箱根3D宇宙恐竜ワールド
さて、先日の箱根ドライブで発見してしまったトンデモ施設の話。乙女峠(御殿場)側から、仙石原の湿性花園方面に右折する交差点に、大きく「3D宇宙恐竜ワールド・メルヘン水族館」という看板が目に付いた。かなり前に来たときから気になってはいたのだが、今まで入ったことがなかった。確か、昔ポルシェ博物館があったあたりにできた施設だったという記憶があった。ところが、その場所では、リゾート・マンションの建設工事が行われていて、それらしき施設はない(ネットで調べると、つい最近までこの場所にあったことは確かだ)。それで、妻の希望の湿性花園に行く。この看板が気になった娘が、入り口のパンフレット置き場から、「3D宇宙恐竜ワールド・メルヘン水族館」の割引券を探して、もらってきた。その割引券を見ると、場所が、先ほど通過した交差点より乙女峠寄りの金時山登山道入り口近くになっている。そういえば、先程箱根スカイラインから降りてきたときに、右手にのぼりがあったような気がする。ということで、再び、道を戻って、寄ってみることにした。
さてさて、これからが驚きの連続である。まず、駐車場への入り口部分は狭く、あったと思った瞬間に通り過ぎてしまい、隣の土産物屋の駐車場でUターン。入ってみると広い駐車場には、車は2台。だが、よくよく見ると、1台はナンバープレートがはずされ、さびも浮いている放置車両だ。月曜日とはいえ、夏休みである。こんなに訪れる人がいないのは怪しい。さあ、入り口はと捜すと、茶色の煉瓦壁に見せかけた、ベニア板の書き割りの高い塀の中央に暗幕で遮られた怪しい入り口がある。外からは中の様子は全く見えず、テレビか何かでこの施設が紹介されたときの番組らしい音声だけが、大きく響いてくる。実に怪しい。中に入ると、受付のお兄さん(ちょっとかっこいい)がいる。なにか、お金を取るのが申し訳なさそうに料金を言い、入場券を出し、施設の簡単な説明をして、偏光板式の3Dメガネを渡してくれる。あとで、彼の態度は実に誠実な態度であったと思ったくらいであるが、このときには、まだ、何かしらまともな施設という意味での期待があった。
受付の左手側に3Dシアターがあり、中に入る。我が娘より小さい男の子連れの家族がいるだけ。すでに、花火の立体映像が始まっている。この花火、スターウォーズの爆発シーンみたいなのが同じパターンで何回となく繰り返されるだけ。途中で、虫が飛んできたような気がする。飽き始めたところで終わったので、席を立とうとすると、次の宇宙旅行物が始まった。これも、ただただ隕石が飛んでくるだけ。ついで、海底探検。これだけは実写映像だった。この立体画像はなかなか良かった。最後に、火山爆発から恐竜登場。トリケラトプスが突進してくるが、この走りのアニメートは下手であり迫力がない。ティラノサウルスが2匹出てきて、「恐竜百万年」のような戦いをするのかと思ったら、あっけなく、弱い方が退散して終わり。まだ何かあるのかと思ったら、最初の花火の映像に戻ったので、退出する。
次の展示物である万華鏡の部屋に入る。先程の小学校低学年くらいの男の子が、4面鏡のコーナーに入って、えらく受けている笑い声がする。この男の子は、きっとここに来て良かったに違いない。いろいろなタイプの万華鏡があるが、決してできの良い物ではなく、覗いて、その美しさと不思議さに心を奪われるような物ではない。なんか、ちゃちなのである。しかし、それでも、ここには4面鏡という、確かに驚き楽しくなるコーナーがあるので、許せる。我が家族の最大の驚きは、その後にやってきた。
おみやげコーナーで、怪しいハングル表示の恐竜のおもちゃを発見する(写真1参照)。いったいどこから仕入れたのだろう。ディズニー・キャラクターの色あせたぬいぐるみが、たくさん置かれているが、どう見ても、この状態では購買意欲がわかない。おみやげコーナーの先に、中庭への出入り口があり、そのまま外に出てみた。ここで、本日最大の驚きに出会った(写真2~参照)。なんだか不機嫌気味だった妻も、ここに出て、そのとんでもなさに、機嫌が良くなる(どういうことだ?!)。伊豆アンディランドを上回る、人が来ない末期症状の観光施設そのものである。色あせたスーパーボール。不気味なほどに整然と並んでいる恐竜の射的と輪投げの的。黒い鯉が泳いでいるだけの釣り堀。せせこましいパター・ゴルフ場。この場の管理者は誰もおらず(受付のお兄さんひとりしかいないようだった)、その気になれば、すべてただでやってしまえるし、並んでいる物もいただき放題な状態だが、とてもそんな気にはならない。そして、その先に「3D宇宙恐竜ワールド」と書かれた掘っ建て小屋がある。
そこに入ってみると、再び、3Dシアターであった。足下は暗く、何かに躓いたと思ったら、座ってみるための椅子であった。スクリーンは何面かあり、それぞれに、宇宙やら恐竜やら、海やらの立体映像が映し出されていた。「メルヘン水族館」と思われる映像は、立体ではなく、メガネを通してみると右目でしか映像が見られない。左目用の画像が投影されていないのである。次のスクリーンでは、左右の画像のずれが正しく投影されておらず、メガネを通してみても、像が二重に見えるだけ、というお粗末さ。その先のスクリーンには、ザトウクジラのブリーチングのCGが見られたが、小笠原で本物を見た我々には、全くいい加減なCGで、笑ってしまう。さらに、その先へ来ると、先程見た恐竜CGと基本的には全く同じものが投影されている。もう、すべてをつきあう気にもなれなくなり、出口へ。出口の天井を見ると、プレハブ小屋を支える鉄骨がさびだらけであるのを発見する。こんなところで大地震にあって、下敷きになったのでは、いい笑い者になってしまう。
見せようとしている物について、料金に見合う内容であるとは言い難いが、このさびれ具合の凄さは、それを上回り、我が家族のように、金を返せという気持ちにはならずに満足してしまう程である。つぶれないうちに見に行ってみて!
(写真1:ハングルのパッケージのおもちゃ)
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コメント
WILE.Eさん、savoyと申します。
私もよく箱根に行くのですが、この3Dワールドには
怖さ半分で通り過ぎていました。
やはり恐れていた通りの内容のようです。
3Dワールドに訪問することはもう無いと思いますが、
レポートは大変楽しく読ませてもらいました。
投稿: savoy | 2005/08/04 22:37
savoyさん、こんにちは。この施設が、仙石原の中心部にあった時には、通り過ぎているだけでしたが、たまたま、今回、娘が興味を示したので入ってみました。外から中が何も見えなくしてあるというのが、まるで、お化け屋敷のようなところでした。レポート楽しんでいただいたようで、うれしく思います。
投稿: WILE.E | 2005/08/07 09:31
はじめまして。ここに行ったときの印象があまりにも強かったので、箱根やら恐竜やらで検索したらこのブログに行き着きました。この施設には一昨年の大学のサークルの合宿の自由行動のときにいったのですが、今でも鮮明にそのときのことを覚えています。友人の間では、やたらしょぼいCGや、丸太から何十匹もカブトムシが飛び立つシーンや、唯一まともだった万華鏡やら、今でも語り草になっています。そういう意味では、結構楽しい施設でしたね
投稿: 三等大学生 | 2008/03/05 20:05
昨日の「探偵! ナイトスクープ」でパラダイスとして取り上げられ、
桂小枝探偵がリポートしていましたよ。
いやあ、関東地方にこのようなパラダイスがあるとは思いませんでした。
その時の映像も凄かったですが、この記事の文章も凄かったです。
私もこの世も末感を味わってみたいです。
ぜひ訪れてみたいと思っているのですが、
私は免許を持っていません。
バスなどで訪れることは可能なのでしょうか。
投稿: ひろくん | 2009/03/07 09:18
昨日から、この項目へのアクセスが妙に多いと思ったら、テレビで取り上げられていたのですね。
この施設へのアクセスですが、JR御殿場駅から仙石原行きの路線バスが出ている(本数は余り多くはないと思います)ので、それに乗って、金時神社あたりのバス停で降りれば直ぐそばだと思います。小田原からのバスもあるように思いますが、そちらについては、良く知りません。
投稿: WILE.E | 2009/03/08 07:25
14年前の記事に今更コメントしようかどうかも迷ったのですが、今もこのブログを書かれてらしたのでコメントさせていただきます。
数ヶ月前、他界した祖父の家を建て替えるという事で洗いざらい荷物を捨てていたら見覚えのある恐竜の人形を発掘し、
(そういやこれ昔家族で行った箱根の3Dワールドの射的で取ったやつだw)とふと思い出して懐かしい気持ちになり何となくググッた結果、この記事に辿り着きました。
あまりにも精巧に記されたレポートで当時子供だった記憶が綺麗に思い出されました。
本文に書かれていた14年前に万華鏡のスポットではしゃいでたガキは恐らく私です、数回は行った記憶があるので(って言っていいぐらいお客さんいなかったですしね笑笑)
当時、6-7歳の僕からしてみればこの施設は夢のような場所で興奮させられるモノがあったんだと思いますが、家族から見ればまあこんなもんか程度の物だったんでしょうね
そんな現在、私を見てくれていた祖父は他界し、祖母は認知症で老人ホームに入り、私は恐竜とは全く別領域の文系大学に入ってそろそろ就職活動を始めようかとなっています。
自分としても家族としても次のステップに移ろうとしている岐路に立っていた時に、この記事に出会えたのは自分にとってとても幸運だったと思います。
自分の心の整理と読んだ感想を綴るはずがほぼ赤の他人の家族事情を話しただけのコメントになってしまいましたが、とても素晴らしい文章でした。
この素晴らしいブログ記事を書いてくださったことに感謝致します。
投稿: | 2019/09/18 00:32
返事が遅くなってすみません。14年前の記事にコメントが付くとは思ってもいませんでしたし、記事の中に書いたことに直接関係する方からだったというのも、大変な驚きでした。自分の文章が他の方の何かのお役に立つとは思って書いてはいなかったので、このブログはできる限り維持していこうという気持ちになりました。望外のお言葉、ありがとうございました。
投稿: WILE.E | 2019/09/22 14:49