クゥの音も出ない
今から30年ほど前(宮崎駿が監督デビューする前だ)、「太陽の王子ホルスの大冒険」と「長靴をはいた猫」のどちらを日本の長編劇場用アニメのナンバー1にするかというような話を望月信夫さんなどとしたときがあった。そのときに、望月さんが、「ホルス」はアニメには不得手な心理描写をしていてそのような心理描写は実写映画にかなうはずがなくそんなことをせずにアニメにしかできないギャグやアクションに徹した「長靴をはいた猫」がナンバー1なのさ、というようなことを言った。。原恵一監督の「河童のクゥと夏休み」を見て、頭に浮かんできたのは、なぜか、この望月さんの言葉なのである。それは、「河童のクゥと夏休み」は、実写映画にはできない心理描写とアクションとギャグが見事に調和した作品になっていたからである。昨年見た「時をかける少女」もそうであったが、生身の肉体を持つ俳優ではできない感情のエキスを人間の心理のコアを純な形で表現できているのである。このような表現は、日本のアニメがもっとも世界に先んじている部分であるように思う。
なかなか夏休みにならないわが身にとって、沼津では朝1回しか上映してくれないこの作品を見るのは難しかったが、やっと時間を作ってみることができたのであった。午前中は丸つぶれになる長い作品だが、半世紀以上生きてきたおっさんにも楽しめる作品だった。おっさんといえば、この映画では、犬のオッサンが一番気に入った。
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