「ウラニウム戦争 核開発を競った科学者たち」アミール・D・アクゼル(青土社)
いわゆるマンハッタン計画に関する本である。この手の本のベストはリチャード・ローズの「原子爆弾の誕生」だと思うのだが、ローズの本では取り上げようのなかった2005年に機密解除された第二次世界大戦中の日本の外交上の暗号通信文の解読・翻訳プロジェクトの資料を取り上げて、日本に原爆を落とす必要性はなかった、ということを明らかにしていく部分が、目新しい。それ以外については、ローズの本を読んでいるなら、読み飛ばしてもいい。科学的な内容の解説部分でところどころでおかしな表現があるが、原著者は数学で学位をとったサイエンスライターなので原著が間違っているとは思えないから、翻訳の問題だろう。訳者が二人なので片方は科学系の人かなと思って読んだのだが、この二人の経歴はどこにも書かれていない。
この本に先立って常石敬一の「原発とプルトニウム」(PHPサイエンス・ワールド新書)を読んだが、「核開発を競った科学者たち」の様子は、常石の本の方が現場の発見の様子をよく伝えている。ローズの本は分厚い上下2巻本で現在では手に入りにくい本なので、核エネルギーの解放に関係した科学者たちのことを知りたければ、「原発とプルトニウム」を薦めます。
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