2012/01/28

ヴァインランドはスプリングフィールドか

 トマス・ピンチョンの「ヴァインランド」を読み終えた。それも買ったまま放置してあった河出書房新社の世界文学全集版と昨年秋でた新潮社の全小説版を続けて。最初の翻訳が新潮社から1998年に出たときに読んでいる。そのときには余り感じなかったのだが、今回2つの版連続して読んで思ったのは、こりゃあ「シンプソンズ」だ、ということ。ピンチョン自身が「シンプソンズ」に声の出演しているんだけれど、それは2004年のシーズンだった。「ヴァインランド」の出版は1990年。一方「シンプソンズ」は1987年スタートし、30分の独立番組になったのは1989年。これは時間的に微妙な関係である。カートゥーン好きのピンチョンだからルーニーチューン的な要素は常にその作品中にあるので、たまたまマット・グローニングと発想が似てしまった、ということだけなのかもしれない。

 テオ・アンゲロプロス(新作撮影中に事故死したという訃報に驚いた。ピンチョンと同世代であったことにこの訃報で初めて気がついた)が「旅芸人の記録」(確か、河出書房新社の世界文学全集の編集人・池澤夏樹が字幕を担当していたと思う)で使った長回しのワンカット撮影の中で時間を一気に遡るという手法を思わせる1984年と60年代後半への突然の飛躍があって、ピンチョンは本当は映画監督になりたかったのでは、と思う。

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2012/01/22

ジョーンズの知られざる世界

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CHUCK JONES The Dream That Never Was
Edited by Dean Mullaney and Kurtis Findlay Designed by Lorraine Turner
IDW PUBLISJING 2011.11.
チャック・ジョーンズの実現しなかった夢'CRAWFORD'というテレビアニメシリーズ、そして、その新聞連載マンガ版(1978年に、ニューヨーク・デイリーニュース他に数ヶ月連載されただけで終わったもの)を収録した本。始めの方の解説部分に、「クリスマスキャロル」製作中のチャック・ジョーンズとリチャード・ウイリアムスの写真があるのがうれしい。'CRAWFORD'というシリーズは60年代後半に企画されたもので、その頃、ジョーンズはワーナーから独立して自身のスタジオを持って、MGMの「トムとジェリー」シリーズを作っていたわけだが、ジョーンズのこの時期について焦点をあてた本は今までなかった。自身がデザインしたキャラクターでの仕事なので、ジョーンズの本質を知るためには必見の本である。

READING THE RABBIT EXPLORATIONS IN WARNER BROS.ANIMATION
Edited by Kevin S. Sandler
RUTGERS UNIVERSITY PRESS 1998
90年代のワーナーに焦点を当てた論文集。この時代に、ワーナーはタイム・ワーナーという巨大な企業になっており、カートゥーンネットワークやハンナ・バーベラ・プロを経営するターナーも傘下におさめ、ディズニーに対抗できるアニメ・コンテンツを所有した企業になっていた。また、この頃、ワーナーのキャラクターとマイケル・ジョーダンが共演した映画「スペース・ジャム」が製作されヒットし、劇場用短編アニメの製作も20数年ぶりに再開され、世界各地にワーナースタジオストアを展開して、ディズニーストアに対抗する。ワーナーの作品そのものよりも、このようなディズニープロのマーチャンダイジング戦略を後追いするようなワーナーについて考察している論文が多く収録されている。望月信夫さんというより有馬哲夫さん向きの本である。

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2012/01/16

市民のための科学への道のりは遠い?

 今朝の新聞で「小澤の不等式」が実証されたことが大きく報道された。「小澤の不等式」というのはハイゼンベルグの不確定性原理を精緻化した式である(というのは、今日知った)。これは凄いことである。だから、新聞各社が大きく報道した。それは良いのだが、新聞によっては科学というか、科学の発展の仕方をきちんと理解していない表現が気になった。

 私が見たのは、朝日新聞、毎日新聞、静岡新聞の3紙。家で見た朝日新聞の記事は気にならなかった。職場に行って静岡新聞を見て、見出しに「量子力学の基本法則に”欠点”」とあり、「”欠点”」という表現にひかっかったのである。さらに毎日新聞を見たら「不確定性原理に欠陥」とあり、引用符もつかない「欠陥」には非常に違和感を感じた。

 「不確定性原理に欠陥」と書いたら「不確定性原理」が全否定されてしまうような印象を与えてしまう。「教科書の書き換え迫る」という言葉も毎日新聞では大きな活字で書かれている。アインシュタインの相対性原理が出てきてもニュートン力学は教科書から消えたわけではない。今回話題の不確定性原理が出てきても、やっぱり、ニュートン力学は消えなかった。だから、今回のこの発見が他の研究者により追認されて確立された法則と認められても、「ハイゼンベルグの不確定性原理」は教科書に残る。ハイゼンベルグが位置と運動量とを同時に確定することには、量子の世界では限界があると初めて言ったから、その延長の研究により「小澤の不等式」が生まれ、今、実証されたという報告がなされたのである。科学の世界では、新しい考え方が生まれたからといって、それまでの考え方が全否定されてしまうわけではない。新しい考え方は、それまで正しいとされてきた考え方の限界を明らかにして、古い考え方を包含してより広い世界に適用できるものになっていくのである。

 毎日新聞の見出しにはこのような科学の発展に対する理解が感じられない。朝日新聞は「物理の根幹 新たな数式」という見出しで、きわめて妥当な見出しである。毎日新聞の記者さんたちには是非「科学的思考のレッスン」をしていただいて、より良い科学や技術に関する報道ができるようになって欲しいと思う。
(付記:もう一度毎日新聞の記事を読み直した。問題なのは、見出しの表現だけで、記事本文は朝日に比べてわかりやすい部分もある。見出しを決定するときに、センセーショナルな方に振りすぎたということなのだろう。)

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2012/01/15

「科学的思考」のレッスン  戸田山和久 NHK出版新書

 「市民のための科学リテラシーを身につけること」をテーマにした本である。戸田山和久の本を読むのはこれが初めてでなく、「科学哲学の冒険」についで2冊目である。どちらも「科学とは何か」を高校時代に理科が得意でなかった人に理解してもらいたくて書かれていて、それはかなりの程度実現している本なのだが、本当に「科学なんてよくわからんが少しは知っておかないとヤバそうだ」という人たちに読まれているのだろうか? わたしのように高校で理科を教えているか、大学で文系の学生に科学概論みたいな授業を担当している教員くらいしか手に取らないのでは、という疑問である。「学校で教えてくれないサイエンス」とサブタイトルをつけてあるので、このサブタイトルで手に取る人はいるかもしれないが、「科学」だとか「サイエンス」だとかという単語が見えた瞬間に敬遠する人間が日本には過半数はいるような気がしてならないのである。

 本書の第Ⅰ部は「科学的に考えるってどういうこと?」となっていて、この内容は「科学哲学の冒険」のダイジェストのようである。特に疑似科学との違い、統計でウソをつく問題が取り上げられている。第Ⅱ部は「デキル市民の科学リテラシー -被曝リスクから考える」となっていて、福島第1原発の事故による放射能の問題を考えるのに、かなり良い解説になっている。ここでは、「安心」とは「科学的に不確実な相手とずっとうまくやっていけるのか、というシステムに対する信頼の問題」、「市民」と「大衆」の違い、「市民になりたくないなら、科学を学ぶ必要なんか、さらさらない」等の著者の本当に言いたいことが書かれている。特に「市民になりたくないなら、科学を学ぶ必要なんか、さらさらない」は色紙に書いて飾っておきたいくらいの名言である。ただ、市民になりたい人にきちんと科学を教えるシステムがこの国にあるのか、あるいは、お前はそういうつもりで科学を教えてきていたのか、という問題はある。「市民のための科学」というのは大学時代から自分の心にあり続ける問題である(研究者よりも高校の教員を選んだのもこの問題を考えた結果でもある)。

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2012/01/14

1月分の電気料金

 1月分の請求書が東電から届いた。12月12日~1月12日32日間で、使用量701kWh。17430円。やっぱり、暖房(ホットカーペットとエアコン)を本格的に使いだすと使用量はど~んと上がる。でも、昨年は34日間で991kWhだった。請求書にはこの昨年比29%減と書いてある。これは単純に計算しているだけのようだ。32日と34日の違いは考慮してない。ということで、1日あたりで比べると、今年は21.9kWh、昨年は29.1kWhになるから、実際には25%減である。今年の方がエアコンで暖房している時間が確実に短いので、それによる節電効果だろう。一方、太陽光発電で売った量は109kWh、5232円。昨年は99kWh。これは、天気の影響というより、昨年の方が自己消費量が多かったということだろう。

 今年は我が家のあたりまで都市ガスの配管が伸びてくる。50mほど我が家より下の所まではとっくに都市ガスの配管がされていた。やっとという感じである。LPガスの方が高いので都市ガスに換えることになると思うが、そのときに多少金はかかるが、エコウィルにしようかと考えている。ただ問題は、エコウィルをつけてしまうと、現行の買取制度のままだと余剰電力の売電価格が下がってしまうことだ。余剰電力でなく総量買取制度も検討されているようなのだが、このあたりのエネルギー政策の方針が民主党政権ではふらついているので、その様子を見てから導入する方が我が家の経済にはいい。しかし、もともと、採算よりも脱原発への具体的行動で太陽光発電システムをつけたのだから、その流れで行けば、熱電供給を実践するいいチャンスである。

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2012/01/07

アヴェリーのアニメCMが入っていたのです

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 だいぶ前に買ったDVDの話。

 一つは「CARTOON COMMERCIALS! VOLUME1」。50年代後半から70年代前半までのアニメ・コマーシャルを集めたもの。第1巻となっているが、第2巻は未だに出ていないようだ。テックス・アヴェリーによるバッグス・バニーのCMを見れそうだ、ということで買ってみた。確かに、アヴェリー製作のCMが何本か入っている。でも、アヴェリーらしいギャグがそのCMにあるかというと、ない。アニメーションが凄いと感じるものが2本あって、それは、リチャード・ウィリアムス・スタジオの作品だった。同スタジオによるフランク・フラゼッタの絵を動かした化粧品のCMが第2巻に収録されて発売されることを期待したい。

 もう一つは「GIANT 600 CARTOON COLLECTION」。これは、ダイソーの200円DVDの元になったようなパブリックドメイン物である。個別で出ているものを600本まとめて(ディスク12枚)売っているものである。届いて開けてみたら、DISC2がなくDISC3が2枚入っていた。送り返して取り替えることもできたが、それも面倒だし、価格も安く、特にDISC2にどうしても見たい作品が入っているわけでもなかったので、そのままである。DISC3には、ローラン・トポール&ルネ・ラルーのSF短編アニメの傑作「かたつむり」が、また、DISC4には、マックス・フライシャーの最後の作品「ルドルフ赤鼻のトナカイ」が入っていて、この2作品で、価格分の価値はある。全体に画質はそれほど良いわけでない(ダイソーDVDと同じである)。

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2012/01/02

謹賀新年

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今年もよろしくお願いします。

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2011/12/30

C4経年変化

 愛車も年末大掃除。シトロエンC4との付き合いも6年半。ボディに細かい傷も増えた。
ふとルーフからリアのハッチ方向を見ると、スポイラー部分の中央部が少し上に持ち上がってルーフとの間に隙間ができている。C4は、こういうプラスティック部分のつなぎ目などに寄る年波が出てくるようだ。定年まで(延長がなければあと5年)乗ると決めて買ったのだが、果たしてその通り乗り続けるだろうか? まあ、今のところ、現実的に買い替えたいと思う車は登場していない(宝くじが当たったときを想像したら所有してみたい車はある)。次の車のエンジンは、ディーゼル・ハイブリッドが良いなあ、と思っているのだが、日本ではなかなか導入されない気がする。
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 ところで、近所を散歩していたら、とある家の駐車場に真新しい白いC3(現行型)が停まっていた。同じ町内にまた1台シトロエンが増えたようだ。

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2011/12/28

千本浜の夕日

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リコーPXで撮影。3枚目は、デジタルズームでほぼ最高倍率。手持ちでこの倍率で撮るのはやはり難しい。

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2011/12/24

What's up,Moc?

 「世界アニメーション映画史」の著者の一人で元静岡大学図書館職員の望月信夫さんが肺癌のため亡くなって1週間。

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 静岡大学でアニメーション同好会が発足し活動を始めるにあたって当時の会員4,5名と図書館に、挨拶に行ったのが望月さんとの最初の出会いだった。その前に、静岡のアニメーション・サークル「しぁにむ」の上映会のポスターを何度か見ており、そのうちのどれかに、もしくは、私が大学に入学した年の静岡の久能山下の旅館で行われた第6回のアニメ総会に出ていれば、そのときに出会っていたのだろうが、大学内でアニメ仲間に出会うまで、その踏ん切りがつかないでいたのだと思う。とにかく、発足したばかりの静大アニ同にとっては、望月さんが活動をしていく上での実質的な顧問であった。だから、私の望月さんの思い出も、多くはこの時代のものになる。

 お通夜の式場へ静岡駅から歩いていくとき、ちょうど線路をはさんで式場とは反対側のあたりに望月さんが部屋を借りていたアパートがあり、そこに、静大アニ同のメンバー数人で訪れたことを思い出した。入り口にはスキー板、ステレオセット(確かティアックのオープンリールのテープデッキがあり、さすがに社会人はお金をかけられると思った)とレコード、映画関係の雑誌や本、SF、そして、漫画。アニメ関係の本は、今でこそ買うのをあきらめても惜しくないほどたくさん本が出ているが、当時はアメリカでも余り出版されておらず、書棚の一角を占めているだけだった。望月さんがおもむろにステレオのスイッチを入れ、レコードをかけようとしたとき、後輩の一人が「ジャニス・ジョブリンの命日ですよ」と言った。年代からビートルズ世代でてっきり反体制ロック・ファンだろうと思って、遅れてきたビートルズ・ファンの後輩が話題になるだろうと切り出したのだろうが、望月さんはそっけなく「そんなことは知らない。クラシックしか聞かない」。そのとき、かけた曲が何であったのか、もはや、まったく記憶にない。バッハだったのか、モーツアルトだったのか、はたまた、マーラーであったか。

 最も新しい部類の思い出は、ご長男(お通夜では施主としてご挨拶された)が、東映に入社しスーパー戦隊シリーズの配属となった、というものすごくうれしさが伝わってくるメールをもらったこと。そのことをご本人にお通夜の席で伝えたら、「(スーパー戦隊物を)すごく好きな連中がいるから・・・」と父と話しましたとのこと。望月さんは毎週番組を見て息子さんにここはこうした方が良いとアドバイスしていたそうだ。そのうちに、望月さんのご長男のプロデュースで、静大アニ同の後輩のアベ・ユーイチ監督(「ウルトラマンゼロTHE MOVIE」など)の作品が見られたらと面白い、などと思ってしまう。


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 この写真は、「世界アニメーション映画史」の裏見返しのイラスト(故・片山雅博さんの作)の位置にサインしてもらったもの。この本を出版した頃、ご長女が生まれて子育て時期だったのでこの絵柄になっている。ここにサインをもらったときには、片山さんと望月さんが同じ年に亡くなってしまうなんてことはもちろん、これっぽっちも思っていなかった。合掌。

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