「クォーク 第2版」南部陽一郎(講談社ブルーバックス)
初版は出た時にすぐに読み、自分がいい加減にしか勉強していなかった大学4年次のゼミでやったことの良い復習になった本だったし、授業中に生徒達に話す物理の先端の話のネタ本になった。第2版が出ていたことは知っていたが、高校時代に読み、物理を大学で専攻するのを最終決断させた「相対論的宇宙論」(佐藤文隆、松田卓也著)のように新版が出るとすぐに買うということにはならなかった。出会った時期が違っていたら、つまり、もう少し若いときにこの本を読んでいたら、新版もすぐに買っただろう。今回、ノーベル賞受賞で増刷されたのを期に買って読み始めた。
やっぱり、凄い本である。これに比べられる物理の一般向けの本(新書)は朝永振一郎の遺作「物理学とは何だろうか」(岩波新書)くらいだろう。もしかしたら、南部陽一郎は自分の師である朝永が生き続けていたのなら書いたかもしれない「素粒子とは何だろうか」を書こうとしたのかもしれない。また、南部をこの道に引き入れた湯川秀樹への尊敬と憧れが随所に感じられ、湯川・朝永以後の日本の素粒子論の人脈もわかるように書かれているのは、日本の若い世代への南部陽一郎からのエールであろう。
何が凄いかというと、色々新奇な考え方が出てきたうちのいくつかだけが生き残ったり、一度は忘れられた論文が息を吹き返したり、という紆余曲折があった湯川の中間子論に始まる素粒子論をきちんとまとめ、ほとんど数式を使わずに説明してあることだ。また、大抵の一般向け解説書では名前が省略されてしまうような共同研究者や同時期に同じことを発表した研究者の名前をきちんと挙げてあるのも素晴らしい。今回一緒にノーベル賞を受賞した小林・益川理論も、今回ノーベル賞に至らなかったためにイタリア人達が騒いだカビボの理論とともにきちんと説明している。
大学の頃の自分の生活は、ゼミの最低限の予習以外は、アニメ同好会の活動最優先でアニメを作るか見るかしていた状態(佐藤文隆よりも大塚康生!)で、アイソスピンって何だ、擬スカラー、ベクトル中間子って何だ、という状態だったし、それ以前に、量子力学の基本的な問題だってきちんと解いていなかった。そんわけだから、クォーク理論の勉強していても、これから何かアニメができないかなあということばかり考えていた。それで、クォークのカラー荷のイメージからアニメを作ろうとしたことがあったが、うまくアイディアが発展しなかったので止めてしまった。「量子戦隊クォークマン」みたいなのを考えたこともあった。プロトン合体とか、ニュートロン合体とか、って考えていったら、それは何となく面白かったが、クォーク6種類×カラー3種で18人、反粒子を男女でやることにして計36人出てくることになり、大変なことになってしまうので止めた。
クォークという名前の出自となった「フィネガンズ・ウエイク」も大分前から読んでいるのだが、やっと訳本(ハードカバー)1巻目の最後の方まで来たが、いつになったらクォークの一節にたどり着くのか分からない。
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