「破られた対称性 素粒子と宇宙の法則」佐藤文隆 PHPサイエンス・ワールド新書
昨年秋に新登場したPHP研究所が出している新書のシリーズの7冊目である。出たばかりに購入し、ほぼすぐに読み始めたのだが、第2章が数式も使用して素粒子場の量子力学を説明しており、縦書きの新書にしては歯ごたえのある解説を読み進めるのに時間が掛かってしまったのである。自分が物理を大学時代にやっていたから横書きのコラムとして読み飛ばしても良いように書かれている部分まできちんと読むと言うことにしてしまったから、時間が掛かったわけで、この部分に深入りせずに読まずにすましても良いようにはなっている。
この本自体は、2008年のノーベル賞の3人、南部陽一郎、益川敏英、小林誠の理論を湯川秀樹の「中間子論」に始まる日本の素粒子論の流れの中で解説したものである。益川敏英と同世代で、小林・益川理論と同時期に一般相対性原理の「裸の特異点」を持つ解を見つけて世界中で注目され、さらには、一般紙でもそれが取り上げられて、当時高校生で小林・益川は知らない私も名前を覚えた佐藤文隆という適任者が書いているからこその裏話的内容もある。
大学時代に物理をやっていて、なんだか自分がやりたいと思った素粒子論という物理の本流と思える分野に魅力が何となくないように思えたのは、「爽快感の伴わない長期の骨の折れる苦渋の消化試合」が始まった時期に相当していたからであると本書を読んで妙に納得したのであった。
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