一郎の本の方は、写真などの図版が多く使われていて、はやぶさプロジェクト自体の内容がわかりやすく伝わるように工夫されている。その中でも私が一番気に入ったのは、はやぶさの軌道がパラパラ・マンガになっていることだ。
ところで、はやぶさを漢字で書くと隼である。隼といえば、卓球の水谷隼である。昨年末には日本人で初めてプロツアーのグランドファイナルで優勝し、先週は全日本選手権で5年連続優勝という新記録を作った。それぞれの決勝戦の様子をテレビで見たが、これなら、世界選手権やオリンピックで中国選手を倒して優勝するのも夢ではない。全日本のテレビ中継での優勝インタビューで不遜とも思える発言をしたが、これは才能ある若手たちに対する、本気で中国に勝ってメダルを取る気はあるのか、俺にはあるぞ、という檄であった気がする。
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