グリッドは無慈悲な宇宙の女王
妻が橋本省二・著「質量はどのように生まれるのか」というブルーバックスを図書館から借りてきて読んでいるのだが、自分は、同じテーマを、ノーベル賞学者フランク・ウィルチェクが、ファインマンを意識したような独特の表現で解説している「物質のすべては光」(吉田三知世・訳 早川書房)を読んでいる。夫婦で同じテーマの本を同時期に読むというのはなんという偶然なのだ。(どちらも最新の量子色力学の成果の解説本である。)
私たちの宇宙は超伝導状態なのだ、ということが現在の物理学における質量の起源のポイントなのだが、この素粒子論に超伝導の考えを最初に持ち込んだのは、南部陽一郎なのだが、なぜか、ウィルチェックの本には、南部の名前は出てこない。量子色力学への第1歩を踏み出したのは、湯川秀樹なのであるが、湯川の名前も出てこない。もっとも、オリジナルの論文を書いた科学者の名前は極力出さずに書かれている本なので、日本人を意識的に取り上げなかった、ということではないようだ。(この分野での日本人物理学者の活躍は橋本省二の本を読めばよくわかる。)
ウィルチェックのこの本に特徴的なのは、4力(重力、電磁力、強い力、弱い力)を統一する理論の実体的イメージとして、「グリッド」という提案をしていることである。「マトリックス」という言葉も使うことを検討したようなのだが、映画「マトリックス」のイメージを一般人が持つのを避けたらしい。「グリッド」は「格子」と訳せるが、格子ゲージ理論という計算機をフルに使う理論からの連想もあるようだ。(ただし、格子ゲージ理論の「格子」は「ラティス」である。)
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