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2010/02/18

「世界は分けてもわからない」福岡伸一 講談社現代新書

 イームズの「パワーズ・オブ・テン」(管理職に危険物と見なされた、もらいうけた16mmフィルムの中にこれがあって、結局、このフィルムが欲しくて他のたくさんのフィルムももらったようなものだ)を話題の導入に使っていたことが一番の理由で買いこんだ本である。タイトルだけを見て、世界を分けていったからこそ、分けてもわからないということがわかってきたわけで、そのあたりどう考えているのだろうと読み進んでいったら、エピローグに「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである。」とあり、さらに、後書きとおぼしい最後の文章に「分けてもわからないと知りつつ、今日も私は世界を分けようとしている。それは世界を認識する契機がその往還にしかないからである。」と、至極科学者として当然のことを書いている。このホーリズム一辺倒ではない態度に共感するのだが、本のタイトルや帯の文章を見ると、とてもそう思えないところが、出版社の売らんかなという意図をそこはかとなく感じてしまうのである。

 消化の本当の意義は前の持ち主の情報を解体するためだという、シュレーディンガーが生物は負のエントロピーを食べているといったことを連想させる文章、また、スペクターという大学院生の真相不明のねつ造実験に関するスリリングな話には、はっとさせられた。

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