円高がさらに進行したので、気になるアニメ洋書を買ってみた。久しぶりのことである。久しぶりになってしまったのは、理由があって、それは、amazon.co.jpからの情報メールで何冊かの洋書を注文していたのだが、その多くが、かなり待たされた挙句、最終的に残念ながら入手できませんでした、ご注文をキャンセルさせていただきます、となってしまったからだ。さらに、その中には予約注文受付という案内がきたので注文したものもあったので、当分、amazonには頼むか! という気分になってしまったからでもある。また、日本でもアメリカでもアニメーション研究本の出版が相次いでおり、昔のように、たまに出版されるものを順次買っていく、というわけにはいかなくなっている。アニメ研究本も選んで買う時代になっているのである。
☆HOLLYWOOD FLATLANDS animation,critical theory and the avan-garde, ESTHER LESLIE ,Verso,2002
だいぶ前にこの本のタイトルをどこかで見つけ気になっていたが、ここまで買わないできてしまった本である。アニメーション学会の研究会でこの本をテキストにした会を行うという案内が来て、やっぱり買っておくべき本だったかと思い、入手した。表紙写真はミッキー・マウスとセルゲイ・エイゼンシュタインの握手写真である。この本の最大の特徴は、これ以前に出た本ではまったく別に扱われていたディズニーやフライシャーなどの漫画映画(カートゥーン)と、ワルター・ルットマンやオスカー・フィッシンガーなどの実験映画(アヴァンギャルド映画)といった方が良いアニメーション作品との接点を取り扱っていることである。 面白かったのは著者(ロンドン在住の大学の先生で、英語と人間性について教えているという)の謝辞で、両親に対して、子供時代に「トムとジェリー」「原始家族」「クマゴロー」「弱虫クルッパー」「どら猫大将」、そして、ディズニーの長編アニメの数々を見るのを許してくれたことをあげていたことである。
☆THE ANIMATED FILM ENCYCLOPEDIA A Complete Guide to American Shorts,Features,and Sequences,1900-1979 1,2 ,GRAHAM WEBB,McFarland & Company,2006
これはほんのタイトルどおり「辞書」である。作品名がアルファベット順に並べられて簡単に解説されている。原題はわかったけど、誰の作品だ? とか、何年の作品だったっけ、などということを調べるには重宝しそう。
☆THE ANIMATOR'S SURVIVAL KIT EXPANDED EDITION,RICHARD WILLIAMS,Faber and Faber,2009
これの本の初出版は2001年で日本語版も出ている。今年のアニメ総会でこの本の内容が話題として出てきて、欲しくなってしまい、リチャード・ウィリアムスの原文も読みたいからと(さらには、日本語版の半額で手に入るので)注文したものである。「クリスマス・キャロル」(プロデューサーはチャック・ジョーンズ)のアカデミー賞授賞式後に、ビル・メレンデスとウォード・キンボールに、アニメを何だと思ってるんだ、こんなにリアルにするなんて間違ってる、と詰め寄られた、というエピソードが、本書の最後の方の「『リアリズム』についての大討論」という中に紹介されているのが、実に面白い。
☆BASIC ANIMATION 04 stop-motion,Barry Purves,AVA Publishing SA,2010
この本も先日のアニメ総会で紹介された、バリー・パーヴスの最新の著作。前著と大きく違うのは、取り上げられている作品の図版がきちんとどのページにも1枚以上使われていること。取り上げられているのはメリエスから最新作まで、特に、この10年間くらいの作品のスチールがたくさんあり、新作に疎くなっている身にはありがたい。残念なのは、先日亡くなった川本喜八郎さんの作品が取り上げられてないこと。人形アニメが中心の話題だけれども、キャロライン・リーフなどの砂絵アニメなどにもページが割かれている。ところどころに、本文とは別のコラムがあって見ておくべき作品などが紹介されている。その中に、チャーリー・ボワーズの「イッツ・ア・バード」It's a Bird があり、やっぱりこの作品を見て驚いてるんだね、とうれしくなった。
☆THE LOONEY TUNES TREASURY,ANDREW FARAGO,An Insight Edition Books,2010
この本は予約注文でだいぶ前に頼んだのが、やっと届いたものである。この本もキャンセルになったら、amazom.co.jp.ではもう買わない、という決断をしたかもしれない。この本は、研究書というより、仕掛け絵本である。ルーニーチューンの代表的キャラクターたちが、自分自身について、作品について、製作スタッフについて語るという設定である。キャラクターの視点からルーニーチューンを語るというのは、実に面白い。バッグスが語り、ダフィが語り、エルマーが語る。コヨーテは、やはり、自分を大天才だと語りつつ、その脇のロードランナーは「ビッビッ~」としか言わないのが、実にいい。仕掛け絵本の仕掛けの一部を紹介すると、
ダフィのページには、シールがある(もったいなくって、貼れない)。
コヨーテとロードランナーのページには、あのアクメ社のカタログがある。
その他には、ポーキーのページにはルーニーチューンのコミックブックの縮小コピーがあるなどなど。実に楽しい本である。
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