1941分かれ道
クリストファー・プリーストの「双生児」を読み終えた。「逆転世界」を思わせる最終ページのどんでん返し。しかし、これは、「逆転世界」やディック作品のように単純ではない。「奇術師」と似た構造ではあるが、謎解きだけの物語ではない。それはある意味どうでもよいことだ。アニメ版「時をかける少女」を歴史上の大分岐点でやっているだけと言ってしまうこともできる。チャーチルやルドルフ・ヘスの事を良く知っている歴史好きには、いかにもありそうなことだと思わせる筆力の確かさと凄さ。できのいいアヴァンギャルド映画を見たような読後感もある。ビュトールの「時間割」やダレルの「アレクサンドリア四重奏」も連想させる。物語を物語るということはどういうことなのかを意識せずには、小説を書けない時代の小説である。したがって、好きな人間(たとえば私)にはたまらないが一般には余り受け入れられるとは思えない小説だ。オールディスの「ブラザース・オブ・ザ・ヘッド」(おっと、これも双子の物語だった!)も映画化されたお陰で翻訳出版されたが、この「双生児」も「奇術師」の映画化のお陰で出版されたと考えるべきで、「プレステージ」様々である。
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コメント
本国でもプリーストの扱いは、本人が気合を入れて書けば書くほど売れないという状況になっているようです。リサ・タトルのハートをかっさらった時が頂点だったのかな(笑)。
一般にはあまり受け入れられるとは思えない小説でも、好きな人間向けに出版できる環境ができていればいいですよね。
そのあたり商才のアイデアも必要。ただし、一般向けに妥協するのは不要。「奇術師」も文庫で5版を重ねていますから、日本ではまだまだ、マニア向け?の小説でも売れる余地があるように思います。
投稿: くーべ | 2007/06/24 17:49