レムの「白鯨」
スタニスワフ・レムの「金星応答なし」完訳版を読んでいないことに気付き、「ソラリス」(新訳版)を読もうと思っていたのを止めて、このレムの処女作を先に読み終えた。早川SFシリーズ版(抄訳)で読んだのは遙か昔だし、訳されていなかった部分も多いので、まったく初めて読んだのと同じである。その後のレムの諸作品のアイディアがいくつも使われているということよりも、ハーマン・メルビルの「白鯨」のような構成になっているのが面白く感じられた。「白鯨」において当時の捕鯨の様子が詳細に説明されているのと同様に、金星に行くことについての、特に、ロケットと航行を制御するコンピュータの説明にかなりの分量が尽くされている。その後、ロケットのパイロットの日記の形式で、金星での出来事が描写されるのも「白鯨」に似ている。誰だったか忘れたが、「白鯨」をSFの源流の一つにあげている評論家だったか作家がいたけれど、レムも評論では「白鯨」に言及しているようだ。
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