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2009/09/13

洋書の秋

The Colored Cartoon BLACK REPRESENTATION IN AMERICAN ANIMATED SHORT FILMS,1907-1954 Christopher P. Lehman(2007;University of Massachusetts Press)
Colored
 サブタイトルにあるように、カートゥーンにおいて黒人がどのように描かれてきたかについての研究書である。アマゾンで見つけて、図版がたくさんあるのを期待したのだが、表紙以外には一切無い。これでは「黒炭姫と七人の小人」Coal Black an de Sebben Dwarfsなどを見た記憶から、こんなに凄い表現があったと想像して本文を読むしかないって思ったら、本文が始まるページの前に、これこれこういうインターネットのサイトでこの本で取り上げている黒人キャラが見られるという読者への注釈があった。我々日本人には分かり難い黒人なまりの英語にも言及していて、「トムとジェリー」の足だけおばさんのセリフはテレビ放映では普通の英語に直されているそうだ。


UNFILTERED THE COMPLETE RALPH BAKSHI The Force Behind Fritz the Cat,Mighty Mouse,Cool World, and Heavy Traffic Jon M.Gibson & Chris McDonnell(2008;Universe Publishing)
Bakshi
ラルフ・バクシ本である。巻頭言をクエンティン・タランティーノが書いている。全てのページに図版がある264ページのハードカバーの立派な本である。円高のおかげもあって3500円ちょっとで手に入った、多少なりともバクシに興味があるならお買い得本である。タイトルが「フィルターをかけずに」ということだから、この本もバクシ特有の危ない表現の図版が多いのではと思ったが、子どもに見せられない、というものはほとんどない。サブタイトルに「クールワールド」の文字があるが、他の作品と比べると本文中ではほとんど触れられていないに等しい。これはちょっと残念。巻末のフィルモグラフィで、バクシのアニメーターとしてのデビューが「ハシモトさん」であることを初めて知った。最初からレイシズムに関係していたのね。


ESTONIAN ANIMATION BETWEEN GENIUS & UTTER ILLITERACY CHRIS ROBINSON(2006;John Libbey Publishing)
Estnia
 エストニアのアニメといったら、プリート・パルンである。日本で1番最初にパルンに注目したのは自分であるという自負がある。1987年2月22日に今は無きスタジオ200でソ連アニメの上映会で「つくり話」(英語タイトルはTime Out、1984年作。作者名はピャルンというロシア語発音による日本語表記で紹介されていた。日本発売DVDでのタイトルは「おとぎ話」)を見て気に入り、その年の10月のアニメ総会の自己紹介の、この1年間に見たアニメで1番気に入っているものに、「つくり話」と書いたのであった。このとき、森卓也氏は「闇のまぼろし」(ポヤール&ドルーアン)、おかだえみこ氏は「レオとフレッド-2人のコンサート」(パル・トート)、現在多摩美のK山先生は「怪盗ジゴマ・音楽篇」(和田誠)と答えている。参加者の多くが挙げていたのが「天空の城ラピュタ」であった。第2回の広島アニメフェスで特集上映があったドリエセンの作品を上げている人も何人かいた。アニメ総会に顔を出すような名うてのアニメーション・ファンの間で、パルンの名前が上がるのを聞くようになったのは、第3回の広島アニメフェスあたりから、「草上の朝食」が公開された後だったと記憶する。
 そんなわけで、パルンについてどのくらい書かれているかが、私のこの本への興味であったのだが、なんと、出会いの作品「つくり話」はフィルモグラフィに作品名があるだけで、本文中では触れられず図版すらない。「草上の朝食」が話題の中心になるのは当然だとしても、「つくり話」についての記述がないのは、個人的に悲しい。
 

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2009/09/05

別冊宝島「ファンタジー・アニメの世界」がすごい!

 コンビニに寄ったら、宝島社の「バッグス・バニーDVD-BOX」と「ファンタジー・アニメの世界」というタイトルのディズニーの「ピノキオ」「ピーターパン」「ふしぎの国のアリス」DVD3枚組付きの別冊宝島が出ていた。DVDに収録されているディズニー長編3作よりも、「別冊宝島」を名乗っているので冊子の部分(「みんな大好き!アメリカのクラシック・カートゥーン特集」と銘打たれている)があって、この記事の内容が、感心するほどマニアックなものがある反面、よく分かってない人間がネットで検索してコピペしてレポートを書くと起こりがちな、とんでもない勘違いをしてます記事とが同居しているのが面白くて、両方買ってしまった。カートゥーンについてのこれだけのトンデモ本は有馬哲夫の「ディズニーとライバルたち」以来だ。「トムとジェリー」がフライシャー兄弟の製作だと書いてあるかと思うと、最初はテックス・アヴェリーが製作を担当していて後にハンナ&バーベラに代わって大ヒットした、とも別の所(とはいっても直ぐそば)に書いてある。同じページの中に矛盾する記述があるのに、編集者の誰も気が付かなかったというのが、実に可笑しい。細かく読んでいけばもっと楽しいツッコミ所は見つかるだろう。

 「バッグス・バニーDVD-BOX」は、すでに「ルーニーチューンDVD-BOX」が出ているので、どちらかといえば、落ち穂拾い的な作品収録である。「バッグス・バニーとゆかいな仲間たち」が80年代の初めに静岡第一テレビで放映されたときにビデオに録画して、少ない資料を基に原題つきとめ作業をしていた時に、どちらなんだろうと迷ったゴリラやペンギンと共演する作品が2本づつ入っているのが、個人的に感慨深い。

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